令和初の新春ヘッドマークを撮った

(上)新春用のヘッドマークを掲げた新京成電鉄の電車、(下)沿線の高校生がデザインしたヘッドマーク

 【汐留鉄道倶楽部】元号が変わってから「令和初の○○」というニュースが目立つ。筆者も新年に何かやってみようと考え、令和初の新春ヘッドマークを撮りに行った。

 新春ヘッドマークは、干支の動物を描く凝ったデザインだったり、遠慮がちな小さなシールだったりと鉄道会社の個性が出ておもしろい。筆者は汐留鉄道倶楽部を担当するようになってから、何度か新春ヘッドマークを撮ってきた。これまで紹介したのは、京急、京成、京王、東武大師線。いずれも東京都内や近郊で撮影できた。

 今回も近場で済まそうと思い、既出の路線を避けて候補を探してみると、千葉県の新京成電鉄が見つかった。公式サイトのお知らせを読むと、沿線にある県立鎌ヶ谷西高校の美術部員がデザインした2種という魅力的な内容だ。

 2種のうち1種だけ撮影できた。ねずみが羽織はかまを身に着けて、鏡餅の上にちょこんと座っているというかわいらしいイラストだ。長方形の4辺には地図の鉄道路線記号が描かれ、電車の姿もあった。温かみのある絵で、ほっこりした気分になった。早くも来年のデザインが楽しみだ。

 令和初なのに1社だけだというのは寂しいので、遠方にも繰り出した。「遠方枠」には群馬県の上毛電気鉄道を選んだ。同社は1月3日限定で、1928年に製造された国内最古級の現役電車「デハ101」を特別運行させた。一日乗車券を購入し、電車の中から良さそうな撮影地を物色した。貴重な電車が正月飾りで走るまたとない機会とあって、沿線には多くの鉄道ファンの姿を確認できた。

 筆者が訪れた場所にも、カメラを持った人たちが集まっていた。のんびりとした平和な雰囲気だった上に、天候にも恵まれたため、待ち時間は苦にならなかった。

 やがて、遠くから長い警笛が聞こえてきた。誰かが立ち入り禁止区域に入ってしまったのだろうか。とても危険だし、こうした振る舞いが撮り鉄全体の評判を落として規制が強化され、回り回って自分たちの首を絞めることになるのに。正月早々、嫌な気分になった。

 しばらくすると、遠くに茶色の車体を目視できるようになり、どこからともなく「来た、来た」とつぶやく声が聞こえてきた。

(上)特別運行された上毛電気鉄道のデハ101、(下)デハ101の正月飾り

 クラシカルな車体がゆっくりと近づいてきた。誇らしげに日の丸を掲げ、「迎春」の文字と会社のシンボルマークで新年を祝っていた。このシンプルさが古豪らしい。周囲の景色さえ気にしなければ、昭和初期にタイムスリップしたような錯覚に陥りそうだ。

 この日は上毛電鉄の「新春イベント2020」の会場となった大胡電車庫も一般公開された。せっかくなのでデハ101を撮り終えてから足を運んだ。

 電車庫には、特別運行を終えたばかりのデハ101のほか、元京王井の頭線3000系の700形、電気機関車デキ3021などが展示されていた。鉄道タレントによるトークショーやコンサートも行われ、上毛電鉄のサービス精神があふれる行事だった。

 ☆寺尾敦史(てらお・あつし)共同通信記者。念願だったデハ101を初めて撮影できました。懐かしい釣り掛けモーター音も楽しめて、とても有意義な日になりました。上毛電鉄に感謝します。

 ※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。

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