テレヴィジョン「マーキー・ムーン」枠にはまらないニューヨークパンク

1977年 2月8日 テレヴィジョンのアルバム「マーキー・ムーン」がリリースされた日

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ニューヨークパンクを代表するバンド、テレヴィジョン

「アンタの聴いている音楽はうるさいばっかりでどれもこれも同じ曲に聴こえる」と母親によく言われたものだ。

「年寄りには分からないんだよ」と憎まれ口を叩いたりしていたが、時々、同級生からも「パンクは似たような曲ばかりでつまらない」なんて言われることがあった。「聴きもしないくせにそんなことを言うなよ。パンクはバラエティ豊かなんだぞ」と反論をするのだが、納得してもらえたことはほとんどなかった。

セックス・ピストルズやクラッシュのアルバム以上によく聴いたのがテレヴィジョンの『マーキー・ムーン』だった。このアルバムの収録曲数はたったの8曲。収録時間は46分で、5分以上の曲が8曲中5曲。タイトル曲の「マーキー・ムーン」に至っては10分を超える大作だ。3分を超えたらパンクじゃないだろって? いやいや、曲の長さは関係ない。これがニューヨークパンクを代表するバンド、テレヴィジョンだ。

恋人はパティ・スミス。官能的なロックンローラー、トム・ヴァーレイン

音楽雑誌で見たクリスタルギターを弾くトム・ヴァーレインはひょろっとしていて、文学青年のような線の細い印象を受けた。当時の恋人パティ・スミスはトム・ヴァーレインのことを「鶴のような長い首を持った官能的なロックンローラー」と表現していた。なんか弱そうで格好悪いって? いやいや、見た目なんか関係ない。これがニューヨークパンクを代表するバンド、テレヴィジョンだ。

2本のギターが絡み合い、ベースとドラムがそれに呼応すると、時に背筋がゾクッとするような緊張感が漲り、一音一音を集中して聴き続けたくなるような中毒性があるサウンド。激しいメッセージがなくても、テレヴィジョンが鳴らす楽器の音が僕の世界を新しく塗り替えていく。これこそがニューヨークパンクを代表するバンド、テレヴィジョンなのだ。

ジョー・ストラマーは言った「パンクは姿勢、スタイルじゃない」

“Punk is attitude, not style” とジョー・ストラマーは言った。パンクはひとつの枠に括ることはできない。自分の中にある何らかの衝動から生まれた音楽がパンクだ。社会への反抗を歌うことがパンクなら、テレヴィジョンのように自分たちの音楽を作る衝動もまたパンクなのだ。打算がないパンクには退屈でつまらないものなんて存在しないし、似たようなものなんてある訳がない。

そんなことを思いながら、最近、娘が聴いている音楽を何気なく横で聴いていてふとつぶやいたのが「どれもこれも似たような歌だな」というどこかで聞いたことがある言葉だった。

「そんなことはない!」と反論する娘に対し「こいつらには衝動がないんだよ」と言いながらも、自分の老化を心密かに心配しているのだった。

※2018年8月15日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: やっすぅ