政治とカネの流れが透きとおって見える!?アノ報告書について解説します

現在、いわゆる「桜を見る会」問題において、政治資金収支報告書の記載が話題となっています。今回はこの政治資金収支報告書とはいったいどのような目的で存在し、どのようなもので、どこで見ることができるのかご紹介したいと思います。

そしてその報告書の中で、「ん?」と思わず目を奪われてしまう面白い内容の記載もあわせてご紹介します。

政治資金規正法ってどんな法律?

政治と金の流れは、しばしば問題になります。一方で政治活動を行うにあたっては、必ず金銭が必要です。そのため、国民がこれらの政治活動をしっかりと監視できるように政治資金規正法が存在します。

この法律は、政治団体の届出制度や政治資金に関して規定をしており、政治資金に関しては「政治資金の収支の公開」「政治資金の授受の規制」の2つに大きく分けられています。具体的には、政治資金収支報告書の提出を義務付けて国民が広く見られる状態にすることや、寄付できる金額に一定の制限を設けたり、国から補助金をもらっている法人の寄付を禁止したりといった規定があります。

そして、この法律がこの国の政治にとって、重要なものであることを示す1つの特徴があります。

それは選挙への投票や立候補が一時停止される「公民権停止」の条件です。例えば、通常の犯罪をした場合は、実刑判決を受けている期間のみが公民権停止となります。しかし、政治資金規正法に違反した場合は、通常とは違う取り扱いがされます。

具体的には罰金刑を受けた場合でも、その刑が確定した時から5年間は公民権が停止されます。また、実刑判決を受けてその刑が終了しても、さらに5年間は公民権が停止されます。このほか、執行猶予があっても、その執行猶予期間は公民権が停止されます(ただし、いずれも情状によって刑執行後5年間あるいは執行猶予期間中の公民権停止期間が短縮されることはあります)。このような条件が課されているのは、政治資金規正法以外では選挙違反で刑を受けた場合のみであり、政治資金規正法が民主政治の運用のために極めて重要な法であることを示しています。

そういえば、どこで見ることができる?

政治資金規正法では政治活動を行うにあたり、政治団体の設立を届け出る必要があることが規定されています。そして、この政治団体には1月から12月までの収支や資産、借金の状況を記載した政治資金収支報告書を提出する義務を課しています。

それでは、政治資金収支報告書にはどのようなことを記載しなくてはいけないのでしょうか。例えば収入に関しては「個人が負担する党費又は会費」、「寄附」、「機関紙誌の発行その他の事業による収入」、「借入金」、「本部又は支部から供与された交付金に係る収入」、「その他の収入」の6項目に分けて1円単位で記載する必要があります。

また、この項目の中でも、一定金額を超えた収入はより詳しく情報を記載する必要があります。例えば同一の人物から1年間の合計で寄付の場合は5万円、政治資金パーティーの場合は20万円を超えた場合は氏名、住所、職業などを記載する必要があります。また、支出に関しても同様の細かい記載が義務付けられています。

ところでこの政治資金収支報告書は、どこで見ることができるのでしょうか。

以前は総務省や選挙管理委員会などに行かないと見ることができませんでしたが、現在はインターネット上で公開されており、自宅でこれらの報告書を見ることができます。例えば、東京都のみで活動している政治団体は東京都選挙管理委員会のページで見ることができますし、法律上の政党や2つ以上の都道府県にまたがって活動している政治団体は総務省のページで見ることができます

「なにコレ?!」と思わず目が釘付けのおもしろ項目

政治資金収支報告書はどこからもらったか、あるいはどこに支払ったかということを細かく記載する必要があります。そのため、ある政治団体が他の政治団体に所属している政治家の後援会費用を払っていたことが記載されている場合などがあり、「ここの政治団体とこの政治家は、所属している団体は異なるが、つながっている」ということが分かることもあります。

また、その政治団体独特の面白い項目が見られることもあります。例えば、自民党本部の2018年の政治資金収支報告書の「機関誌等の発行その他事業による収入」を見てみると、一般的な機関誌収入のほか、「自民党手帳」で3,177,632円、「色紙」で2,914,700円、「クリアファイル」で163,170円、「シンボルマーク・バッチ」で560,456円など、ほかの政治団体に比べて、グッズ関係の収入についてかなり細かく書かれています。

(自民党の政治資金収支報告書2018より)

また、選挙ドットコムのコラムでも「【孤独のグルメ?】共産党食堂のランチがガチで美味い&美味しさの秘密を探ってきた! #政党グルメ」で紹介されたように共産党の本部には食堂がありますが、共産党中央委員会の2018年の政治資金収支報告書の収入には「食堂利用料」という記載があり、そこにはなんと43,967,905円という金額が記載されています。

このほか、政治団体特有のものの極めつけとしては、宗教団体の幸福の科学を支持母体とし、国政に立候補者を擁立している幸福実現党が挙げられます。2018年の政治資金収支報告書の「機関誌等の発行その他事業による収入」の項目には「法輪輾転・祭政一致研修」というまさにこの団体でしか見られないような項目があり、555,628,750円というかなり高額の収入が記載されています。

(幸福実現党の政治資金収支報告書2018より)

このように政治資金収支報告書には各政治団体の様々な一面を見ることさえできます。この政治資金収支報告書をはじめとした政治資金規正法が適切に運用され、政治と金の流れが透明化されるかは、国民の監視や批判が極めて重要なものになっています。

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