できると思わず笑み、プログラミング教材使ってみた 日本で販売の「SPIKE」

 組み立てブロックで知られるデンマークの玩具メーカー、レゴグループの教育事業部「レゴエデュケーション」が、プログラミング学習の教材「レゴエデュケーションSPIKE(スパイク)プライムセット」の展開を日本で始めた。

 プログラミングは、電化製品など生活のあらゆる場面で利用されているコンピューターを動かす「命令」を作成すること。日本では2020年度に小学校でプログラミング教育が導入される。筆者は19年4月にニューヨークで開かれたスパイクの製品発表会を取材した。このたび試用する機会を得たので製品レビューをお伝えしたい。(共同通信=吉無田修)

 ▽小学校高学年から高校までを想定

 レゴのプログラミング教材には、7歳以上が対象の「WeDo(ウィードゥー)2・0」や、10歳以上が対象の「マインドストームEV3」がある。私の息子はレゴが好きで、小学生の頃、EV3のロボットを組み立てることに熱中した。ただ、プログラミングはややハードルが高かった印象がある。

 スパイクもEV3と同じ10歳以上が対象だが、EV3と比べて扱いやすい。担当者に聞くと、ウィードゥーとEV3の中間レベルとのことだ。小学校高学年から中学校、高校での活用を想定している。

 「スパイクプライムセット」のパーツは全部で528。ブロックやモーター、センサーなどがあり、仕分けトレーに分類し、収納ボックスで片付けられるようになっている。パーツを紛失した場合は取り寄せができる。

 ▽作成はドラッグアンドドロップで

 使用するには、パソコンやタブレット端末が必要だ。最初に「SPIKE」のアプリを端末にダウンロードする。デジタル版の説明書の案内に沿ってロボットや装置を組み立て、プログラムを作って動かす手順となる。

 プログラミングは、文字を入力するのではなく、命令内容を示すブロックをドラッグアンドドロップ式でつなぐことで作成する。日本語にも対応している。

 中心となるパーツの「プログラム制御ハブ」は、モーターやセンサーを接続するポートや、ブロックを差し込む穴がある。5マス×5マスのLEDライトでハートなどの「絵文字」を表現したり、スピーカーで音を出したりできる。

 スパイクは、ロボットや装置のモデル制作からプログラミングまで45分間の授業で完了するプランがある。学習指導要領にも対応し、教師用に授業の組み立て方などをサポートする資料も用意している。

 ▽プログラミング、体験してみると…

 実際にロボットや装置を組み立て、プログラムを作成してみた。SPIKEのアプリは、米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」にダウンロードした。

 ロボットハンドでブロックをつかむ「ロボットリレー」は、生徒2~3人のグループで取り組む課題だ。プログラム制御ハブのボタンを押せば、ロボットハンドが開閉するようにプログラムを作る。ロボットハンドでブロックをつまんで、積み上げるゲームは意外に難しく、授業が盛り上がりそうだ。ゲームの時間(3分間)もプログラミングで設定し、終了時間がきたら、音が鳴る。

 次に取り組んだのが、天気予報データを活用する「気象キャスター」のロボット。5時間後の天気予報が「晴れ」ならメガネをかけ、「雨」なら傘を差す動作をプログラムで設定する。

 TokyoやNew Yorkなどさまざまな都市名を入力し、実際のデータと比べるといった授業ができるとしている。愛らしいデザインで、小学校5年生の娘に見せたら興味を示していた。

 ▽ロボットのダンスも操作、課題は安定性

 手足を動かす「ダンシング」は、手足部分の回転数を設定することでオリジナルダンスを作成できる。アプリの参考動画では、生徒がロボットの動きをまねしていた。ロボットをプログラミングで操作する楽しさを体験できる。

 距離センサーを使うロボットカーは、物体を一定の距離で感知して止まるようにプログラミングで設定する。障害物を認識して、ぶつからないようによける仕組みは、自動運転技術に活用されている。

 こうしたロボットの動作を命令するプログラムを作るのは難しそうだが、アプリのプログラミング画面では、基本的なプログラムがあらかじめ入力してある。「前進してキューブをつかむ」といったプログラミングの課題についても分からなければ「ヒント」を見られるようにしていて、授業をスムーズに進められるように工夫されている。

 ただ、気になったのは、アプリの安定性だ。非常に使いやすいアプリだが、画面がフリーズして操作できなくなったことが何度かあった。授業中にアプリが動かなくなったら、時間のロスになってしまう。ソフトウェアの更新で、こうした問題が改善されることを望みたい。

 ▽教育の目的はプログラミング的思考

 レゴの教育事業部トップのエスベン・スターク・ヨーゲンセン氏は昨年4月、共同通信の取材に「世の中はプログラムされた技術であふれており、プログラミングを学ぶことは意味がある」と強調。「レゴブロックはシンプルで直感的なのが特徴だ。スパイクは簡単なプログラミングから始められるが、習熟するのは大変だ」と話していた。

 文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引」によると、プログラミング教育では「プログラミング的思考」の育成に重点を置き、プログラミング言語やプログラミング技能の習得そのもの自体を狙いとしていないとしている。そして、プログラミング的思考をこう説明する。

 「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」

 「スパイクプライムセット」は4万5800円(税別)。日本では代理店を通じて販売している。

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