王者キャシディのスーパーフォーミュラ参戦が“未定”に。聞こえてくるF1チームとの交渉話

 2月7日に発表された、TOYOTA GAZOO Racingの2020年のモータースポーツ活動計画。全日本スーパーフォーミュラ選手権の参戦ラインアップの中には、2019年にVANTELIN TEAM TOM’Sから参戦して見事チャンピオンに輝いたニック・キャシディの名前がなかった。前年チャンピオンに与えられるカーナンバー1のVANTELIN TEAM TOM’Sのドライバーは『未定』と表記されたが、その背景に「キャシディがF1チームと交渉中」との噂が聞こえてきた。

 母国ニュージーランドやヨーロッパでステップアップし、2015年に来日したキャシディはその年、全日本F3選手権でチャンピオンに輝き、2017年にはスーパーGT500クラスのタイトルを獲得。スーパーフォーミュラでも参戦3年目の2019年、山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)との戦いを制してチャンピオンとなり、国内トップドライバーのポジションを不動のものにした。

 キャシディは昨年、鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリにも訪れ、タイトルを争った山本のF1走行を目の当たりにしているように、F1へのステップアップを目指していることは間違いない。キャシディはオーストラリアのスーパーカーVASCシリーズに参戦したほか、2019年もインターコンチネンタルGTチャレンジのスパ24時間、アジアン・ル・マン・シリーズに参戦するなど、国内外のさまざまなカテゴリーへ参戦意欲を見せており、自分の将来のステップアップを探っている様子がうかがえた。

 一方でキャシディはスーパーGTでは2年連続シリーズ2位となり、スーパーフォーミュラでは2018年に2位、昨年チャンピオンとなったことでF1マシンのドライブに必要なスーパーライセンス獲得の必要ポイントの基準は満たしている。

 現在聞こえてくる情報をまとめると、F1チームの2020年のレギュラードライバーのラインアップはすでに10チーム20名が確定しているが、テスト&リザーブドライバーとしての可能性はまだまだ残されている。キャシディにとってはレギュラードライバーに何かあった際にはシートを得ることができるテスト&リザーブ契約を狙い、テストやシミュレーターなどでF1マシンに慣れる機会を作るのが2020年のターゲットとなるのかもしれない。

 TOYOTA GAZOO Racingからの発表でも、スーパーGTではKeePer TOM’S GR Supraに平川亮とともに名前が明記されていたことからも、完全に日本のレースを離れるわけではないようで、F1とスーパーフォーミュラの日程を鑑みて、F1チームとどの程度F1開催時に同行できるかなどの契約条項の詳細を詰めている段階かと予想される。マネジメントしているのは、多くのF1ドライバーを抱えているマネジメント会社という情報もあった。

 ただ、まだ交渉しているチームの名前は明らかになっていないが、キャシディの実績を持ってしてもF1のトップチームのテストドライバーになることは難しいとも予想される。キャシディは昨年までレッドブル・アスリートとしてレッドブルと契約していたが、F1ではレッドブル・ジュニアのドライバーが優先されることになる。日本のファンとしてはホンダF1との接点を期待したいが、スーパーGTで今年もトヨタ陣営に加わっていることからも、F1でのホンダとの関わりは現実的ではない。

 キャシディがどのような形で、そしてどのF1チームと関わることになるのか。今年のスーパーフォーミュラで走ることも期待したいが、スーパーフォーミュラからF1への道が昨年の山本尚貴のように続くのであれば、それは日本のファンにとっても嬉しいことになる。今後のキャシディの動向が非常に気になるところだ。

2019年全日本スーパーフォーミュラ選手権のドライバーチャンピオンを獲得したニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)
ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)

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