【みんながハマる“ココイチ” 売れるカレーの秘密!】 愛知生まれのカレー専門店、通称「ココイチ」。なぜみんなココイチのカレーにハマるのか?カレーソースの巨大工場に潜入すると“売れる”仕掛けが見えてきた。

愛知生まれのカレー専門店、通称「ココイチ」。なぜみんなココイチのカレーにハマるのか?カレーソースの巨大工場に潜入すると、“売れる”仕掛けが見えてきた。

 ■巨大釜がずらり!カレーソースのメガ拠点「栃木工場」

全国のココイチが1年間に提供するカレーは9000万食にも上る。なぜこんなに売れるのか?作り方に秘密があるのではないか?そこで本社がある愛知県一宮市の愛知工場へ向かうと「ここでは今、カレーソースを作っていない」という。実はココイチのカレーソースは現在、北海道から岡山までの85%を栃木工場がカバー、残りの15%を佐賀工場が作っていた。

愛知から約430キロ離れたカレーソース製造のメガ拠点「栃木工場」。外観はカレーのお供、“福神漬け”の色にそっくりだ。想像を絶する量のカレーソースはどのように作られるのか?内部に潜入すると、巨大な釜が目に飛び込んできた。

その数23個。左右にずらりと並ぶ様子は壮観だ。釜1つで約1万7000食分のカレーソースができるという。

 ■カレーソースの極意は“時間”と“黄金角度”

ココイチ定番のカレーソース「ポークカレー」の製造に密着した。材料の豚肉は冷凍状態で工場にやってくる。カチカチに凍った表面を金属製のブラシで引っかき、残った軟骨や血管を取り除く。凍った状態の方が形が崩れずカットしやすい。

まずステーキサイズにスライス、さらにサイコロサイズまでカットすると、大釜の中へ次々にダイブ。釜の中はまるで豚肉の“満員電車”のようだ。

25分間煮込むと、脂がたっぷり溶け出た“ベース”と呼ばれる豚肉スープになる。そこにタマネギやニンジンなどの野菜を入れ、さらに10分間煮込む。野菜の甘味が加わったベースにいよいよココイチオリジナルのカレールーを入れるのだが、ここにコツがある。

「一旦火を止めてから、カレールーを溶かし込むのです。」(栃木工場)

火を付けたままカレールーを入れると、表面だけ溶けて中心部分がダマになっておいしくなくなるという。これは家庭でも使えるテクニックだ。

釜の中を覗くと…何かがくるくる回っていた。これはカレーソースをかき混ぜる道具で“羽根”と呼ばれる。釜のふたにくっ付いているのだが、なぜか真っ直ぐじゃなく、ちょっと斜め。“60度の角度”で取り付けてあった。

「羽根が真っ直ぐだと外側はよく混ざりますが、中心部分は対流が起きにくいんです。羽根が60度だと、まんべんなく対流が起きるんですよ。」(栃木工場)

60度は、巨大カレー釜の“黄金角度”なのだ。

黄金角度でかき混ぜながら煮込むこと4時間。たっぷり時間をかけるのも売れるカレーの秘密である。

■まるで現代アート!大釜の真下に“パイプワールド”

4時間かけて煮込んだポークカレーソースを、どうやって釜から取り出すのか?その答えは大釜が並ぶフロアのちょうど真下の部屋にあった。中に入ると無数のパイプが走る!まさに“パイプワールド”だ。しかも、すべての釜がこの部屋とパイプでつながっている。

透明なのぞき窓から見ると…カレーソースが流れていた。高低差を利用した仕掛けなのだ。

カレーソースはパイプを流れて包装工程へ。ひと袋に40人前を詰め込み密封する。袋詰めされたカレーの温度は60度と高い。ポークカレーソースは輸送コストを下げるため通常の2倍の濃度で製造される。冷めてしまうと固まってパイプの中を流れにくくなるためだ。

包装を終えると、らせん状のタワーをゆっくり回りながら、火照った体を冷ましていく。これで全国へ出荷かと思ったら、もう一つ大事な仕掛けが待っていた。

■寝る子はおいしく育つ!冷凍庫で最後の“味”づくり

黄色いケースに積み込まれたポークカレーソースが工場の奥へと運ばれていく。向かったのは“冷凍庫”だ。中はマイナス25度、ここで約1週間寝かせるという。

「出来立てはカレーソースが安定しないのです。1週間寝かせることで味が落ち着く。だからこれは保管ではなくて、ある意味クッキング工程なんですよ。」(栃木工場)

寝る子は“おいしく育つ”というわけだ。

■“ポーク”と“ビーフ”は作り方が大違い!

ポークと並ぶココイチ定番のカレーソースといえば、創業当時から看板に掲げてきた“自慢のビーフカレー”。その作り方はポークカレーとまるで違っていた。

材料のビーフは大釜に入れるのではなく“圧力釜”で調理する。釜を傾けると…ビーフとその肉汁がまるで滝のように流れ落ちてきた!ここでビーフだけを分離する。その様子をスーパースローカメラで見ると、ぴょんぴょん、まるでダンスを踊るかのように飛び跳ねる。弾力とツヤがたまらない。

一方、ビーフのうま味がたっぷり染み出た肉汁は別のタンクへ運ばれ、これをベースにカレーソースを作る。つまりビーフカレーは、カレーソースとビーフを別々に作るのだ。理由はビーフのゴロっとした食感を生かすため。2つが合体するのは店舗の厨房だ。

ポークもビーフも、手間暇かけた製法に“ヒットの秘密”が隠されていた。

                         【工場fan編集局】

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