MASH「奇跡の夜」で40代の上京宣言!「気が付けばこの街に守られた環境の中で音楽を続けてきました」

2020年の年が明けて間もなくであった。MASHからの突然のライブ活動休止宣言。『2020年2月9日にダイアモンドホールで開催の「奇跡の夜」のライブをもってライブ活動休止しようと思います』それがSNS等で発表されると瞬く間にファンの間には悲しみと衝撃が走った。その「奇跡の夜」がついに昨日MASHの地元名古屋で開催された。まず最初に言わせてもらうと、完全に「奇跡の夜」であった。来場者や参加したミュージシャンや関係者の声を聴いても本当に最高の夜=LIVEであったことがわかる彼のキャリアを網羅したようなまさに完全体のMASHがいた。

この日を楽しみに、そして複雑な感情で訪れたファンで満員の会場。もはやおなじみとなったOASISの「Don’t Look Back In Anger」のSE終わりで登場したMASHがまず奏でたのは「たった16小節の夢」。ひとりでの弾き語りでこの夜はスタートし、しばらくこのままかと思いきや2曲目からドラム、キーボード、ギター、そしてバイオリンという4人編成のバンドが登場しての「僕がいた」。そこからは息のあった5人での久しぶりのバンドライブで4曲をほぼMCなしで駆け抜ける。「列車」のアウトロでバンドメンバーが一人ずつステージからいなくなると、、、DJが登場し、MASHのシャウトで「みなぎるパワー」へ突入。さらに「21世紀少年」「光り輝く明日へ」「風のメロディー」と初期の音源をone DJ,one Micのタイトなスタイルで会場を一気にヒートアップさせ、みんなも笑顔でとても会場が良き雰囲気になっていく、そんな中ステージが暗転。

街の雑踏のSEが流れ出すとMASHは再びアコースティックギターをおもむろに抱え、溢れる汗をそのままにラップをしだす。するとMASHの盟友「ヤス1番」が登場。ともに「イエローヌバック」がドロップするとMASHが名古屋のストリートシーンからキャリアを積んできたのを思いだした。その後バンドメンバーが再登場しMASHの曲の中でも異質であるエレキギターのリフのワンループの中でラップする「ダンスダンスダンス」を披露。そして、そのあと会場中に雨音が聴こえたかと思うと静かにMASHの弾くアルペジオが響きだしノスタルジーな名曲「七月六日」が演奏され、そのまま晴れ渡る空に平和を願うように「青空」を熱演していく。本編最後には、MASH一人での弾き語り「星が綺麗な夜に」で幕を閉じた。が、当然のアンコール。「カレーライス」「いちばん星」「太陽とカーテン」などファンにはおなじみの曲を立て続けに歌い、ここでMASHからライブ活動休止の理由がゆっくりと語りだされた。

「名古屋在住にこだわり歌手デビューして15年。気が付けばある意味この街に守られた環境の中で音楽を続けてきました。一旦この名古屋という街を離れ、違った環境に身を置き生活しその場所から新しい歌を書いてみたいと思いました。今僕は40歳。僕の人生は挑戦です。この先10年また歌い続けられるような一曲ができるまで制作に専念し、その一曲が出来たときまた次のステージに戻って来ようと決めました。僕、MASH4月1日から上京します。」

このまさかの40代上京宣言に会場は静かな感動に包まれた。そして「まるでこの日歌うために作ったのではとも思える歌です。はじまりはいつも今。」そうMASHがMCをし、名曲「稲穂」を歌いだすと観客もその気持ちに呼応するようにMASHの声に合わせ歌を歌った。

そして鳴りやまない拍手に応えて「音楽をとめないで」をバンドとDJとMASHと全員で奏でながら、ステージから降りてファンに感謝を伝えながら歌い、ハイタッチを交わしている姿が本当に美しかった。「ありがとう」とMASHもお客様に言っている以上に、お客様に「ありがとう」と言われている光景がこのアーティストMASHの人間味あふれる男の生き様を見た瞬間であった。

そしてこのライブをもってライブ活動休止をするのにも関わらず未来しか見えない最高の「奇跡の夜」がそこにはあった。

撮影: 山口宗紀

© 有限会社ルーフトップ