日ハム宇佐見が狙う正捕手の座 大田から打撃の神髄、バットは西武森タイプ「変わるため」

日本ハム【写真:石川加奈子】

キャンプでは2日連続で居残りロングティーを行う「やらないと損なので」

 日本ハムの宇佐見真吾捕手が12日、沖縄・名護で2日連続の居残りロングティーを敢行した。

 正捕手獲りへ、巨人から移籍2年目の26歳がバットを振りまくっている。「去年、バッティングを期待されてトレードで獲ってもらったのに、2割に届かなかった(打率.198)。そこは課題。存分にできる環境があるので、やらないと損なのでやってます」と疲れも見せず、さわやかに笑った。

 球場にナイター照明を点灯してもらい、たった一人、右翼に向けて次々ときれいな打球を上げた。狙いは、打球を飛ばす際の体の使い方とスイング軌道の確認。時折柵越えもあるが、柵越えは狙っていないという。「低いライナーで、きれいな回転で真っすぐに飛ばすという意識でやっています」と話す。

 先にロングティーを取り入れた大田泰示外野手からポイントを教わり、今キャンプから積極的に取り組んでいる。「練習して体に覚え込ませて、その再現性を高めるという作業」と黙々と繰り返す。11日には、矢野謙次外野守備コーチ兼打撃コーチ補佐と撮影した動画を何度も確認した。「キャッチャーとしてこういうスイングはどこが弱点だと思う? じゃあ、どう直す? という話をしていました」と宇佐見。捕手目線で自分のスイングを分析して、完成度を高めている。

 新バットも馴染んできた。昨秋のフェニックス・リーグから西武・森のバットを使っている。本人と直接交流はないが「いいバッターが使っているバットなので」とメーカーの担当者に頼んで在庫を1本もらった。それまで使っていたものより1センチ短い85センチの新バットは「振っている感じも、打球も、今までにない感じがした。変わるためにいいかなと思いました」と捕手として史上4人目の首位打者に輝いた森モデルの導入を決めた。

古巣・巨人の捕手たちからも助言「“キャッチャーたるもの鉄仮面であれ”と教えられました」

 守りもレベルアップを図っている。「盗塁阻止は大事だし、キャッチャーとしてはワンバウンドをしっかり止めることがピッチャーの信頼を得る要素。去年後半から有原さんと組ませてもらって、フォークで三振を取る場面が多いので、キャンプ中そこは気にしながら大事にしていきたいです」と意識は高い。

 チーム内では正捕手争いが過熱している。昨季の出場試合数は、清水が98試合、石川亮が46試合、宇佐見が45試合、鶴岡バッテリーコーチ兼任捕手が35試合と続く。

 激しい競争の真っ只中で、宇佐見は自身の強みについて「良くも悪くも一喜一憂せず、同じ心理でやれるのは強み」と語る。これは巨人時代に身につけた術だという。「ジャイアンツに入った時に、相川さん、実松さん、加藤さんとキャッチャーがいて、一緒にやる中で“キャッチャーたるもの鉄仮面であれ”と教えられました」と振り返る。

 1つしかないポジションを争う過酷な状況で、弱みを見せてしまっては生き残れない。「“何を考えているか分からないようにしろ”と教わりました。悔しい場面で悔しさを見せなかったら、堂々として見えたりしますよね。やっているうちに、自然とそうなりました」と宇佐見は言う。一喜一憂せず、やるべきことに集中して、虎視眈々と正捕手の座を狙う。

【取材後記】“鉄仮面”という言葉が出てきたのは意外だった。ふだんは甘いものが大好きで、気さくな人柄。今回の取材中もナイター照明が消えて真っ暗になると、すぐさま自身のスマホを取り出してライトを点け、記者のノートを照らしてくれた。そんな“いい人”が“鉄仮面”になるとは想像できない。「そうですか? オンとオフは違いますよ。グラウンドでは別です」と返ってきた言葉を聞いていっそう頼もしく感じた。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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