【おんなの目】 泣いてみた

 元旦、おめでとう、と呟きながら起きだしトイレに行った。何かおかしい。足元が異様に冷たい。床の上一面水が溢れている。見るとタンクに続く配管から水が漏れている。ああ、新年早々なんということ。水道の元栓を止めて、トイレの床を這いつくばって雑巾で拭く。冷たい。次からトイレを使ったら汲み置きのバケツから水を流す。三が日修理屋さんと連絡がつかなかった。 五日、部屋の電気が点かない。蛍光灯を変えてみたが駄目。修理をどこに頼めばいいのか? 馴染みの電気屋さんは年末に店を閉じた。友人からA店を紹介され修理を頼んだ。明日来るという。それまで部屋は真っ暗。七日、電話機が壊れた。通じなくなった。叩いたり、コンセントを抜いたりしたけれど駄目。修理を頼もうにも私は携帯電話を持っていないので、連絡がつかない。自転車に乗り、公衆電話を求めて走った。記憶にある場所に行ったら、もう緑の公衆電話はなかった。十日、自転車がパンクした。十五日、歯が痛み出した。

 泣きたくなったので、泣いてみることにした。瞼にツバをつけて泣きまねをしていたら、いつしか本当の涙が落ちてきた。昔の悲しかったことが次々と思い出されてどんどん泣けた。もう止めよう、と思ったら、年末に亡くなったYさんの顔が浮かんできて一段と声を上げて泣いた。

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