まさかの実話「マジンガーZの格納庫を作るぞ!」ガチの設計図と見積書『前田建設ファンタジー営業部』

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

そこまで見せていいんですか? “積算”は秘中の秘

アニメやゲームなど空想世界の建物は、現実世界の技術で建設することができるのだろうか? 誰もが一度は空想しながらも本気では考えなかった疑問に大真面目に取り組み、実際に建設に必要な工期から工事費までをガチで見積もってしまった愛すべきおバカなサラリーマンたちの姿を描いた映画『前田建設ファンタジー営業部』が2020年1月31日(金)から公開中だ。

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

物語は、実在する企業・前田建設工業株式会社のWEB連載企画がベースになっている。SF/ファンタジー世界の建物を本物のゼネコンが実際に見積もるなんて、なんともオタク心をくすぐる企画だ。しかし、劇中でも語られるとおり、仕様書や設計図から必要な材料や数量を算出して工費を出したり、着手から竣工までの工期を算出する“積算”は、自社の手の内をさらす行為と言っても過言ではない。つまり関係者が見れば、その見積もりを立てた企業の実力が推し量れてしまう。例えるならば、一流料理店が秘伝のレシピを公開するようなものだ。それをやり切ったファンタジー営業部メンバーの想いには、素直に拍手を送りたい。

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

高度経済成長を支えたのは日本の土木・建設業界

戦後復興期における関西地方の深刻な電力不足を解消するために作られた水力発電用ダム、通称“黒四ダム”建設の苦闘を描いた『黒部の太陽』(1968年)、本州と北海道を結ぶための青函トンネル開通工事を描いた『海峡』(1982年)などの作品に代表されるように、60年代から90年代は大規模なインフラ設備を建設する第二次産業が主役になれる時代だった。巨大建造物を作り上げる男たちの熱い戦いを、国民が手に汗握って応援したのだ。

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

ところが、バブル崩壊後は需要の低迷や公共事業の縮小、加えて汚職事件などが明るみに出たことで、ゼネコンに対する風当たりは一気に強くなった。その言葉自体にネガティブさがつきまとい、連日放送される事件報道もあって“ゼネコン=悪の組織”というイメージが刷り込まれてしまった世代もいるかもしれない。

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

しかし、60年代以降に建設された質の高いインフラがあったからこそ、高度経済成長が成り立っていたとも言える。つまり、ゼネコンが経済大国・日本の土台を作り上げ、土木・建設関係者の血と汗と涙の上に現在があるのだ。そして、そこで培われた技術は現在、発展途上国のインフラ開発で大いに役立っている。

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

技術者の心意気に胸がアツくなる

物語は、まさに建設業界が先行きに不安を抱えていた2003年が舞台。アニメ「マジンガーZ」に登場する、汚水処理場に偽装した格納庫を実際に建設したらどうなるのか? というシミュレーションに挑む様子が描かれる。現実逃避とも思えるような企画だが、いい歳をした大人たちが次第にマジになっていく様子がコミカルに描かれ、培ったノウハウを駆使して不可能と思われたギミックを実現させる技術者のプライドに胸がアツくなる。

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

企画の発起人でもある巻き込み型の上司を演じる小木博明(おぎやはぎ)をはじめ、クセのある登場人物たちが終始ハイテンションなので最初は驚くかもしれないが、気づけば観客もその状況に巻き込まれているので、難しく考えずに身をゆだね、日本の土木・建設関係者の心意気を感じて欲しい。

『前田建設ファンタジー営業部』©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

ちなみに、前田建設ファンタジー営業部では「マジンガーZ」以外にも「銀河鉄道999」の高架橋や「機動戦士ガンダム」の地球連邦軍基地ジャブローも見積もっているので、気になった人は公式ホームページも要チェックだ。

『前田建設ファンタジー営業部』は2020年1月31日(金)から公開中

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