楽しんで挑戦続けたい 陸上長距離・廣中璃梨佳 2020に懸ける長崎県勢 File.12

全国都道府県対抗女子駅伝の快走は「恩返しの気持ち」と言う廣中。「また長崎代表で走りたい」=京都市、西京極総合運動公園

 今、走ることがとても楽しい。限界をつくらずに挑戦して、過去の自分を超えていく。それを続けられたら、理想の「世界で戦える選手」に近づけるはずだ。昨年12月、陸上女子5000メートルで東京五輪の参加標準記録を切った廣中璃梨佳。6月の日本選手権で3位以上に入れば、世界最高の舞台に立てる位置まで駆け上がってきた。

■光あれば影も

 長崎商高時代、超高校級の走りで長距離界を盛り上げた。卒業後の昨春、日本郵政グループ(東京)に入社。東京五輪マラソン代表の鈴木亜由子ら日の丸経験者も多く、高卒1年目の同期3人も力がある。高いレベルでの切磋琢磨(せっさたくま)に加え、体幹トレーニングなどの体づくりからやり直した。
 この地道な基礎練習が実を結び、12月に15分5秒40をマークして、東京五輪参加標準記録(15分10秒00)をクリア。11月の全日本実業団対抗女子駅伝、長崎代表で走った年始の全国都道府県対抗女子駅伝は、それぞれ1区(7キロ、6キロ)で区間新記録を樹立した。
 周囲から「順調」と言われる実業団1年目。でも、それだけの結果を残すためには、もちろん、それだけのことを積み重ねてきた。
 「光があれば影もあるように、きついこともたくさんあった」
 夏ごろは状態があまり上がらず、1年目の目標にしていた「5000メートルでドーハ世界選手権(10月)」を逃した。周りの期待に「応えたい」と思うのに、なかなかうまくいかない。そんなもどかしさも含めて、苦しい日々を過ごした。

■思い出し切る

 だが、この苦しい時期が転機にもなった。不安な気持ちを親身になって聞いてくれる同期が、夏合宿の練習で懸命に頑張る姿に励まされた。いつも一番の応援団でいてくれる両親の支えもまた、大きかった。
 多くの人たちのおかげで復調してきたころ、世界選手権が開幕した。そこで1学年上の田中希実(豊田自動織機TC)が5000メートルで決勝進出。日本歴代2位の15分0秒01で走った。「自分にも、人にも負けたくない」。刺激になった。見据えている目線の位置が、また一つ、上がった。
 それからは「もっと強い廣中」が帰ってきた。全日本実業団対抗女子駅伝で自信につながる走りを披露。この納得のレースができたことで、東京五輪挑戦という決意が固まった。
 その2週間後の実業団記録会5000メートル。参加標準記録突破を狙ってスタートすると、3000メートルを9分7秒で通過した後、1000メートルで3分を切るペースに上げた。ここからのラストもきつかったが、応援してくれている人たちへの感謝を走りに込めた。今の力をすべて出し切った。結果はしっかりとついてきた。
 五輪切符が懸かる約5カ月後の日本選手権は、一つの通過点にできればと思う。「楽しいうちに思う存分走って、いけるところまでいきたい」。「東京」は世界へ羽ばたく始まりの舞台になる。

 【略歴】ひろなか・りりか 放虎原小6年で大村陸上クラブへ入り、桜が原中から本格的に走り始めた。長崎商高時代はインターハイや国体で入賞を欠かさず、U20日本代表として国際大会も経験。2019年に日本郵政グループ入社後も、チームの駅伝日本一に貢献するなど活躍を続ける。“お守り”は中学時代に母の奈利子さんと買った青紫色の帽子。「自然と力が湧く」。自己ベストは5000メートル15分5秒40、3000メートル8分56秒12。164センチ、47キロ。大村市出身。

 

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