ファン待ちわびた覚醒なるか 鷹打撃コーチの“推しメン”は崖っぷち8年目と7年目の元侍

1軍の登録枠を争うソフトバンク・真砂勇介(左)と上林誠知【写真:藤浦一都】

立花コーチがブレーク期待「上林と真砂が楽しみ」

 2月1日から宮崎市内の生目の杜運動公園で始まったソフトバンクの春季キャンプ。3年ぶりのリーグ優勝奪還、4年連続日本一を狙う“常勝軍団”の狭き29人の登録枠を争う、厳しい競争がスタートした。

 今季は東京五輪の影響で開幕が3月20日に前倒しになる。そのためキャンプの練習メニューも例年より早め。ソフトバンクでも第1クールから投手陣が打撃投手として登板し始めている。4日に行われた練習で第1クールは終了。休日を挟んで始まる第2クールでは早くもシート打撃が行われる予定となっている。

 第1クールが終わったソフトバンクのキャンプ。昨季から一冬のオフを越えて、成長を感じさせている選手は誰か。立花義家1軍打撃コーチに、主力組の集うA組での注目株、推しメンを聞いた。

 4日間、選手たちの打撃に目を光らせてきた立花コーチが名前を挙げたのは上林誠知外野手と真砂勇介外野手だった。「打撃には一進一退があるけれど、上林と真砂はいい状態ですよ。2人は楽しみだなと思いますよ」と語り、外野のレギュラー候補として期待されてきた2人を推した。

 2012年のドラフト4位で西城陽高から入団した真砂。抜群の身体能力を誇ることから付いたニックネームは「ミギータ」だ。右のギータ(柳田悠岐)という意で、2016年のアジアウインターリーグではMVPに輝き、一気のブレークに期待された。

 だが、その後もなかなか開花せず。1軍では2017年に9試合、2018年は1試合、2019年には12試合に出場しただけで、定着することはできなかった。今季が8年目。勝負の年と言っていいだろう。

「あまり考えずに振っていったほうがいい。下手にうまくやろうとして受けてしまう癖がある」。立花コーチはこう真砂の課題を指摘する。ポテンシャルはピカイチだが、いざ試合になるとあれこれと考え過ぎる。結果を求めるがあまり、力が出しきれない。だからこそ「踏ん切りをもっていって欲しい」と、割り切って思い切ってプレーすることを求める。

上林は念願のレギュラー奪取へ、熾烈な外野手争いに臨む

 2013年にドラフト4巡目で仙台育英高から入団した上林は2017年に134試合、2018年には全143試合に出場。レギュラーをほぼ手中に収めかけ、侍ジャパンのメンバーにも絵選ばれていた。だが、昨季、右手甲に死球を受けて骨折。負傷直後に痛みを押してプレーを続けたことで怪我が長引き、そして打撃の調子も崩した。結果、99試合の出場に終わり、悔しい1年になった。

 今季はレギュラー再奪取に向けて、並々ならぬ意気込みで挑んでいる上林。立花コーチは「左足が強くなっている。左足が強くなるとトップが安定する。もともと打球が飛ぶタイプで、リストも強い。去年も色んな話をしたけど、実感してやってくれたらいい」と、ここまでの上林の変化を感じている。

「1軍の数には限りはありますけどね…」という立花氏。29人の1軍登録枠で外野手に割り当てられるのは5人前後。柳田悠岐、デスパイネ、バレンティン、中村晃は当確で残る1枠か2枠を上林と真砂のほか、ベテランの長谷川勇也や釜元豪、ルーキーの佐藤直樹や柳町達らが狙っている。この狭き門を突破できるのは果たして誰か。ファンも期待し続けてきた上林と真砂の2人が、大ブレークを果たすことはできるか、注目だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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