突然の戦力外通告も「チャンス」 21歳で現役引退した元ロッテ島孝明の決断

21歳の若さで現役引退を決意した元ロッテ・島孝明さん【写真:編集部】

インタビュー前編 今は大学入学を目指して受験勉強中、国際関係の仕事に就くのが夢

 3月の開幕に向けて、各チームともキャンプ地で動き出した。昨年まではキャンプで汗を流していた選手の中には、野球と決別し、新たな人生へと進みだした男もいる。昨年限り、21歳の若さで現役を引退した元ロッテの島孝明投手がFull-Countのインタビューに応じた。現在は大学進学を目指し、受験勉強中だ。

 島は150キロの直球を武器に、千葉・東海大市原望洋から2016年ドラフト会議でロッテに3位指名を受け、入団。高校時代は侍ジャパンにも選ばれた逸材で将来を期待された。しかし、けがなどに苦しみ、1軍登板はなし。昨シーズン後、育成契約を打診されたが、現役引退を決意した。

――現役生活お疲れ様でした。引退後から今はどのように過ごしているのですか?

「目指している大学進学に向けて、ゼロから情報を集めなくてはいけないので、思ったより忙しいです。(2019年12月15日に)寮を出たんですけど、その前日に初めての大学受験でした。終わって、その夜中にロッカーを片付けて、浸る暇もなく…何も考えられなかったですね。ただ、やっと一区切りついたのですっきりしたところはあります。環境の面でももう寮に居られないので、新しいスタートだなと寮を出ました」

――初めての大学受験はどうでしたか?

「昨年11月下旬に準備を初めて、願書を出すのがすごくギリギリになってしまいました。締め切りの前日に高校に調査書を取りに行って、そのまま出すプランだったんです。でも、志望理由書とか、いっぱい失敗してしまって、早く出さなきゃいけないし、あの日はパニックになっていました」

――その最中に、球団から引退発表でしたね。

「自分でもSNSで投稿しましたが、いっぱいコメントがあって、いろんな人が注目していてくれたんだなと改めて感じました。台湾で写真を撮ったファンの方がコメントをくれて、日本だけではなく台湾にもファンの方がいてくれたのが嬉しかったですね。ただ、育成契約をもらっていたのでみんな驚いてた感じでしたね。それでも、次のステージでも頑張ってというメッセージを多くもらいました」

――戦力外を言われたのはいつ頃でしたか?

「昨年10月3日か4日ぐらいでした。でも宮崎フェニックスリーグには行くことが決まっていたので、行きながら考えたり相談したりしていました」

戦力外通告で覚悟決めた、「このまま働いても自分に特にスキルがない」

――言われた時は?

「ぶっちゃけた話をすれば、ここで切り替えるチャンスでもあるなと…。次のキャリアに向けて動くならこのタイミングかなと思いました。野球から離れたいという気持ちがちょっとあったのと、球団から言われたタイミングがちょうど重なった感じですね」

――育成選手として続けようかなとは思わなかった?

「もう1年続けるというイメージが、あまりできなかったです。それより、次どうしようかという感じでした」

――応援してくれていた家族はどんな反応でしたか?

「反対じゃないですけど、家族はもう1年やってほしかったみたいです。だからこそ、引退をすることに関してしっかり話をしました。今まで僕があまり自分の現状とか、どんな思いで野球と向き合って過ごしているかを全然話してこなかったので、この機会にしっかり話せました」

――そこで大学進学を選んだのは?

「このまま働いても自分に特にスキルがあるわけではないし、何かひとつ強みを持ってから社会に出たいと思ったので。まだ21歳だし大学に行ってもその先の人生長いのでいいかなと思いました」

――大学で学びたいことは?

「語学が学びたいです。語学を身につけて、そのあとのキャリアを学びながら考えていけたらと思っています。英語やスペイン語などを学んだら通訳などの職業に携われるかなと」

―どうして語学を?

「ロッテの元外国人選手と交流している中で、話していることがすごく楽しかったし、向こう(海外)の文化にも興味を持ち始めて、語学を学びたいと思うようになりました。もっと自分が思っていることを、自分なりに伝えられることができたらいいな、と」

――その仲の良かった選手は?

「1年目は(マット)ダフィーがロッカーも隣で、一緒に食事に行ったこともあります。通訳さんが居ない中で….頭が真っ白でした」

――どうしてそうなりましたか?

「食事に行こうという話になって、通訳さんがいるから行こうと思っていたんです。でも、当日になっていないことがわかって、本当に大丈夫かなと思いながら行きました。なんとかなりましたけど、ホテルに戻ったらすごく疲れていました。頭の疲労、パンクしている感じでした」

――そこから通訳の仕事に興味を持ったのですか?

「チームの通訳さんを見ていて、やっぱり日本語だけではなくて、英語やスペイン語でいろんな国の人と交流できることが面白そうだなと思いました」

――通訳さんとして、またプロ野球に携わる思いはありますか?

「その機会があれば、すごい嬉しいです。プロ野球に携わっていきたい思いは少なからずあります。野球の経験もあるので、自分にとってプラスになるのではないかなと思っています」(小倉星羅 / Seira Ogura)

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