子育てファミリーに朗報、「ファン付きウエア」がベビー用品に進出の衝撃

子育て中のファミリーの大きな悩みの1つといえば、子どもの温度調節ではないでしょうか。冬場の保温はもちろん、夏場の猛暑をどうしのぐかは、多くの家庭で悩みの種となっています。

そんな課題を解決する一助となりそうな新商品が、今年の春夏シーズンに登場することになりました。炎天下の工事現場で働く人の必需品「ファン付きウエア」を製造するアパレルメーカー・空調服が、ファン付きのベビー用品を売り出すことがわかったのです。

育児用品で高い認知度を誇る「エルゴベビー」の販売会社とタッグを組んだという新商品は、どのような物なのでしょうか。2月7日まで東京都内で開かれている内覧会を取材しました。


「エルゴ」に付けるファン付きカバー

アパレルメーカーが冬に春夏のトレンドを予測した展示会を開くことは知られていますが、作業服や事務服を製造するユニフォームメーカーも同様の展示会を開きます。2月上旬は展示会のピークで、メーカーの中には華やかなファッションショーを開く企業もあります。

一般向けに販路拡大を狙う空調服は、今回初めて内覧会を開きました。会場の入り口付近には、カジュアルテイストのファン付きウエアが並び、一般向けを強く意識した構成です。

新商品の中でも来場者が次々に手に取っていたのが、会場中央に展示された、抱っこひもカバーとベビーカーシート。両方とも米国製抱っこひものブランド「エルゴベビー」の輸入総代理店のダッドウェイとコラボした新商品です。

空調服の広報担当者は「この夏のイチ押し商品の1つです」と、自信をのぞかせます。

空気を取り込み、気化熱で体を冷却

同社が販売するファン付きウエアは、腰の2ヵ所に付いた小型ファンから空気を取り込み、汗をかいた体の表面に大量の風を流すことで、気化熱で体を冷やす仕組みです。充電式のバッテリーで動き、最も強い風量で約8時間動きます。

抱っこひもカバーもベビーカーシートも、ウエアと同じ気化熱を利用する仕組みです。試しに赤ちゃんの人形を抱っこひもで抱いた状態で、カバーを付けてみました。カバーの下部にあるファンが空気を取り込み、抱っこした乳幼児の首元から外に排出されます。ファンはウエアと同じものを使っていますが、ファンが1つのためか、風の勢いはファン付きウエアよりも優しく感じます。

抱っこひもカバーは乳児の首がすわってから使える商品で、メッシュタイプの抱っこひもと組み合わせると、より涼しさを感じることができそうです。ベビーカーシートはベビーカーの横の部分に付けたファンから空気を取り込み、シートと背中の間に風を通します。

炎天下の移動もこれで快適?

ファン付きウエアは充電式のバッテリーを使いますが、ベビー用品はバッテリーに加え、単3電池4本でも使用できます。風量は2段階で、「強」だと8.5時間、「弱」は44時間稼働します。春以降、全国のベビー用品専門店などで販売し、希望小売価格は1万3,000円(税抜き、以下同)です。

空調服の広報担当者は「ハンディファンを持ち歩くお母さんも見かけますが、持ち運びが大変ではないでしょうか。ベビーカーと抱っこひもに冷却機能を付けることで、子どもとお母さんの負担を最大限に減らしたい」と話します。

「メンズビギ」とのコラボウエアも登場

ファン付きウエアの新作を見ると、生地のスペックが高いものをそろえた印象を受けます。レディース向けのバイカラーのウエア(1万6,280円、ファン・バッテリー別)は、肩の部分に遮熱、遮光性の高い生地を使いました。

遮光・遮熱性の高い生地を使った新作も

実はこの生地は東レの「サマーシールド」という製品で、日傘の生地として大ヒットしています。このほか、アウトドアにも対応できるように、高い撥水機能を付けたウエアも増やしました。

著名ブランドとのコラボも目立ちます。アパレルブランド「メンズビギ」のファン付きウエアや、ゴルフメーカーのプロギアと開発した商品が並びます。

ブランド力があるメーカーとコラボすることで、ファッションやスポーツが好きな人に、ファン付きウエアを知ってもらう狙いです。

東京五輪でさらなる成長を狙う

現場の作業員向けのウエアも進化を遂げています。とび職の人に愛用されるニッカポッカを製造する寅壱と協業し、ニッカポッカのファン付きウエアも出しました。「パンツの絶妙なラインは、とてもウチでは出せません」(空調服)と言います。

寅壱とコラボしたウエア(左)の隣にはメンズビギとのコラボが

空調服の2019年の夏商戦は、7月は長雨の影響で売り上げが伸び悩みましたが、8月に入り建設作業員を中心に需要が増え、盛り返しました。2019年12月期の売上高は前期比20%増の48億円でした。今年は7月に開幕する東京オリンピック・パラリンピックの観戦用など、売り上げ増が期待できるイベントが控えます。

空調服の市ヶ谷弘司会長は「冬にダウンコートを着るように、夏には当たり前のように空調服を着る社会にしたい」と語ります。工事現場向けから一般向けに展開し、成長を遂げているファン付きウエア。さらに赤ちゃんまで対象を広げることで、一段の成長につなげたい考えです。

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