城島氏絶賛の“甲斐キャノン”の真の凄さ 正確性をどう身につけるのか?

ソフトバンク・城島健司氏(左)と話す甲斐拓也【写真:福谷佑介】

甲斐のスローイング練習を見た城島氏は「全部胸から下。これをもっと評価して欲しい」

 8日に行われたソフトバンクの宮崎キャンプ。全体練習終了後の特守でスローイング練習を行っていたのが甲斐拓也捕手をはじめとする捕手陣だった。そして、その脇で練習を見守っていたのが、城島健司会長付き特別アドバイザーだった。

 その城島氏は“甲斐キャノン”と称される甲斐のスローイング技術の高さを絶賛。それも、肩の強さやスローイングに移る速さではなく、ボールを正確に投げる正確性を高く評価した。

「肩が強いキャッチャーっていっぱいいます。プロに来ているレベルなんで、甲斐の肩だけが頭抜けているとは思わない。今日、皆さん見ていて、甲斐が何球投げたか分からないですけど、胸から上に1球も行っていないんですよ。しっかりと握れていない状況でも、全部胸から下に行っている。これをもっと凄いことだと評価してあげたいし、皆さんに評価して欲しいなと思います」」

 城島氏曰く、捕手がスローイングに移る際にしっかりとボールを握れるのは50球で4、5球しかないという。ほとんどでボールを握れていない中でも正確に、受け手の胸の下に投げられるところが、甲斐のスローイングで最も評価すべき点なのだという。

 甲斐自身もこう語る。

「僕の中で到達点のところを正確に、というのはポイントに置いています。そういうところを見てくれているというのはやっぱり嬉しいですし、城島さんは同じキャッチャーで、そういうところを理解してくれているんだなと思いますね。試合の中で握れないことの方が多いので、その中でどれだけしっかり投げ切れるのかは自分としても課題として持っています。そこを見ていただけるのは嬉しいですし、やっぱり違うなと思いますね」

「練習から、なんならキャッチボールから指先の感覚を持ってやっています」

 甲斐自身もボールが握れない状況で正確にスローイングをすることは自身も意識するポイントだという。では、城島氏も驚いた、その正確性の秘訣はどこにあるのか。そして、どうやって身に付けてきたのだろうか。

「最終的に離れるのは指2本、人差し指と中指の2本です。握れない時は、そのどちらかで頑張らないといけないので、そこは自分の中で意識を置いてやっています。握れなくても人差し指で頑張るとか、瞬時に判断してやっていっています。そこは練習から、なんならキャッチボールからやっていますし、指先の感覚を持ってやっています」

「時には、本当に指1本で投げていることもあります。指1本で頑張らないといけないし、その指を意識して投げないといけない。そこの感覚が大事になるので普段から意識してやっています」

 練習中から常に、ましてやキャッチボール中から、その握れない状況を頭に置き、人差し指と中指の神経を研ぎ澄ませてボールを投げている甲斐。長年、それを続け、積み重ねてきたからこそ、今、歴戦の城島氏も驚くほどのスローイングスキルを身につけたのだろう。

 城島アドバイザーは甲斐がフルイニング出場できるだけの選手になれば、ソフトバンクが「ぶっちぎりで優勝する」と言い切った。これを伝え聞いた甲斐は「まず今それを聞いて嬉しさしかないです。城島さんは手の届くようなところにいる人ではないですし、ましてや小さい時から見てきた方。そういう方にそう言ってもらえることほど嬉しいものはないです。簡単ではないですけど、しっかり期待に応えられる選手になりたい。まだまだなので、努力してやっていきたいと思います」と誓っていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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