新型肺炎 “閉鎖空間”に募る不安 クルーズ船内で個室滞在

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港に接岸し、佐世保市在住の男性の部屋から見えた救急車の様子=6日午後0時半(男性提供)

 新型コロナウイルスによる国内初の集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に、佐世保市在住の60代の夫妻が乗船している。男性が6日、長崎新聞の取材に応じ、不自由な船内での生活の様子を語った上で「これから約2週間、閉鎖的な空間で過ごすことは精神的にきつくなるかもしれない」と打ち明けた。
 クルーズ船には乗客乗員約3700人がいる。6日に新たに10人の陽性反応が判明。感染者は計20人になった。厚労省は最長14日間にわたり個室に滞在するよう要請している。
 佐世保市の2人は大のクルーズ好きで、ダイヤモンド・プリンセスに乗るのは8回目だった。今回は1月20日に横浜で乗船。寄港地の香港やベトナム、鹿児島などで観光を楽しみ、後は2月4日に横浜で下船するだけだった。
 3日朝、部屋にあったテレビのBSニュースで船内に新型コロナウイルスの感染者がいることを知った。「降りられるかな」。不安が頭をよぎった。感染者がいるという船内放送があったのは3日午後6時半ごろ。午後11時半には検疫があり、部屋で体温を測り、問診票を提出した。幸い2人とも体調はよく、発熱などの症状を訴えたりして検体を採取された273人には入らなかった。
 「部屋から出ないでください」。5日朝、妻が外の様子を見ようと部屋のドアを開けると、見張りをしていた女性の乗員から英語で注意を受けた。厚労省から個室にとどまるよう要請も出た。
 部屋から出ることができないため、外の様子を見たりして気を紛らせているという。新たに10人が感染したことが分かった6日、船が横浜港に接岸すると、感染者を救急車に乗せたり、食材などを船に搬入したりする慌ただしい様子が部屋から見えた。
 5日の食事は単品だったが、6日は3種類から選べるように。トランプカードやマスクも配られるなど、対応は改善した。だが長期間にわたって個室で過ごさなければいけないため、洗面台で洗濯をする不便さや、運動ができず健康状態に不安を覚えているという。
 男性は「せっかくの旅行だったのに、感染者を乗せたせいで、被害が広がっている。チェック態勢が甘かったのではないか」と指摘。「仮に感染していたら、帰った際に迷惑がかかる。約2週間の個室生活をなんとか乗り切りたい」と話した。

●関連記事

© 株式会社長崎新聞社