社説(2/7):英国のEU離脱/国際協調を維持してほしい

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 欧州連合(EU)からの離脱を選んだ国民投票から3年半の混迷を経て、英国は正式に離脱を果たした。

 国境を越えて単一の経済圏を目指したEUは、壮大な挑戦と称された。統合に向けた動きは鈍るのか、英国抜きの一体化へと加速するのか、大きな岐路に立つ。

 EUと英国は、お互いの損得や利害にとらわれず、国際社会に与える影響を重視し、揺るがない関係を再構築してほしい。

 最も注目されるのは、新たな貿易の枠組みである。離脱しても今年いっぱいは移行期間とされ、従来通り「通関手続きなし、関税ゼロ」の恩恵や、人の移動の自由が維持される。

 移行期間が切れるまでに両者は、通商分野と将来の付き合い方を定めるルールづくりに向けて交渉を始める。

 英国はまず、工業品や農産品について「関税ゼロ」とする自由貿易協定(FTA)の締結を目指す。

 物流をスムーズにする手続きも簡略にするよう求めるとみられる。EUの縛りから解放され、離脱のメリットを最大限受けることを目標に、大幅な規制緩和を勝ち取りたいとしている。

 EUは、勝手な論理は通用しないとの立場だ。英国の重視する金融やサービスについて、EUの規制やルールを満たしているかを審査する。

 雇用や環境、政府補助金についても、EU基準に合わせるよう主張するなど、「いいとこ取りは許さない」と厳しい構えを見せる。

 協議がまとまらなければ、かねて危惧されていた「合意なき離脱」とほぼ同等の混乱を招く恐れもある。

 FTA交渉の先行きに暗雲が立ち込めれば、航空機や宇宙開発競争でEUと緊張関係にあるトランプ政権の米国にとっては、英国を引き寄せる好機となろう。

 ジョンソン首相との緊密さをてこに同盟を強めていき、経済だけでなく政治、軍事バランスに影響を与える可能性がある。

 そうした状況を好まないEU、そして英国、米国など関係諸国との間でしばらくの間、駆け引きが展開されよう。 日本からは1000社の企業が日系を含めて英国に進出し、結び付きは深い。昨年2月発効の日欧経済連携協定(EPA)が適用されなくなることから、年内に日英のEPA締結を目指す。

 大きな懸案はないとされ、日本としては、対EUを上回る自由度の高い協定を視野に、自動車関税の即時撤廃を要求することも検討する。

 英国にとっても日本をはじめ、カナダなどと円滑に進められれば順調なスタートを切ったとアピールできる。

 EUの壮大な挑戦を先進事例と評価しつつ、新しい連携の形を探る。英国の決断が国際社会にマイナスの影響を及ぼさないよう望みたい。