チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星、太陽からの距離によって色が変わっていた

太陽をおよそ6年半で一周している短周期彗星「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)」は、欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」が周回観測を実施した彗星です。今回、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の「色」が太陽からの距離によって変化していることが、ロゼッタの観測データを用いた研究によって明らかになりました。

■太陽から遠いと赤っぽく、近いと青っぽく見える彗星本体

彗星探査機ロゼッタによって撮影されたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(Credit: ESA/Rosetta/NAVCAM)

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、太陽に最も近づくときは地球と火星の公転軌道の中間あたり(約1.3天文単位)、最も遠ざかるときは木星の公転軌道よりも外側(約5.7天文単位)まで移動する楕円形の軌道を描いています。

今回、Gianrico Filacchione氏(イタリア国立天体物理学研究所)らの研究チームは、2014年8月から2016年9月までのおよそ2年間に渡るロゼッタの観測データを分析した結果、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星本体(幅およそ3km)の表面の色が太陽の遠くでは赤っぽく、近くでは青っぽく変化していたことが判明したと発表しました。

これに対し、彗星本体の周囲を取り囲む「コマ」(彗星から放出されたガスや塵の集まり)の色は彗星本体とは反対に、太陽の遠くでは青っぽく、近くでは赤っぽく変化していたことも明らかになっています。本体の色が赤ければコマは青く、本体が青ければコマは赤くといったように、逆の色合いに変化していたのです。

■赤い塵と彗星の活動レベルが色を変化させていた

太陽からの距離とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の色の変化を示した図。太陽(中央)から遠い場所(左の2点)では彗星本体が赤っぽく、その周囲のコマが青っぽく見えるが、太陽に近い場所(右)では逆に彗星本体が青っぽく、コマが赤っぽく見える(Credit: ESA)

今回の研究によると、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の色は「有機物を含んだ塵」「彗星の活動度」に左右されるようです。

研究チームでは、太陽から遠ざかっているときの彗星本体が赤っぽく見えるのは、彗星本体の表面を覆う塵に有機物が含まれているからだと考えています。彗星が太陽に近づいて活動が激しくなると、この塵が吹き飛ばされるとともに隠されていた氷の層が現れるため、彗星本体が青っぽく見えるようになるというわけです。また、こうして吹き飛ばされた塵がコマに加わることで、太陽の近くではコマの色が赤っぽく見えるようになります。

いっぽう、太陽から遠ざかると彗星の活動が穏やかになり、表面に塵が降り積もって層を成すことで、彗星本体は再び赤っぽく見えるようになります。コマの色も塵が減ることで赤みが薄らいでいき、水蒸気が凝結して氷になることで青っぽく見えるようになるとみられています。

Image Credit: ESA/Rosetta/NAVCAM
Source: ESA
文/松村武宏

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