寒明の頃だが

 聞き慣れないが、1月の小寒、大寒を過ぎたこの時期を「寒明(かんあけ)」といい、手元の歳時記には「新暦2月4日ごろに当たる。立春と同じだが、寒の余韻がある」と書かれている▲なるほど、「春立つ」頃はまだ春を肌身に感じにくいが、「寒明」だと寒さの中にも春の足音が聞こえるようで、この時期には合うかもしれない▲そう思ったあとで、いや、そもそも「寒」があったかな、と振り返る。長崎地方気象台によると、先月の長崎市の平均気温は9.7度で、1月としてはこれまでで最高だった。「寒」の文字がかすんでくる▲気温とは正反対に、長崎市の人口を巡る問題は、長いこと「寒の内」にある。長崎市の日本人の転出超過数(転出者が転入者を上回った数)は昨年、2772人に上り、市町村別では2年続けて全国ワースト1位だった。佐世保市の転出超過数はワースト8位で、こちらも“厳冬”らしい▲長崎市によると、県外に進学した後、市内に帰って就職する人が減った可能性があるという。ともども悩みの深い自治体と、民間企業と、市民とが、共に知恵を絞る必要もあるのだろう▲やがて春めいて、進学や就職で、多くの若い人が県外へと第一歩を踏み出す。何とかして「いつか帰りたくなる長崎」に。「超」の付くような難問だが、寒明を待ち望む。(徹)

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