バレンタインデーとお袋のクッキー
今年もやってくるぅ~、恐怖のバレンタイン~。50になっても独り身、いまだにまったく女っ気がない私にとっては縁がないイベントだよなぁ… と思わず自虐的に始めてしまった今回の Re:minder。
でもね、そうは言っても50年も生きてくると「モテ期」っていうのもあったわけで、振り返ってみれば、小学校の頃はモテてたんだよ、こんな私でも。昨年末に行われた小学校の同窓会でもその話題で持ちきりだったんだけど、ワタシ、小学校の頃、バレンタインに食べきれないくらい膨大の量のチョコをもらったことがあるんだよね。まるでジャニーズのように。
うわっ!オレ、モテる~!
… と、その時は思ったんだけど、実際のところは、みんなホワイトデーにお返しする、お袋が焼いてくれた手製のクッキーが目当てだったのね。いつもは大雑把で男っぽい性格だったけど、こと料理になると “マメ” だったんだよ、ウチのお袋。この時のクッキーも学校で大好評でさ、だからバレンタインデーは、いつも抱えきれないほどのチョコをもらってたわけなのよ。
そう、べつに私がモテてたわけじゃないんだよ、本当のところは…。でもバレンタインと言うと、あの時の記憶が一番鮮明に残ってたりするなぁ。
いまだにこの曲! バレンタインの定番「バレンタイン・キッス」
ところで、ヒット曲界のバレンタインソングも数々あるわけですが、この曲に勝る曲は、現在までもないよなぁ。
国生さゆり「バレンタイン・キッス」。リリースは1986年2月1日。リリースから34年も経つんですよ、信じられないですよね。個人的な感覚から言えば、“昨日” のような感じもするんだけどなぁ。
それでもいまだにバレンタインっていうとこの曲なんだもんね。あの当時からすると30年も先に、この曲がバレンタインの定番ソングになっているなんて全く考えもしてなかったですけどね。
時代を超えたエバーグリーン、その後のアイドルのマストアイテム!
30年以上も歌い継がれているっていうのは、飽きの来ないキャッチーな曲調っていうことはもちろんの事。でも最大の要因はこの曲には「時代性がない」ってところなんだろうね。山下達郎氏の「クリスマス・イブ」もそうなんだけど、リリース時の時代性が濃く表れた曲っていうのは、時代を超えたエバーグリーンになるのは難しい。
例えば、おニャン子クラブとしてのデビュー曲「セーラー服を脱がさないで」なんかは、80年代中盤っていうあの軽薄な時代性があったからこその曲だったんだよね。女子大生ブームが一段落し、次は女子高生ブームだぁ~、ってことで起こった一大ムーヴメントのテーマ曲的だった「セーラー服を脱がさないで」なわけで。今、どこかのアイドルにカバーされても、なんか違うよね… っていう違和感は感じるわな。もちろん “ナツメロ” としては、今も存在感はあるんだけどね。
その点この「バレンタイン・キッス」そういう時代性を感じさせない。もっとも曲調は60年代のオールディーズを彷彿とさせるような、甘く煌びやかなポップスではあるんだけれど、これは「夕焼けニャンニャン」の石田プロデューサーの意向だったようだ。
でも、そういう時代性を感じさせない曲想であるからからこそ、その後のアイドルにマストアイテムとして歌い継がれ、いまだに『テニスの王子様』のキャラクターソングとして、毎年この時期になるとカバーされて来続けているんだろうな、とは感じますね。
初期おニャン子クラブは初動だけじゃない、累計売上枚数も高かった!
おニャン子関連の曲は「初動勝負」という様相が強い。初登場の週に全累積セールスの半分以上売っちゃう。今にも通じるような売れ方ですね。80年代も中盤を過ぎたこの当時、すでに初登場1位という曲もかなり増えてたわけで、初登場1というのも珍しい現象ではなくなっていた。
初登場週に全売り上げの半分以上っていう現象はおニャン子関連の曲が多かった。ヒットチャート1位が1位ではなくなった日。そんな揶揄もされてたよな。ただそれは、86年4月以降チャートアクションの事。それ以前、特にこの「バレンタイン・キッス」がリリースされた頃はそんなことはなかった。むしろ当時のアイドルとしては比較的粘ったチャートアクションを見せ、累積売り上げ枚数も高かった。
「バレンタイン・キッス」前後、1986年3月までにリリースされたおニャン子関連の主な曲の売り上げ枚数は以下の通りだ。
■ 冬のオペラグラス / 新田恵利
32.0万枚(1986年1月1日リリース)
■ バナナの涙 / うしろゆびさされ組
31.0万枚(1986年1月21日リリース)
■ じゃあね / おニャン子クラブ
28.2万枚(1986年2月21日リリース)
■ 季節はずれの恋 / 吉沢秋絵
28.0万枚(1986年3月1日リリース)
■ 青いスタスィオン / 河合その子
34.1万枚(1986年3月21日リリース)
いずれもオリコン1位獲得。特に「冬のオペラグラス」はオリコンで4週連続(うち1週は2週集計)で1位。河合その子「青いスタスィオン」はおニャン子関連の曲では最高売り上げとなっている。つまりは、この「バレンタイン・キッス」前後、おニャン子クラブ人気は最高潮だったわけですね。
初登場1位を逃したのはオリコンの集計期間のあや
ところで、この「バレンタイン・キッス」は、オリコン1986年2月10付けで初登場で2位。その時の週間売り上げは9.5万枚。次の週の週間売り上げも9.0万枚。2週続けて9万枚強の売り上げと粘りを見せている。
もっともこの曲も前回の中森明菜「北ウイング」のようにオリコンの集計期間のあやによって、最高位2位。1位を取れなかったおニャン子関係の曲となってしまったのだが…。 ※『オリコン最高位2位、中森明菜「北ウイング」チャート集計期間のあやで泣いた名曲』参照
この曲のリリース日は1986年2月1日。この日は “土曜日” だったんですね。つまり、初登場の2月10日付の売り上げ枚数は “2日集計” での数字ということになる。
週間売上枚数は岡田有希子「くちびるNetwork」と僅差!
この週の1位は、岡田有希子さんの「くちびるNetwork」。週間売り上げ枚数は9.7万枚。岡田有希子さんにとって初の、そして「最後」の1位獲得曲のこの曲なんだけど、週間売り上げ枚数の差は僅かだったんですよね。
しかも、「くちびるNetwork」のリリース日は1986年1月29日。今にも通じる “水曜リリース”。レコード流通の関係上のフライングリリースで月曜日には店頭に並ぶところもあり、したがってオリコン集計では1週間まるまるでのこの売り上げ枚数。そして「くちびるNetwork」」は、次の週、早くも息切れして7位までランクを下げている。
… ということは、もし、「バレンタイン・キッス」がもう、1日、2日、あわよくば “水曜リリース” にしていれば、間違いなく「くちびるNetwork」」を抜き、オリコンでも初登場1位だっただろう… っていうのが、今でもチャートマニアの間での定説になっていますね。
オリコンとは別のランキング調査会社では、「バレンタイン・キッス」が「くちびるNetwork」を上回り初登場1位を獲得したところもある。これも一つの “チャート上のあや” っていうんでしょうか。
今では、1位を獲得しそうな強力アーティストのリリースがバッティッングすることは少なくなり、このようにチャート上のバトルを繰り広げるランキングっていうのも少なくなりましたけどね。チャートマニアとしては、ランキング上での各曲のチャートアクションバトルというのもヒット曲を追いかける上での楽しみの一つだったんだけどね。ヒット曲を追いかける魅力の一つがなくなりちょっと寂しいところではありますね。
Song Data
■ 国生さゆり / バレンタイン・キッス
■ 作詞:秋元康
■ 作曲:瀬井広明
■ 編曲:佐藤準
■ リリース日:1986年2月1日
■ 発売元:CBSソニー
■ オリコン最高位:2位
■ 売上枚数:31.7万枚
■ かじやんの THE HITCHART HOT30 最高位:2位
■ HOT30 ランクイン期間:1986年2月10日~3月17日付
カタリベ: かじやん