「コンビニ強盗よりも安全」、犯罪行為に導く“闇のリクルーター”のあきれる誘い文句

昨年11月にアポ電話をかけてから強盗を行ったとみられる犯人らが逮捕されました。そのきっかけになったのが、闇サイトの求人募集です。今や、ネットを通じれば簡単に、犯罪に加担ができてしまう恐ろしい時代です。では、犯罪者を募るリクルーターたちは、どのような言葉で、未犯者らを犯罪へと駆り立てていくのでしょうか。


SNSが闇バイトの主流に

詐欺や強盗などの犯罪者を募る手段として用いられているのが、SNSの書き込みや闇サイトの募集です。

そこには“短時間”で“高額な報酬が得られる”ことが謳われています。しかし一見しただけでは、なんとなくブラックな仕事であることは推察されますが、どんなことをするのかは、文面からだけでははっきりしないようなものもあり、そのため連絡を取ってしまう人は多いのです。

以前に、闇サイトでの求人募集の実態をロケした時も「高額案件あります。体力に自信がある方」との書き込みに連絡を取ると「相手に重傷を負わせることができるか」と、強盗に入ったときに躊躇なく相手に危害を加えられるかを尋ねてきたこともあります。

また別な募集では、犯罪を紹介するリクルーターから「裏の仕事で、“黒カツオのたたき”の仕事もある」と言われたことも。これは隠語で、詐欺などのブラック(黒)な方法で金を集めた人(カツオ)を狙って、強盗(たたき)をする仕事でした。

もともと不正な金なので、警察には通報できず、強盗も発覚しないというのです。その時、スタンガンを持っていくような話もしていました。

こうした強盗に誘う募集もある一方で、やはり多いのが、詐欺行為に勧誘するものです。しかも募集の主流は、闇サイトからSNSへと移ってきています。掲示板に比べて、すぐに連絡が取れるなど、スピード感があるからでしょう。

では、どうやってリクルーターらは、応募してきた人たちを言葉巧みに、犯罪に駆り立てていくのでしょうか。テレビ番組にて、その辺りを芸人さんと一緒に調査しました。

SNSで、#闇バイト、#裏バイトと検索すると「本日案件あり。興味ある方、DMください」「3時間で10(万)」「1件あたり6(万)」というたくさんの書き込みが出てきます。

また、こちらから「お金がない」と書き込むと、すぐに「いいね」がつく状況です。お金がなくて何が「いいね」なのか、と思ってしまいますが、犯罪に誘うものにとっては、この上ないカモなので「いいね」ということなのでしょう。

そのなかに「お金に困っている人がいましたら、お仕事紹介できます。気になった方がいたら、DMでご連絡ください」というものがありました。連絡を取ると、テレグラムで話をしたいということでした。

リクルーターの巧みな話術

リクルーターの男が電話をかけてきました。

「仕事の内容ですけれども、保証金のあり、なしがあるんです。保証金というのは、先にお金を払ってもらう、保証ですね」

と言います。実際、募集の書き込みのなかにも、保証金の文字を多く見かけます。

まず「保証金なし」の仕事の内容を尋ねると、

「今、保証金ないやつですと、『受け出し』っていう形になるんですけど」と言います。

「受け出しとはなんですか?」と尋ねると「こちらが電話をかけて、キャッシュカードをすり替えてもらうものです」と答えます。

これは被害の多い手口で、金融機関や警察を騙って高齢者の家に赴き、封筒に相手のキャッシュカードを入れさせ、相手が目を離した隙に偽物の封筒にすり替えて、相手のカードを騙し取る手口のことです。

「引き換えたカードをATMで引き出してもらって、100万円引き出したら、報酬は5%です。100万円だったら、5万円ですね。仕事は平時の午前9時から午後6時までです」

さらに相手は「交通費も1日4,000円出します」ともいう。そもそも、こうした怪しげな求人には、お金に困った人が応募してくるものです。そうした人たちにとって、交通費4,000円を出してくれることは、とても嬉しい気持ちになることでしょう。さも相手のことを思いやっているような手段も使って犯罪に誘ってきます。

「ブラックな仕事になるんですけれども。捕まるとかも一切ないので」

今、詐欺のお金やカードを取りにいく、受け子の逮捕が相次いでいます。そうした逮捕への不安な気持ちを払拭することも怠りません。

「うちで扱っている受け出しは、300人扱っているんですけれども、そのうち4人しか、逮捕者はいなんですよね。リスクも全然なくて」

すでに4人も逮捕されているのですから、「リスクが全然ない」というのはおかしい話ですが、あえてそこは突っ込まずに、次の「保証金ありの仕事はどうなんですか?」と尋ねてみました。

「報酬は多くて100万円とか、3桁というのもありますし、リスクもあるんですけれども」

「どんな仕事なのですか?」と聞くと、「荷物を運んでもらったりするんですね」と答えます。今、金塊や違法な薬物などを運び、逮捕される事例も多いですが、そうしたものなのでしょうか。

「どんなものを運ぶんですか?」

「モノによって変わるんですけど、それに詳しい人間がいるので、代わりますね」

「もしもし」

先ほどの人とは違い、手慣れた感じで話を始めます。

「保証金あり」の案件とは

「運ぶものってなんですか?」

「100万円とかの単位だったら、クスリとかになりますね」

やはり違法薬物の密輸なのかという気持ちで話を聞いていましたが、男は次のようなことも話しだします。

「運ぶものが1千万円の単位になったら、偽のドル札とかですかね」

なんと、偽札を運ぶ仕事もあるというのです。闇の世界は奥深いものです。もしこれをした場合、外国通貨偽造及び行使等や関税法などの違反に問われて、罪はかなり重くなります。その辺りのことは相手も十分に承知しているようで「偽札って危険なんですよ」と切り出します。

「バレたりするんですか?」と聞くと、「僕らも検挙される前提じゃないんですけど、3分の1くらいです。成功率は」

要は、成功率が低いうえに、かつブツをもって逃走される恐れもあるために、密輸の仕事を実行する前に一定の保証金を納めてもらい、成功したら報酬とともに、そのお金を戻す形を取っていると言います。

ここから彼らの未犯者たちを巧みに誘う話術が見えてきました。

「逮捕される確率は1.5%」

「密輸の仕事は正直、お勧めしません。逮捕されるリスクが高いから」

そして、先に話した「受け出し」をまずやってみたらどうかと言ってきます。「そこで、お金を稼いでから、リスクの高い仕事をしても遅くはない」と説得し始めます。

「結構、僕らかなり(受け出し)やっているんですけど、今まで200人くらいに働いてもらっていて、パクられたのが、3人なんですよね。ものすごく安全ですから」さっきの男は4人だと話していましたが、1人減って3人になっています。

「逮捕される確率は1.5%ですね。200分の3なので。ってことは、98.5%は安全ですから」と、盛んに逮捕のリスクが低いことをアピールしてきます。

さらに、どこの統計かはわかりませんが「コンビニ強盗も3分の2は捕まります。66%は捕まるわけですよ。だから、いかにこれが安全な仕事かわかるでしょう」とも言ってきます。

密輸の仕事と違い、保証金がいらない上に、逮捕の危険度も低いということを訴えながら、今急募している詐欺の受け出しの仕事へと誘おうとするわけです。そして少年少女だけでなく、消防士、警察官などの公務員や、50代、60代といった中高年もこの種の犯罪に手を染めていくことになります。

こうした比較の手法で説得されて「ちょっとやってみようかな」という気持ちになったのかもしれません。終始、男は受け出しの仕事を押し付けるでもなく「でも逮捕のリスクは低いから、やった方がいいよ」と諭すような巧みな話術で誘ってきました。

必ずしも、犯罪に誘うリクルーターが全員、こうした手法を使うわけではありませんが、スマホを使ってSNSで簡単に犯罪者とつながれる時代ゆえに、甘く安心させるような言葉で未犯者を誘う手口には注意しなければなりません。

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