JOJO 独自の魅力追求 荒木飛呂彦さん「ホラーで知的な冒険」

長崎県美術館で原画展 3月29日まで

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連載が決まった経緯などを笑顔で話す荒木さん(右)と椛島良介さん=長崎県美術館

 長崎市出島町の県美術館で開催中の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの展覧会「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」(県美術館など主催、長崎新聞社共催)で1月23日、作者の荒木飛呂彦さん(59)が来崎した。1987年に週刊少年ジャンプ(集英社)で連載を開始、現在もウルトラジャンプ(同)で第8部が続く同シリーズ。同25日の開幕を前に抽選でファンを招いた特別対談会や、長崎新聞などのインタビューで、デビュー時から独自の魅力を追求し続けてきた足跡や、今も変わらない創作の意欲を語った。

 〈対談は荒木さんと、集英社の初代担当編集者で、県美術館が作品を所蔵する諫早市出身の挿絵画家、椛島勝一の孫である椛島良介さんが登壇した。良介さんは、荒木さんの漫画家デビュー(1980年)から約13年間担当し、長崎展は同館と良介さんの縁から実現。荒木さんらはファン約150人を前に、勝一の絵の魅力や、デビュー以来の足跡などを語り合った。司会進行は同館の森園敦学芸員〉

★電話番★
 -長崎展のきっかけは椛島勝一の存在だった。
 荒木 新人の頃、画集を見て参考にしていた。(良介さんが孫とは)まったく知らず、「実はうちのおじいちゃんなんだよ」と。縁に感謝している。
 椛島 ひと言でいうと奇妙な縁。

 -勝一の絵について。
 荒木 特に参考にしていたのは帆船や波の陰影の付け方、空気。「冒険に行くぞ」という雰囲気が「ジョジョ」と共通している。

 -お二人の出会いは。
 荒木 小さい頃から漫画家になりたくて、原稿を批評してもらおうと集英社を選んだ。電話番をしていたのが24歳くらいの椛島さんだった。
 椛島 当時「週刊少年ジャンプ」は新人起用に力を入れていて、膨大な数の原稿を毎日読んでいた。我流というか、荒木さんはアシスタント経験もなくて。でも作品は面白かった。

 -初連載作品は「魔少年ビーティー」。
 荒木 「シャーロックホームズ」みたいなものが描きたかった。(面白さが)分からない人が悪いというくらいの気持ちだったが、「『魔少年』というタイトルが編集は好きじゃない」とか、わけのわからない批評をいっぱい聞いた。

★異質な★
 椛島 何人もの先生のデビューを担当したが(「ビーティー」については)編集部でもバトルだった。面白いんだけど人気が取れないのは、編集者としてもはがゆい。でも、「ビーティー」は今でも大好きな作品の一つ。当時のジャンプの“王道”とは異質な世界だった。

 -次の連載作品は「バオー来訪者」。
 荒木 当時、スタローンやシュワルツェネッガーが活躍していたので、究極の筋肉の強い人、肉体の改造というテーマを描こうと思った。「ビーティー」は最後の方で人気がかなり良くなって「じゃあ次行きましょう」となった。
 椛島 「バオー」はすぐに連載できた。ジャンプのいいところは、とにかく人気を取れば評価が百八十度変わるところ。

★ルール★
 -「ジョジョ」の物語はどのようなところから生まれたか。
 荒木 漫画を描くときは「ルール」が欲しい。何でもありの世界は面白くない。(吸血鬼は)不滅の肉体だが日光を浴びると死んでしまう-とか。血統や大河ドラマ的要素が描きたくて、ホラー映画も本当に好きで、ホラーで知的な分野の冒険に踏み込めば(当時連載中の)「キャプテン翼」には勝てるかなあと。

 -第2部まで「波紋」という超能力が出てくる。
 荒木 超能力にもルールが欲しい。それに、視覚的に目に見えないものを漫画にしたいという強い気持ちがあった。波紋は、どんどん輪が広がって破壊するというのが見えるので、可視化のためのルールだった。
 椛島 漫画はフィクションなので、ペンと紙があれば何でも描ける。ルールをとっぱらうと何でもありになって、世界観は構築できない。漫画のリアリティーは本物っぽくリアルに描くことではなく、世界、ルールがきちんとできていることが大事。
 荒木 (初めは)人気はなかった。(椛島さんは)すぐ「波紋あきてきたよねえ」と。でも、それで考えたのが(第3部から登場した)「スタンド」だった。
 椛島 スタンドは画期的だった。スタンドが出なかったら、今ここにいなかったかもしれない。第3部はかなり人気が良く、安心して担当できた。

★吸収力★
 -第5部の舞台はイタリア。ルネサンス以降の彫刻から「ジョジョ」が影響を受けているという。
 荒木 筋肉の描き方から、体をねじっている部分を実際に見ると、本当にどうやって彫っているのかな、美しいなと記憶に残る。イタリアの彫刻には根源的な何かがある。イタリアは毎年行くようになった。
 椛島 荒木さんがすごいのは吸収力と、膨大なものをいまだにインプットしていること。はやりのものは当たり前で「誰が見るの?」というものもよく見ている。当時と変わらず、前にも増してパワーを感じる。

 -原画展の見どころは。
 荒木 手で描いているところ。ライブ感や手作りの良さ、迫力を見てほしい。
 椛島 各時代、シリーズの魅力の違いも比較してみると面白い。

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