年収230万も、サッカー愛で サッカーJ3・YSCCの奮闘

 J3のYSCCが苦闘している。昨季は2年連続の最下位に終わり、観客動員数は1試合平均で千人に満たない。それでもクラブは理想を追い、選手もまたアルバイトで生活費を稼ぎながらボールを追い続けている。

 ■厳しい「懐」 チームを運営するのは総合型地域スポーツクラブで、NPO法人の横浜スポーツ&カルチャークラブ。2014年度決算の営業収益1億7900万円はJ3で11チーム中9番目で、広告料収入はJ3リーグ平均の4分の1にも届かない。

 しかもホームタウンとする横浜市は、ビッグクラブのJ1横浜Mと元日本代表の三浦知良がいるJ2横浜FCが競合する地域。営業的な好機はなかなか巡ってこない。営業収益の半分を、クラブ会員費を含めたアカデミー関連収入で支えている。

 また、15年の観客動員数は14年の1試合平均1018人から微減の919人。J3リーグ平均2432人の半数以下で、最少となっている。■サッカー愛 昨季プロ契約していたのは8選手で、平均年収は推定約230万円。残りの選手たちは無給で、練習前後の時間を使ったアルバイトで生計を立ててプロを目指す。

 チーム人件費はJ3リーグ平均の5分の1程度。コンディション管理は当然難しく、選手のモチベーションは「はい上がりたい気持ちとサッカー愛」(吉野次郎理事長)に支えられている。

 武相高出身の在籍6年目、主将を務める29歳の吉田明生は「葛藤もある」と明かす。「生活はギリギリ。同期はどんどん社会人のキャリアを積んで、お金も余裕が出てくる年齢。俺はどうなんだろうなと思うこともある」と続ける。

 Jリーガーへの入り口は広がったが、今季横浜Mへの加入が決まったGK高橋拓也のようにステップアップできる選手は一握りしかいない。今オフもまた仲間がチームを去った。いずれは決断の時がやってくる。■地域根ざし ことし2016年はクラブ創設30周年。サッカー以外のスポーツも指導する総合型地域スポーツクラブとして、YSCCは地域の子どもたちらとともに歩んできた。

 かつて視察に訪れたJリーグの村井満チェアマンは「Jリーグ創設前から地域密着の理念を掲げたチームがあったのは驚き」と語った。J1、J2のクラブを含めてYSCC以外のクラブは収入の大半が広告料。アカデミー関連収入で運営をまかなっている「街クラブ」は唯一無二だ。

 吉野理事長は現状の厳しさを感じながらも「Jリーグに所属していれば子どもたちに夢を与えるクラブになれる可能性がある」と思いを語る。続けて「出来上がった都市部でどういう運営をするかが試されている。深く地域に根ざすことが求められている」と、サポーターや賛同者の呼び込みを模索している。

 「強くなれ! YS どんな時もオレたちがついてるぜ!」。1−3で敗れた昨年11月のホーム最終戦では、そんな横断幕が揺れ、最後まで育成組織の子どもたちの声が響いていた。Jリーグの理念を先行してきたYSCC。その理念をJリーグで貫こうと奮闘は続く。

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