社説 [農水相サンゴ移植勧告] 自治への不当な介入だ

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 名護市辺野古への新基地建設を安倍政権挙げて強行する姿勢があらためて示された。

 江藤拓農林水産相は、県が保留している防衛省沖縄防衛局のサンゴ移植の申請を許可するよう玉城デニー知事に勧告した。これに対して、県は「結論ありきで知事権限へ不当に関与している疑念がある」という考えを示し、玉城知事は10日、勧告に応じないと回答した。

 県は埋め立て承認の撤回は有効との立場から、司法の最終判断が出るまでサンゴ移植のための特別採捕など防衛局からの申請は判断を下さない方針を決めている。勧告に応じないのは妥当な判断だ。

 防衛局は大浦湾側の工事を進めるため、昨年4月に3万8760群体、同7月に830群体の特別採捕許可を申請した。

 勧告について、農水省は「申請の標準処理期間(45日間)を大幅に超過しており、県が判断しないのは合理的な理由がないため」と説明している。

 地方自治法は地方自治体の事務に関し、自治体の自主性や自立性に配慮しつつ、必要最小限度で国が関与できると規定。245条の4第1項で閣僚による技術的な助言や勧告を認めている。

 法的根拠がありながらも、国と係争中の問題に関連する事務で自治体の判断を飛び越えて「許可するよう」勧告することは、関与の必要最小限度の原則、自治体の自主性や自立性への配慮など地方自治法の原則から逸脱している。農水相の勧告は地方自治に対する不当な介入といわざるを得ない。

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 地方自治法に基づく勧告に法的な拘束力はない。農水相は次の手続きとして是正の指示ができる。是正指示に従わない場合は訴訟に発展する可能性がある。

 武田真一郎成蹊大学法科大学院教授は、防衛局が行政不服審査法(行審法)に基づいて農水相に許可処分をしないことの違法確認を求めて審査請求を行うケースも指摘。埋め立て承認取り消し(撤回)を取り消した前例を挙げ、「(同じ)手法を取ると思われる」としている。

 承認撤回を取り消した国交相の裁決を巡る「国の関与取り消し訴訟」で、県は国の機関である防衛局が一般私人の権利救済を目的とする行審法を使って国交相に審査を申し立てたのは違法などと主張したが、福岡高裁那覇支部は訴えを退けた。県は不服として最高裁に上告している。

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 たとえ防衛局が採捕許可を得たとしても、移植には多くの時間を要す。防衛局は大浦湾を埋め立てる前にサンゴ7万4千群体を移植する計画で、1日100群体を移植しても2年以上かかる。

 大浦湾側に広がる「マヨネーズ並み」といわれる軟弱地盤が水面下90メートルにもあり、改良工事は世界的にも例がない難工事が予想されている。玉城知事は設計変更を認めない方針だ。

 強引な法解釈の変更を重ねて新基地建設を強行しても、普天間飛行場の危険性除去という政府の論理が破綻しているのは明らかだ。