ギャンブルは「嗜む」もの

 現在28歳という男性は、21歳の時に初めて立ち寄ったパチスロ店で少額の元手で大勝ちした。その際に感じたスリルや安堵(あんど)感が胸に刻まれたのか。暇さえあればスロット台の前に座るようになった▲7日付の本紙で、ギャンブル依存症の男性が紹介されていた。男性はパチスロ資金のために借金を重ねるようになり、果ては万引を繰り返して23歳の時に窃盗容疑で逮捕されたという▲ギャンブル依存症は、特定の物や習慣に執着する「嗜癖(しへき)」の一種とされ、2018年施行の対策基本法は「ギャンブル等にのめり込むことにより日常生活、社会生活に支障が生じている状態」と定義している▲国の推計では、過去にギャンブル依存症が疑われる人は全国で320万人に上る。だが、これまで相談や治療体制は不十分だった▲県が先月、依存症の人の回復支援などに取り組む対策推進計画を策定した。ただ、この対策も、国がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を日本に導入しようとする中で出てきたことを考えると複雑な思いは拭えない▲嗜癖の「嗜(たしな)む」という言葉には「好んで親しむ」という意味のほかに、「慎む。気を付ける。用心する」との意味もある。ギャンブルによって人生を狂わされる人がこれ以上出ないよう、依存症の恐ろしさを啓発していく必要がある。(久)

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