カネミ油症次世代被害調査 支援センター、五島で聞き取り

油症2世の未認定女性(左手前)に症状などを聞き取るYSCの大久保さん(中央)と山岡さん=五島市内(写真は一部加工)

 カネミ油症患者の子(2世)や孫(3世)ら次世代被害者の健康実態を把握するため、カネミ油症被害者支援センター(YSC、東京)は12日、長崎県五島市内で聞き取り調査を始めた。15日まで本人や親ら十数人に、出生からの症状などを主に対面で聴取。調査は来月以降も全国各地で継続する。共同代表の大久保貞利さん(70)は「調査で次世代が油症の影響を受けている根拠を示し、国に救済策を求めたい」と話した。
 1968年に発覚した油症事件。次世代被害者は、ダイオキシン類など有害物質汚染の食用油を直接は食べていないが、母体などから影響を受けた可能性があり、多様な症状に苦しむ人が少なくない。認定制度では親世代と同一の診断基準を適用し、大半が認定されず医療費などは自己負担のままだ。今回の調査で集めたデータは一般的な人の健康状態と比較し、科学的に差異を明らかにし認定制度改正などにつなげたい考え。
 来島したYSCの大久保さん、山岡央さん(47)は12日、3家族の状況を聞き取った。2世で40代の未認定女性は、幼い頃から湿疹や原因不明の頭痛、不眠、傷が治りにくいなどの症状が続き、「気分が良好な日はない。将来が不安」と話した。この女性が産んだ子どもも出生時や幼少期に体調の異変があったが、これまでは油症の影響を深く考えたことがなく、油症検診も受けていないという。
 次世代被害者は偏見などを恐れ自ら症状を語る人が少ないため、調査は親に子の状況を聞き取る形でも実施。70代の夫婦は69年以降に生まれた複数の子に目まいや内臓疾患、吹き出物、不眠など重篤な症状が現れたと証言。大人になった今も生活や仕事に支障があるが未認定という。母親は「自己負担の病院代が大変。私たちがいなくなった後、子どもたちはどうなるのか」と吐露した。

© 株式会社長崎新聞社