女性会員の平均年収1000万円、「超高級クレカ」が狙う“鉱脈”

マスターカードの最上位クラスである「ラグジュアリーカード」は、日本上陸後では初めて、これまでの取り組みの成果と今後の事業戦略について説明する発表会を開催しました。

そこで明かされたのは、年会費が数万円以上もする「ステータスカード」の中では日本で後発組でありながら、会員数を3年で3倍に伸ばしたという驚異的な実績です。その成功の要となったのが “ブルーオーシャン”であったミレニアル世代の獲得戦略でした。

では具体的にどのような取り組みを行ったのでしょうか。今後の事業戦略と合わせて、2月7日に開かれた発表会の内容から紐解きます。


会員数は3倍、高額ランクの比率は激増

まず注目すべきは、カード会員数の伸びです。ラグジュアリーカードが日本に参入したのは2016年11月。そこから会員数は右肩上がりで増え続け、3年間で約3倍になりました。

入会比率にも変化がありました。カードには年会費5万円(税別、以下同)のチタン、10万円のブラック、20万円のゴールドの3種類がありますが、2017年と2019年を比べるとチタン63%→40%、ゴールド・ブラック37%→60%、と上位会員の費率がかなりアップしました。

ここまでの成果をあげられた理由について、ラグジュアリーカードの林ハミルトン代表取締役社長は次の5つの戦略を挙げました。

・ミレニアル世代の取り込み
・個人事業主・中小企業経営者への舵きり
・高いロイヤリティ
・動きの速いチーム
・飽きさせない新規優待の数々

中でも躍進の原動力となったのが、ミレニアル世代の取り込み戦略です。

ミレニアル世代に“刺さる”アプローチ

一般的にステータスカードの保有層は40~50代がメインとされていますが、ラグジュアリーカードではミレニアル世代(1980年頃から2000年代始めに生まれた世代)の会員が入会者数の44%を占めます。林社長は「他社が攻め切れていない“ブルーオーシャン”な層を狙い、獲得できた」と自負します。

発表する林社長

実現を支えたのが、ミレニアル世代に“刺さる”さまざまなアプローチです。

同社は「デジタルネイティブ」「『モノ』より『コト』」「新しいライフスタイル・働き方」といったこの世代の特徴を考慮し、オンラインでの会員獲得に注力。優待のチェックから予約までできる会員専用アプリの提供や、ホンモノを追求した各種イベントや旅行など、他のカードにはないサービスを次々と展開し、ミレニアル世代の心を掴みました。

そのほかにも利用者の8割以上がリピートする24時間365日対応のコンシェルジュ、ダイニングイベント「ラグジュアリーソーシャルアワー」など、会員からの人気が高い優待を生み出すことで、小規模企業経営者などの取り込みにもつなげました。

女性会員の獲得が今後の成長の鍵

これまで順調に会員数を伸ばしてきたラグジュアリーカードが次に狙うのが、女性の新富裕層です。

既存の女性会員の平均年収は1,000万円で、日本の女性の平均である293万円の3倍以上です。ただローンチ以来、男性の富裕層をターゲットとしてきた結果、女性会員の割合は1割程度にとどまってしまっています。ですが女性就労者数が増えている社会的背景や、ソーシャルアワー参加者の4割が女性のケースもあるなどの事情をふまえ、「まだ伸び代がある」(林社長)と判断。注力事業に位置付けました。

そのほかの今後の事業としては、新しいカードの開発も進めています。現在は年会費5〜20万の設定ですが、5万円以下のエントリーレベル、そして20万円以上のVVIP向けカードを検討しているのだとか。もちろん既存のカードと同じ、金属製です。

銀座の会員制バーラウンジを新たな優待に

今回の発表会では、銀座にある会員制のバーラウンジ「VILLA FOCH GINZA」(ヴィラフォッシュギンザ)をカードラウンジとして活用することも発表されました。

カードラウンジの個室

本来は完全会員制のバーラウンジですが、ラグジュアリーカード会員は入会金や月会費が免除。チタンカード会員は都度利用料として1,500円かかりますが、ゴールドとブラックカード会員はそれも免除。またカード会員限定サービスである「Luxury Lounge Hour」を利用すれば、1人2,500円でフィンガーフード3種類とドリンク2杯が楽しめます。

提供されるフィンガーフード一例

以前から「ゆっくり仕事ができて、打ち合わせもできる場所がほしい」という会員の声は多く、新たな優待を模索していたそう。VILLA FOCH GINZAは銀座4丁目交差点から徒歩30秒と立地が抜群で、カード会員と顧客層の重なりも大きいため、提携に踏み切ったといいます。今後は東京以外でも同じようなカードラウンジの設置が検討されています。

林社長は「ラグジュアリーカードは単なる決済手段ではなく、人生を豊かにするライフスタイルブランドだ」とそのコンセプトに胸を張ります。サービスローンチから3年間の取り組みは、多くの支持を集めました。ですが大事なのはこれからの3年間です。今後どのように進化していくのか、また日本で定着していくのか、注視していく必要がありそうです。

© 株式会社マネーフォワード