先輩としての自覚と責任

 スポーツの世界に「上達したければ、うまい先輩のまねから入れ」という一つの基本がある。技術論だけではなく、礼節などの精神面も含めての教えだが、その先輩が反社会的な問題を起こしたら…。後輩たちは戸惑い、競技に集中できなくなるかもしれない▲先日、2017年夏の甲子園を制した花咲徳栄高(埼玉)の当時の主将が、強盗致傷などの容疑で逮捕された。住宅に金品を奪う目的で侵入。住人をバールのようなもので殴るなどしてけがを負わせたという▲わずか2年半前のヒーローに何があったのか。そう考えると同時に、気になるのは現役部員への影響。同校は今春の選抜大会出場を決めているが、偉大なOBの転落劇に水を差された▲一方、先輩の目覚ましい活躍はうれしい限りだ。後輩たちにとって「自分たちも」という励みになる▲その模範例と言えるのが長崎市立長崎商高。陸上の廣中璃梨佳選手(19)、バスケットボールの永田萌絵選手(22)の卒業生2人が、東京五輪の代表候補に名乗りを上げている。おかげで学校全体が活気づいているという▲運動の部活動出身者は善かれあしかれ、その経歴がついて回ることが多い。進学、就職など旅立ちの春を迎える今、もう一度、確認してもらいたい。先輩としての自覚と責任の大きさを。(城)

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