”まともに予約ができない旅行予約サイト” 新「るるぶトラベル」に非難の声

2月4日、JTB(ジェイティービー)が旅行予約サイト「るるぶトラベル」と、訪日旅行者向け予約サイト「JAPANiCAN.com」の2サイトを刷新したが、ネット上ではユーザーと施設側の双方がその使い勝手の悪さと数々の不具合を指摘し「炎上」状態となっている。Agoda(アゴダ)とJTBの間で締結された包括的業務提携の第一弾との事だが、ユーザーからは「使いづらくなった」「選ぶ理由がなくなった」と猛反発を招いている。

予約サイトなのに…ホテルの検索ができない

海外OTA(オンライン旅行代理店)が国内で苦戦している理由の一つが、日本人の宿泊施設の利用形態に即した検索エンジンが提供できていないことだと指摘されるが、今回のサイトリニューアルではほぼAgodaの検索フォームを踏襲したため、「国内旅行会社であるJTBのサイトを選ぶ意味がなくなった」との声が多く聞かれる。

新サイトでは都道府県名や地域をマップやリストから絞り込むことはできず、キーワード入力と利用日、宿泊人数による検索しかできない(PC版では下方に「〇〇県の予約」などという文字リンクも存在するが、それを選んでも地域内での絞り込み検索機能は無いので意味はない)。実際筆者が検索しても、有名温泉地や県庁所在地のホテルに関してはある程度の検索ができたものの、それ以外の地域に関してはまるで使えないと言わざるを得ない。「奥飛騨」はエラー表示、「日景温泉」などのローカル温泉地は完全一致させても検索されない。

もう少しメジャーな「成田」を検索しても上方に出てくる選択肢は、成田空港、成田病院、成田山分院(仙台)…などホテル検索のサイトとは思えない有様だ。恐らくこの時点で半数以上の利用者はサイトを離脱するだろう。

成田病院をクリックするとなぜか名古屋のビジネスホテル一覧が表示されるのでよく見てみると、千葉・成田と愛知・名古屋に同名の病院があるようだ。ホテル名を直接入力すれば検索は可能だが、あらかじめめ宿泊希望のホテルが決まっているなら、わざわざ総合サイトを選ばず直接その宿のサイトを予約した方が早いだろう。地域を絞り込みながら比較検討しつつ宿を選ぶという従前のスタイルを完全否定してしまったことは、国内に顧客基盤を持つサイトとしては致命的だ。

また、日本のユーザーなら必須の食事の有無や部屋タイプによる検索は、検索を経てホテルのプラン表示までたどり着かない限り不可能になった。これでは旅館タイプの宿を切り捨てたのと同じことだ。海外のOTA各社が旅館タイプの取り込みを強化し、日本独自のUIカスタマイズに取り組んでいるのと比較すると今回のサイトリニューアルが時代に逆行していることは否めない。JTBの今後の施設との関係悪化が心配にすらなってくる。

ホテルにないはずの「釣り」「テニスコート」が表示される!

客室在庫の提供はしているにもかかわらず、るるぶトラベル上では売り切れとなり、販売できない状態の宿泊施設の存在も数多く確認されている(原稿執筆時点でまる4日間売り切れのままだ)。施設内には存在しないテニスコートや釣り施設などの表示が出るホテル、キャンセル無料という事実誤認を与えかねない表示の出るホテル、口コミ評価が消えたり、点数がまるで変ってしまっことでこれまでの優位性が無くなったりしたホテル、管理画面から登録したもの以外の写真やデータが使われて削除もできないホテルなどからもブーイングが上がっている。

サインインしたのに電話番号や氏名を再度入力しなければならない、キャンセルしたいのに予約検索をするとトップ画面に戻ってしまい途方に暮れるユーザーなどもSNS上で不満をぶちまけており、利用者側も途方に暮れているのが現状だ。いったいどうやって収拾するつもりなのだろう。

JTBの対応に、宿泊施設側からも非難

今回のサイトリニューアルの報道は2月4日だが、実際には2月2日午前0時から変更されているようだ。もちろん施設や利用者への事前告知は無かったため、深夜から双方が大パニックになった。JTB側には利用者、宿泊施設の双方の意見を集約して不具合を修正し、サイト公開を延期する決断ができる立場の人はいなかったのか。

今回のリニューアル強行を「大企業病」と揶揄したり、「他のOTAがリニューアルを延期した事例に倣わなかったのか」と疑問を呈する意見がネット上にも書かれたりするくらいなので、多くのユーザーが「なぜわざわざ改悪にも取れるリニューアルをしたのか?」と疑問に思っているのは間違いないだろう。

そして今回の「炎上」の最大の問題は、上記のクレームに対する回答がおよそこれまでのJTBらしからぬことだ。JTBに対して意見を上げたという複数の施設関係者の話を聞いてもほぼ全員が「Agodaの管轄なので即応できない」「要望を承ってAgodaに情報提供する」「検索できない、販売されない件については我々も残念に思う」などというニュアンスの回答を得ている。JTB担当者が本件を自社の問題とは捉えていないかのような違和感がある。それを感じて「Agodaとの提携の本質は単なる外注なのではないか」とまで言い切るホテル経営者すらいるほどだ。

また、トラベルコなどのメタサーチ各社もるるぶトラベルとの接続を停止しており、プラン表示がなされなくなった。この混乱を見る限り当然の措置といえよう。

恐らく、リニューアル後のるるぶトラベルの販売実績は一時的に大きく落ち込むだろう。もし落ち込まなかったとして、それがJTBの想定通りであったとすれば、それは検索方法変更の影響の少ない都市部のビジネスホテルの貢献であり、地方や旅館タイプの切り捨てに繋がるリニューアルであったことの反証でもある。筆者の予測通り落ち込んだとすれば、これは明らかにJTBの判断力の欠如であったといえる。どちらにしても全国の契約施設に対するJTBの求心力低下は免れないだろう。

「Agodaの強みであるデジタルテクノロジーと、JTBの強みである仕入・ネットワーク力及び旅行販売ノウハウの相乗効果を狙う」と鳴り物入りでスタートした提携も、第一弾の評価は「Agodaのデジタルテクノロジーへのがっかり感と、JTBの仕入れネットワーク力の棄損、旅行販売ノウハウの放棄」となりつつある。JTBに対しては、今回のトラブルの対応と、Agoda社任せではない日本ユーザー(利用者、施設双方)の引き留め策を早急に行わなければ、いくらるるぶトラベルといえども存亡の危機にさらされることとなるだろう。

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