2016年以来のスウェーデン制覇を目指すトヨタのオジエ「我々の戦闘力は高いはず」/2020WRC第2戦スウェーデン 事前コメント

 2月13~16日に行われる2020年のWRC世界ラリー選手権第2戦スウェーデンに向けて、参戦するドライバーたちからコメントが発表されている。

 1月23~26日の第1戦モンテカルロで開幕した2020年のWRC。シリーズ第2戦は北欧のスウェーデンと隣国ノルウェーを舞台に行われるラリー・スウェーデンだ。

 このラリー・スウェーデンは、降り積もった雪上が舞台となるシリーズ唯一のフルスノーイベントという特色を持つ1戦。大会の歴史は古く初開催は1950年、当時は夏季の開催だった。現在の冬季開催となったのは1965年が最初だ。

 イベントでは、専用のスタッドタイヤ(スパイクタイヤ)が使われ、このタイヤが強力なグリップを生むこと、比較的緩やかなコーナーのスペシャルステージ(SS)が多いことなどから、雪上戦にも関わらず例年シリーズトップレベルのハイスピードバトルが繰り広げられる。

 ただし、2020年大会については暖冬により雪不足となっているためスケジュールに変更が加えられており、開催日程自体は変わらないものの、当初の予定より8つ少ない11SSで争われることとなった。

 大会の拠点となるサービスパークはスウェーデン・トルシュビーに設営される。競技初日の13日(木)は現地9時1分(日本時間17時1分)に開幕前最後の走行チャンスとなるシェイクダウンが全長7.21kmのステージで行われた後、20時8分(日本時間14日4時8分)にスウェーデン・カールスタッドでSS1が行われて開幕する。

 このSS1はカールスタッドにある競馬場が舞台で、2台のマシンが同時に走行するスーパースペシャルステージ(SSS/スーパーSS)として実施される。

 競技2日目の14日(金)はノルウェーの森林地帯で2SS、スウェーデンで2SSの計4SSが行われる。このうちスウェーデン国内で行われる全長18.94kmのSS4“ニッケルヴァトネット”は2020年が初開催のステージだ。

 競技3日目の15日(土)は当初、スウェーデン国内でのSSが多く予定されていたがスケジュール見直しで開催中止。競技2日目と同じ4SSを再走する形で争われる。

 競技最終日の16日(日)はトルシュビーの北側エリアを舞台に人気ステージ“リケナス”を2度走行する構成だ。最終ステージとなる“リケナス2”はステージ上位5名にボーナスのランキングポイントが与えられるパワーステージとして現地12時18分(日本時間20時18分)にスタートする。

 全11SSの合計距離は171.64km、リエゾン(移動区間)を含めた総走行距離は815.47kmだ。

 シリーズ最上位クラスを戦う3チームのうち、3名のワークスドライバーを送り込むのはヒュンダイとTOYOTA GAZOO RacingWRT。Mスポーツ・フォードはエサペッカ・ラッピとテーム・スニネンのふたりがフォード・フィエスタWRCを操る。

 第1戦モンテカルロを制したヒュンダイ陣営では、勝ち星をもたらしたティエリー・ヌービル、第1戦では序盤で高速クラッシュしたオット・タナク、そしてこれが2020年初戦となるクレイグ・ブリーンの3名がヒュンダイi20クーペWRCを駆る。

 トヨタ陣営のワークス布陣はセバスチャン・オジエ、エルフィン・エバンス、カッレ・ロバンペラの3名で変更なし。さらにワークス外として勝田貴元、ヤリ-マティ・ラトバラも参戦するため、この週末は計5台のトヨタ・ヤリスWRCが走行することになる。

■ヒュンダイ・シェル・モビスWRT

●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)

2020年第1戦モンテカルロを制したティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)

「理想的なラリー・スウェーデンのコンディションとは多くの雪が降り、しっかりとした雪だまりがあって、路面は硬く凍っているという状況だ」

「完璧なコンディションが整っていれば、強い自信を持って、全開でプッシュしマシンのパフォーマンスを最大限引き出すことができる。路面がしっかり凍結していると、スタッドが確実に地面を掴んでグリップを生むから全開で走ることができる」

「ただ例年より雪が少ない状況になれば、ステージを走るのがいっそう難しくなるのは明らかだ。(スタッドがあることで)タイヤは薄く、高さも出てしまうから、地面が凍結していないグラベル(未舗装)ステージではうまく作動してくれない。とてもトリッキーな走りを強いられるだろうね」

「雪だまりがなければ走行スピードはどんどん上がっていくけれど、大会は少しつまらないものになってしまうだろう。だから、少しでも多く雪があることを願うよ」

●オット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)

2019年のワールドチャンピオンでラリー・スウェーデンも制しているオット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)

「モンテ(第1戦モンテカルロ)以来、フィーリングはよくなっている。いい教訓を得たし、新しいセクションを走るたびに、これまで以上の集中力を発揮する必要があることも分かっている」

「スウェーデンでの走行はいつも特別なものだ。特に地面がしっかり凍っているようなコンディションではね。スタッドタイヤが信じられないほどのグリップ力を生み出してくれ、素晴らしいフィーリングを味わえる」

「僕たちにとっては少し立ち戻り、段階的に走りを改善していくことが重要になるだろう。ヒュンダイのマシンでルーズな路面を走るのは初めての経験だけれど、いい結果が出せることを願っているよ」

●クレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)

「ふたたびヒュンダイi20クーペWRCのハンドルを握る機会を得ることができて、とても恐縮している。(前回i20クーペWRCをドライブした2019年の)ラリーGBから、かなり時間が経っているから、興奮を覚えるのと同時に不安も感じているんだ」

「初めてi20クーペWRCをドライブした瞬間から、強い自信を得られた。いつもどおりのスタイルで走ることができたからね」

「ラリー・スウェーデンは楽しめるイベントだよ。数年前、このラリー・スウェーデンでWRCでのベストリザルトを獲得しているんだ。コンディションが僕たちに味方してくれること、そして大会開催エリアに寒気が入り込み、路面がラリーに“最適な”状態になることを願っている」

「とにかく、もう一度WRカーをドライブできる幸せな環境に戻ることができたんだ。素晴らしい週末になるはずだよ」

■TOYOTA GAZOO Racing WRT

●セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)

「スウェーデンはとても好きなラリーだ。年間カレンダーのなかで唯一完全に雪上で行われる魅力的なイベントだし、雪の上での運転は自分にとって特別なものだ」

「過去に何度かいい結果を残してきたから、もちろん今年もいい走りをしたいと思っているが、ここ数年はやや苦戦している。その原因のひとつとして、出走順の影響があると思う」

「選手権リーダーとして、トップで出走するのはとても大変だったんだ。しかし、今年は少し状況が変わるから、どうなるのか様子をみたいと思う」

「ラリー・モンテカルロは、チーム全員にとって非常にポジティブなスタートになったが、きっとスウェーデンでも我々の戦闘力は高いはずだから、いい結果が得られることを期待しているよ」

●エルフィン・エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)

「ラリー・スウェーデンをとても楽しみにしているよ。雪上テストでのクルマのフィーリングは素晴らしかったから、今回もいいイベントになることを期待している」

「初めてヤリスWRCで臨んだラリー・モンテカルロは、さらにいい結果を得られたかもしれないが、全体的にはポジティブなスタートになった。コンディションにもよるが、スウェーデンでは出走順が大きな影響を及ぼす可能性がある」

「もし、路面に滑りやすい雪が大量に積もっていたとしたら、出走順が後方の選手にとって大きなアドバンテージになるだろう。それでも、自分としては他のラリーと同じように、最初のステージから全力で挑むのみだ」

●カッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)

「スノーラリーはとても楽しいから、僕たちにとってラリー・スウェーデンはきっといいイベントになるだろうね。ラリー・モンテカルロよりは難しくないと思うけれど、その分だけ限界までプッシュする必要がある」

「ここまでのところヤリスWRCの運転をとても楽しんでいるし、特に雪の上では本当に素晴らしいクルマだと感じている。1月にヤリスWRCで出場したスノーイベントのアークティック・ラリーは、スウェーデンに向けていい準備になった」

「ただし、今年のスウェーデンは今のところあまり雪が多くなく難しいコンディションになるかもしれないから、その経験が助けになることを期待しているよ」

■Mスポーツ・フォードWRT

●エサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)

2020年はMスポーツ・フォードに所属しているエサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)

「ラリー・スウェーデンでは何度かいい結果を出してきている。特に昨年は新しいマシンに乗り換えた2戦目として挑み、総合2位フィニッシュを飾った。2020年にこのリザルトを再現できるか、楽しみだよ!」

「もちろん、ライバルとの競争は激しさを増しているし、コンディションがどうなるか予測がつかないけれど、僕たちはベストを尽くす」

「ラリー・スウェーデンのステージは高速なものが多く、楽しみながら走ることができる。ただ、今年は路面がしっかりと凍らず、薄い氷の層が何層かできているだけになりそうだから、1日中タイヤのスパイクを守るためにタイヤマネジメントがかなり重要になる」

「4番手という出走順はまずまずだ。とにかく、どういった展開になるか楽しみだよ」」

●テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)

「昨年、僕たちは柔らかい雪とわだちのあるコンディションで最適なセットアップを見つけることができた。それがとてもうまくいったんだ。週末をとおして速さを発揮でき、競技初日は総合首位で終えられたんだ」

「2020年大会での目標はミスを犯すことなく、昨年と同じように一貫性のあるスピードを発揮することだよ」

「それには天候が大きく影響してくる。大会主催者側がラリー開催を決定してくれたことは素晴らしいことだ。あとは週末の大会が、どういったコンディション下で行われるかが大事だね」

「雪が降ることを願っているけれど、どんな天候になってもベストを尽くし、いいバトルができることを期待している」

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