増加する“逆老老介護”…超高齢化社会に向けて

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。1月31日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、健康社会学者で気象予報士の河合薫さんが“老い”について見解を述べました。

◆超高齢化社会で複雑化する介護問題

2019年の師走、福岡で88歳の母親が寝たきりの70歳の娘を刃物で刺し、無理心中を図り、2人とも亡くなりました。娘はパーキンソン病を患い、要介護度は最も重い「5」。母親は逆老老介護生活を続け、周囲に娘の体調の悪化や経済的な不安を訴えていました。

介護現場でも“逆老老介護”という言葉が使われるようになってきた昨今、最も懸念されているのが80歳を超えた親が50代の子どもの面倒をみる「8050問題」。また、夫婦間でも90歳を超えた高齢者が80歳前後の配偶者を介護する例が急増しており、例えば同居の主な介護者が80歳以上というケースは、2001年は6%だったものの、2016年は16%に。

寿命は延びる一方で、「パーキンソン病やアルツハイマー病などは50~60歳代から罹患率は上がってしまうので、早くかかってしまうと(必然的に)親が子を介護することになってしまう」と河合さん。そんな現状について、「特別なことではなく、超高齢化社会。(高齢者は)特別な人たちじゃない」と言い、1970年と2020年の日本の人口ピラミッド図を提示。

それを比較してみると、明らかに高齢者の割合が異なり「これだけの人(高齢者)が街に溢れ、生活しているという視点で見てほしい」と訴えます。しかも、これが2035年になると「街行く人のほとんどが60歳以上になる」と言います。

◆高齢者は社会の置いてきぼりに……

次に河合さんは“老い”に関して言及。人間は老いると目が見え辛くなり、耳も聞こえにくくなり、勘違いや思い込みが多くなるそう。さらには、新しいことが覚えられなくなるそうで、そうなるとネット化やキャッシュレス社会など、社会で進められていることが理解できず、「高齢者は置いてきぼりになっている」と指摘。

その上、何もできなくなると認知症に結び付けられることも多くなりますが、河合さんは「認知症は病気ではない」と言います。認知症とは「物忘れや認知機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態」と説明し、「なったからといって何もできないわけじゃない」と補足します。

また、原因についても病気がきっかけの場合もあるものの、多くはわからないと言われているそうで、「単なる老化じゃないかという意見もある」と河合さん。それだけに、「老化が進むことで誰もが認知症になる可能性がある」と警鐘を鳴らします。

◆高齢者目線で社会の標準を変えること

この50年で人口ピラミッドは大きく変化し、世間でもバリアフリーが叫ばれるようになりましたが、河合さんは「日本社会は生活のスタンダードがほとんど変わっていない」と言います。そして、高齢化社会とは何かと言えば、「標準を変えること」と言い、「高齢者目線でスタンダードを変えていかないと、置いてきぼりになる高齢者が増えていく」と主張。世代を超えて高齢者に対応する社会こそが「優しい社会であり、成熟した社会」と述べていました。

ファッションデザイナーの渋谷ザニーさんは、「先進国の陰の部分が高齢者の扱いに現れているような気がする」と述べ、日本に限らず先進国は活動的で生産力を生み出す人が社会の中心であり、発展途上国に比べ、生産力のなくなった人に対する思いやりにかけると感じているそう。それだけに、「日本自体、アジアの1つの国として、本来の良い部分を残してもらいたい」と願っていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~7:59 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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