<隠れた名盤> 片平里菜『一年中』 ずっと聴いていられる、飾らず力まない歌

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片平里菜『一年中』

 2013年にメジャーデビューした女性シンガーソングライターのオリジナル4th。タイアップも特典付き初回盤もないが、生楽器中心の穏やかな演奏で、まさに“一年中”聴いていられる作品だ。

 まず、全12曲、曲順に沿って四季折々の風景がさりげなく移っていく構成が素敵。前半では、失恋ソングの『ラズベリータルト』から、晴れた日に出会いを信じる『sunny』、より親密になろうとする『夏が待ちきれない』、恋人とまどろむ様子を描いた『一日中』まで、歌詞の流れに沿って、演奏も歌声もどんどん裸になっていく様子がとてもリアル。まるで単館系の恋愛映画を観ているようだ。

 その真っ只中から人生は“楽しんだもん勝ち”と歌う7曲目の『JUMP』を経て、後半は夢追いをテーマにした楽曲が多くなる。都会に出て「たった一度くらい咲き誇りたい」と願う『bloom in the city』から、人との出会いに感謝する『オレンジ』、新生活へ踏み出す『晴天の兆し』を経て、静かに決意する『明日には』の流れも心を動かされる。片平はやや細く高い声ながら、飾らず力まず歌っているので、恩着せがましさが全くない。決して派手ではないが、今の時代こそ必要とされる人だと強く感じた。

 男性アーティストならフジファブリックや山崎まさよし辺りが好きな人にもおススメ。本作を聴けば、自分が本当にやりたかった事や、今からでもできる事を、自分のペースで何か思い浮かぶはず。

(ポニーキャニオン・3000円+税)=臼井孝