Mars89、あらかじめ決められた恋人たちへ、いとうせいこうis the poetが出演の「FLOWERS LOFT GRAND OPENING DAY!」

2020/0202 FLOWERS LOFT GRAND OPENING DAY

路上に花を咲かせよう

2020年2月2日(日)Flower Loft

「私たちは路上に出よう、黙るのはやめよう」

下北沢にオープンしたFlowers Loftのこけら落とし。出演はMars89、あらかじめ決められた恋人たちへ、いとうせいこうis the poet。各々独自のサウンドの異なる世代の3組が、グググーッと繋がっていくイベントだった。縦の軸と横の軸がグググーッと近づき繋がっていき、太くなっていくようなイベントだった。

Flower Loftの入り口に輝く「YOU ARE FLOWERS ON THE ROAD」というネオンは、いとうせいこうの「デモ隊の諸君、君たちは路上の花だ」という詩から取ったものだそう。そしてこの日のイベントのタイトルは『路上に花を咲かせよう』。路上の花とはデモ隊。そしてイベントのタイトルが『路上に花を咲かせよう』。つまり、「私たちは路上に出よう、黙るのはやめよう」という意思表明なのだと思う。それはこのイベントのテーマだと思うし、Flowers Loftというライブハウスのテーマなのかもしれない。きっとそうだ。開演前、流れてくるのはミュートビートの「Flower」。壁にある「NO WAR」のプラカードのオブジェは北山雅和さんの作品。一つ一つがどこかで繋がっている。そう感じられるのが心地いい。

トップを飾ったのはMars89。クラブを路上に変え、路上をクラブに変えている若きDJ/コンポーザーだ。重く鋭く腰に響く音、同時に頭の上に舞うような音。まるで人々が歩き続ける力強い足音と街のざわめきのようだ。ここに居る、ここから進む。連なる音が私にはそんなふうに響いた。

JAGATARAが流れた後に登場したのは、あらかじめ決められた恋人たちへ。インストだからこその豊かな表現力。一瞬の出来事をグイッと掴み、思い切り天に投げ永遠に転換していく。なんて言葉にすると漠然として抽象的だが、あら恋のライブを体感するとそれが本当にリアルに感じられるのだ。

そして、いとうせいこうis the poet。反骨の人である田中正造、ななおさかきの言葉、もちろんいとうせいこうの言葉。ポエトリーリーディングというよりアジテーションのような鋭さ、熱さ。バンドが作り出すダブサウンドと拮抗しながらグイグイ進む。後半は3曲が繋がり、せいこうさん言うところの「交響曲」となった。もうすぐリリースの7インチ「怒りを吠えるけもの」収録の曲も披露。言葉が持つ力と音によるマジック。確信と奇跡。緊迫感と解放感。アンコールではザ・スペシャルズの「A Message To You Rudy」が飛び出す。アットホームな空気に変わり、フロアからも観客の歌声。みんないい笑顔だ。

街で生きている3組とFlowers Loftという場所。一つ一つが繋がっていき、前へと進み、うねりとなっていく。そんなイベントだった。こけら落としとして実にピッタリのイベントだった。(Text:遠藤妙子/ Photo:丸山恵理)

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