西武金子が「1番・中堅」を秋山から引き継ぐため…球団関係者指摘「とにかく出塁率」

今季はリードオフマンの座を確保することが期待される西武・金子侑司【写真:荒川祐史】

金子は「もともと右投げ右打ち」、コーチ指摘「“作った”左打席は少し不器用」

 西武の“不動の1番センター”だった秋山翔吾外野手が米大リーグ・レッズに移籍した。空いたスポットをそのまま受け継ぐと期待されているのが、球界きってのイケメンでもある金子侑司外野手だ。チームのリーグ3連覇の成否がかかっているといっても過言ではない。

 西武のキャンプ地の宮崎・南郷に細かい雨が降り続いた7日、室内練習場で一心不乱にバットを振る金子の姿を、周囲が遠巻きに見つめていた。スイッチヒッターの金子は、打撃マシンの後方に細長い棒を立て、「左右の打席で1度ずつ、打球が当たるまでやめない」と決めて打ち始めた。右打席では簡単に当てたが、左打席で一向に当たらず、クリアするのになんと1時間半もかかってしまった。

 レッズに移籍した先輩の秋山もよく取り入れていた練習。金子は「バットコントロールの精度を上げるための練習ですが、まあ、運もあるので」と苦笑いを浮かべた。

 一方、阿部真宏打撃コーチは「金子はもともと右投げ右打ちですから、“作った”左打席の方が少し不器用」と指摘。「ウチには現役時代に両打ちだった赤田(将吾)打撃コーチがいるし、もっといえば松井稼頭央2軍監督もいる。大いに相談して勉強してほしい」という。

 特に金子は今季から、松井2軍監督が現役時代につけた背番号7を継承している。「中学時代からスイッチヒッターだった」という金子にとって、プロ入り後に左打ちを始め、日米通算2705安打を量産するまでに至った松井2軍監督の経験から得るものは大きいだろう。

昨季はリードオフマンの座を守り切ることが出来なかった金子「出塁率は上げたい」

 西武は秋山が2014年9月6日のソフトバンク戦から昨季終了まで、実に739試合連続フルイニング出場。ポジションは常にセンターで、打順は大半が1番だった。

 一方、金子は昨季開幕から32試合連続で1番に抜擢され、3試合秋山に戻したあと、さらに4試合チャンスを与えられたが、結果を出せなかった。今季はリードオフマンの座に再挑戦するが、球団関係者は「1度失敗しているだけに、よほど性根を据えてやらないと……。とにかく出塁率を上げることに尽きる」と口をそろえる。

 金子は昨季、41盗塁で3年ぶり2度目のタイトルを獲得。打率.251、出塁率は.324だった。ただし、シーズン後半に主に8、9番として調子を上げ、帳尻を合わせた格好で、肝心の1番での成績は、36試合で打率.213、出塁率.297に過ぎない。1番として打率.315、出塁率.397を誇った秋山とは比べ物にならない。阿部コーチは「1番と8、9番では相手投手の警戒度が違いますから、秋山の域に達するのは容易ではない。ただ、金子にはいったん塁に出れば走れるという、秋山をしのぐ武器もある。成長に期待したい」と指摘した。

 金子自身は「もちろん出塁率は上げたい。課題は好不調の波を小さくすること。昨年は、調子が悪くなったときにコンパクトにいこうとするあまり、打撃が小さくなっていたと思う。今年は体を大きく使い、しっかり振ることを心掛けたい」と語る。

 昨季はレフトもしくはライトを守ったが、センターの適性を持っていることは間違いない。小関竜也外野守備走塁コーチは「守備範囲と打球に対する反応は12球団でもトップクラス」と評する。23歳の戸川大輔外野手、昨年に投手から転向した川越誠司外野手、内外野どこでも守れる新外国人のコーリー・スパンジェンバーグ外野手もセンターのポジションを狙うが、守備の面では金子が1歩も2歩もリードしているといえる。

 だからこそ、周囲の誰もが「あとは出塁率だけなんだけどな……」と惜しむのだ。今季、本格的なブレークとなるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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