「ロープワークロープワーク」ってよく聞くけど・・・
結び方を覚えていると、様々なシーンで役に立つ『ロープワーク』。登山やキャンプだけでなく日常生活でも活躍する技術です。
とは言っても・・・
__「覚えた方がいいのはわかるけど、そもそもロープ持ってないし…」
「クライミングをしないから、ロープワークなんて必要ないでしょ?」
__など、“ハードルが高い”などと感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「ロープに触れる機会が少ない人」にもオススメできる3つのロープワークをご紹介します。結び方だけでなく実用例もあわせてチェックしてください!
とっても便利な【細引き】を活用しよう!
今回のテーマはズバリ「細引きの活用」です。
「細引き」とは、2~7mm程度の太さのナイロン製ロープのこと。2〜4mmはテントやタープの張り網として、5〜7mmはロープスリングとして使われることもあり、強度が高いことが大きな特徴です。
ザックに入れておけば、”もしも”の時に活躍!
登山では予期せぬトラブルが起こりがち。
「ザックのバックルが壊れた…」「靴のソールが剥がれた…」などの問題が起きた場合も、細引きをザックに入れておけば、すぐさま応急処置が可能です。
細引きは、登山の”もしも”の時のためにも、装備の1つとしてザックに入れておくことがおすすめです。
Q: 細引きはどれくらいの長さ&太さを持っていれば良い?
A: None
細引きは登山用品店で購入できる
細引きは大手登山用品店(石井スポーツ、好日山荘、モンベルストアなど)で購入が可能。
写真のようにさまざまな太さや色の細引きが【1m○○円】というように量り売りされており、欲しい長さをスタッフに頼めばその長さでカットしてくれます。
コレができれば男前!細引きロープワークの3本柱
今回は細引きを活用した数あるロープワークの中でも、【実用性】【使用頻度】【結びやすさ】に優れた3つの結びを選びました。
【1】クローブヒッチ(別名:マスト結び、インクノット、巻き結び)
難易度:★★☆☆☆ 使用頻度:★★★★★【2】フィッシャーマンズノット(別名:テグス結び)
難易度:★★★☆☆ 使用頻度:★★★☆☆【3】ガースヒッチ(別名:カウヒッチ、ひばり結び)
難易度:★☆☆☆☆ 使用頻度:★★★★☆
【1】実用性の高さはロープワーク界随一|クローブヒッチ
『クローブヒッチ』は古くから船乗りに愛用されてきた古典的な結び方。ロープを物体に結びつけるだけでロープや物体を頑丈に固定することができ、ほどくのもとても簡単。実用性が高く、登山以外のさまざまなシーンでも活躍するので、ぜひとも習得しておきたいロープワークの1つです。
クローブヒッチの特徴
・結びつけることでロープや物体を固定できる
・結ぶのも容易で、ほどくのも簡単
・利便性が高く、多様なシーンで活躍
こんな登山シーンで活躍!
<荷物をまとめたいときに>
クローブヒッチは“口を結ぶ”ことに優れています。例えば、ザックをデポして山頂へ向かう時や、緊急を要して荷物を置いていかなければならない場面など、テントのフライシートやビニールシートを使って口をクローブヒッチで結べば、無駄なく荷物をまとめることが可能。荷物が濡れることもなく、盗難防止にも繋がります。
<ストラップとして>
スリングを使ってクローブヒッチでペットボトルの口に結ぶことで、簡易的なペットボトルホルダーとしても活躍します。ザックに結びつけておけば、落ちる心配もないので安心です。
<ツェルト設営の支点として>
ツェルトの設営には「支点」を作る場面がが多いですが、クローブヒッチを使えばトレッキングポールや木の枝にしっかりと固定することができます。
クローブヒッチの結び方【その①】
まずは[物体に巻き付けながら結んでいく方法]のクローブヒッチをご紹介。テーブルの柱などを使うと練習がしやすいです。
【1】結びたい物体にロープを巻きつけます。
【2】末端が上を通るように巻きます。
【3】ここで巻きつけた部分がX字にクロスしているかを確認。末端をX字の下方に下から通します。
【4】画像のようにロープと物体の間に末端を通します。
【5】本体側と末端側のロープをそれぞれ持ち、同時に左右へ引っ張ります。
【6】本体側を引っ張って、ゆるみがなければ完成!
ワンポイント
末端は10cm以上残しておくこと。短い場合は一方からの荷重によりほどけてしまう可能性があるので注意。
クローブヒッチの結び方【その2】
次に[結び目をあらかじめ作ってから物にかぶせる方法]の紹介です。水を入れたペットボトルなどを用意しておくと練習がしやすいです。
【1】輪を1つ作ります。左手側から伸びるロープが、下から上を通ってループし、右手側へ抜けるようにしましょう。
【2】右手側にもう1つ輪を作成。1つ目の輪と同様に、左手側から伸びるロープが、下から上を通っていくように輪を作ります。
【3】左手の輪を上、右手の輪を下にして、2つの輪を重ねます。
【4】輪を壊さないように気をつけて、2つの輪を完全に重なり合うようにします。
ワンポイント
輪は大きすぎると重ねるのが大変なので、直径10cmくらいの円を意識すると良いです。輪を左右に引っ張ることで輪を広げることができます。
【5】輪を対象物にかぶせ、左手は左方向に、右手は右方向に引っ張ります。
【6】両側を引っ張り、ゆるみがなければ完成です。
次ページ:フィッシャーマンズノットの解説
【2】ロープで輪を作る|フィッシャーマンズノット
『フィッシャーマンズノット』はロープ同士を繋げる結び方で最もポピュラーなもの。結び目はシンプルながらも非常に高い強度を持っており、しっかり締めるとなかなかほどけません。
このロープのリングは『スリング』と呼ばれ、さまざまな場面で重宝する道具になります。ここでは「スリングが作れるようになる」ことを目標にしましょう。スリングを作るには長さが50cm〜1m程度の細引きが必要となります。
特徴
・ロープの端と端を繋ぐことができる
・シンプルな構造ながらも強度が高い
・1本のロープを輪状に繋げた『スリング』を作る際に用いられる
こんな登山シーンで活躍
<テントやツェルトの張り網の長さが足りないときに>
テント設営時「張り網の長さが足りない…」というトラブルの際はフィッシャーマンズノットの出番。張り網と細引きを連結させて延長することができます。結び目は強く結ばれているため、ほどける心配もありません。
<ゴムコードで道具を束ねることも>
フィッシャーマンズノットはゴムコードを使った活用法もあります。ゴムコードで輪ゴムサイズのリングを作っておけば、トレッキングポールやペグなどの小物をまとめるのにも便利。ザックのポケットに数個入れておけば、何かと役立ちます。
フィッシャーマンズノットの結び方
練習用に長さ1mの細引きを用意しましょう。色違いの細引きがあると、混在しにくくなり練習がしやすいです。
【1】繋ぎたいロープの端と端を対照に配置。まずは黄ロープから結んでいきます(順番はどちらのロープから結んでもOK)。赤ロープの上に黄ロープを通します。
【2】赤ロープの下を巻いていきます。
【3】黄ロープ本体の上を通るように巻きます。
【4】黄ロープにできた輪の中に末端をくぐらせます。
【5】本体側と末端を左右に締めつけます。
【6】これで片側が完成。続いて赤ロープを同じ手順で結んでいきます。赤ロープの末端を黄ロープの上から通します。
【7】2本のロープの下を通るように赤ロープを巻きます。
【8】赤ロープにできた輪をくぐるように末端を通します。
【9】末端と本体を左右に引っ張ります。
【10】黄ロープと赤ロープを左右に引きます。
【11】2つのロープの末端が合体。これだと正しく結べているかがわかりにくいので、裏返しにしてみましょう。
【12】ひっくり返して、それぞれの結び目がキレイに揃って入れば完成!
ワンポイント
末端は5cm以上残すようにしましょう。短いとほどけてしまう可能性があります。巻き数を増やせばさらにほどけにくくなります。
次ページ:ガースヒットと末端処理の解説
【3】超簡単&便利な輪を使った結び方|ガースヒッチ
『ガースヒッチ』は日常でも使うことの多い結びの1つ。輪になっているロープをいろんなモノに結びつけることができます。いわゆる“携帯ストラップ”の装着方法と同じ要領です。
荷重がかかることで摩擦により結び目が締めつけられ、見た目以上にしっかり固定することが可能。荷重を外せばいとも簡単にほどけるのも大きな特徴。
ガースヒッチは『スリング』の活用としても使えるロープワークです。先ほどのフィッシャーマンズノットでスリングを作ってから練習してみましょう。
特徴
・スリングを使ったロープワークで、輪になったロープを固定できる
・荷重がかかることで固定力が増す
・荷重がなくなれば簡単にほどくことができる
こんな登山シーンで活躍
<小物にヒモをつけたいときに>
ストラップなどのヒモを小物に結びつける際に便利なロープワーク。付ければ外れる可能性は限りなく低く、外したい時は簡単に取れます。
<物を吊るす支点として>
ガースヒッチは、荷重が加わることでしっかり固定できるのが特徴。カラビナを使って物を吊るしたり、強度の高い細引きを使えばタープの支点としても活用できます。
ガースヒッチの結び方
フィッシャーマンズノットで作ったスリングを用意します。テーブルの柱などを使って練習してみましょう。
【1】結びつけたい物体にスリングを回します。
【2】片方の端をもう片方の端の輪の中に通します。
【3】そのまま引っ張り、結び目を締めます。
【4】あっという間にガースヒッチの完成!末端側に荷重がかかることで、結び目が強く締めつけられます。
ワンポイント
細引きの“結び目”が真下に来ないように調整しましょう。
【知っておきたい予備知識】ロープの末端処理について
細引きの扱いに慣れてくると、必要な長さにカットして使う場面も出てくるでしょう。そうなった時、先端を切ったままにしておくと、どんどんほつれてしまい、ほつれた部分は使えなくなってしまいます。
それを予防する為には、末端に「ほつれ止め」の処理をする必要があります。
処理方法はいたって簡単!
ほつれ止めの処理はいくつかのやり方がありますが、ライターを使った方法が一番手軽です。
①ロープの先端をライターであぶる(先端が少し溶け出せばOK)
②溶けた繊維が固まる前に指で内側につまむ(熱いのでヤケドに注意)
③繊維が固まったら完成
<細引き+ロープワーク>で男前登山者まちがいなし!
【細引き】という道具は【ロープワーク】と組み合わせることで、さまざまなシーンで役に立ちます。さらに、技術を積み重ねることでULハイクなど登山の幅も広がっていきます。
そのためにも、まずはロープワークをしっかり身につけることが大切です。何度も練習をした後、ぜひ本番の登山で使ってみてください。実際の山でやってみることがなによりも自身の経験に繋がっていくはずです。
山でサラッと使って、周りを「おっ!」と思わせるような男前登山者になっちゃいましょう!