WRC第2戦スウェーデン:トヨタ、シェイクダウンでトップ3独占。「タイヤマネジメントが鍵握る」

 2月13日に行われた2020年WRC世界ラリー選手権第2戦スウェーデンの競技初日。この日は競技区間の走行はなく、2回のシェイクダウンが行われる変則的なスケジュールとなった。ワークスチームとして3台のトヨタ・ヤリスWRCを投じるTOYOTA GAZOO Racing WRTではシェイクダウン1本目でカッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)がトップタイムを記録、2〜3番手にもチームメイトが続いてトップ3を独占した。

 北欧スウェーデンと隣国ノルウェーを舞台に争われるラリー・スウェーデンは、WRC唯一のフルスノーイベントという特色を持つ1戦。しかし、2020年は季節外れの暖かさが続いた影響で雪不足に直面し、当初の走行スケジュールが大幅に短縮されての開催となっている。

2020年ラリー・スウェーデンの様子。比較的雪が積もっている箇所でも、うっすらと地面が見えてしまっている
2020年ラリー・スウェーデンの様子。雪と地面が混ざり合うグラベルコンディションとなっている

 競技初日の13日(木)はシェイクダウンステージを走行後にオープニングセレモニーが行われ、同日夜にSS1が行われる予定だったが、SS1の走行は取りやめに。SS1のステージもシェイクダウンの一部とし、1日に2度シェイクダウンが行われる異例のスケジュールとなった。

 1本目のシェイクダウンステージはスウェーデン・スカラに設けられた全長7.21kmのステージ。例年であれば雪に覆われているが、今年は凍結した地面がむき出しのグラベル(未舗装路)コンディションのなか走行が行われた。

 ラリー・スウェーデンでは雪上や凍結路面で性能を発揮する専用のスパイクタイヤを全チームが使用する。しかし、スパイクタイヤがグラベルでどういったパフォーマンスを発揮するかは未知数で、各クルーはこのシェイクダウンでタイヤに関するデータ収集に努めた。

 そんなスカラのシェイクダウンでは、計4回アタックしたロバンペラが3分57秒7のタイムでトップ。2番にセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)、3番手にエルフィン・エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)が続き、トヨタの3台がタイムシート上位を埋めている。

 スカラでのシェイクダウンを終えた一行は、100kmほど南下したスウェーデン・カールスタッドに移動。現地20時過ぎに同地の競馬場を舞台に2回目のシェイクダウンが行われた。

スウェーデンのフィリップ王子を乗せてシェイクダウン2本目へ向かったセバスチャン・オジエ

 ただ、このカールスタッドでのシェイクダウンステージは競馬場内特設ステージが舞台で、ラリー・スウェーデン本来のSSとはキャラクターが異なることもあり、各クルーごとにアプローチが変化。オジエはサイドシートにスウェーデンのカール・フィリップ王子を乗せて走行し、会場に集まったファンを沸かせた。

 このシェイクダウン2回目ではオジエが2番手、ロバンペラが3番手、エバンスが5番手タイムを記録している。

勝田貴元のトヨタ・ヤリスWRC

 また今大会にはTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの一環で勝田貴元もヤリスWRCで参戦しており、シェイクダウン1回目は6番手、シェイクダウン2回目は7番手タイムを刻んだ。

 トヨタの元ワークスドライバーであるヤリ-マティ・ラトバラもプライベーターとしてヤリスWRCで参戦しており、こちらはシェイクダウン1回目で9番手、シェイクダウン2回目はトップタイムを刻んでいる。

■オジエ「真冬のワンダーランドにはならなかったが、主催者は最善を尽くしてくれた」

 チームのスポーティングディレクターを務めるカイ・リンドストロームは「今回のコンディションは通常のラリー・スウェーデンとは状況が異なるが、イベントがスムーズに行われるようにと主催者はできる限りのことをしてくれた」と大会が開催されたことに感謝を述べている。

「今夜予定されていたカールスタッドでのスーパーSSを、シェイクダウンの2回目に変更したのは賢明な判断だ。観客はラリーカーの走りを楽しめたし、我々はラリー期間中に使える本数が決まっているタイヤを犠牲にする必要がなくなったからね」

「今回のラリーに関しては、タイヤのマネジメントが大きな鍵を握る。夜間に気温がマイナスに下がったため、今朝のシェイクダウンの路面は予想していたよりもいいコンディションだった。そのため、我々は各車3、4回走行することができ、長いグラベル区間を走るとタイヤがどう変化するのか、ドライバーたちは理解することができた」

「コンディションがどのように変わるのか、誰もよく分からないと思うが、いい結果を得るためにはいくつかの区間でスマートに走り、タイヤをマネージする必要があるだろう」

 オジエは「望んでいたような真冬のワンダーランドにはならなかったが、イベントを実現するために主催者は最善を尽くしてくれた。いくつか難しいセクションもあるが、この週末を楽しむことができればいい」とコメントしている。

「ステージのすべてがグラベル路面だったり、すべてがアイス路面だったりと、路面コンディションが一定ならば、簡単に適応することができるが、コーナーごとにコンディションが変わると非常に難しくなる」

「これまで、完全なグラベルステージをスタッドタイヤで走ったことはなかったから、今朝のシェイクダウンではいくつか学ぶことがあったよ」

「1本目は注意深く走り他の選手よりもタイヤをセーブすることができたけれど、大きくタイムを失ったので、週末は妥協点を見つける必要がある。この未知なる状況に、もっともうまく適応できた者がきっとラリーを制するだろうね」

 チームメイトのエバンスは「少し予想が難しいラリーになりそうだから、できる限りうまくコンディションに適応し、最高の結果を得たい。今回最大の課題は、ステージのどの部分が滑りやすいのかを特定すること。特に、スタッド抜けによるグリップが低下するであろうステージの終盤にかけて、正しく見極めなくてはならない」と述べている。

 そして、シェイクダウン1回目で最速だったロバンペラは「今回もっとも難しいのは、ミックスコンディションでいかにスピードをマネージするかだ。スタッドがあまり抜けないようにタイヤを労って走らなければならないけれど、いいタイムを出すためにはフラットアウトする必要がある」とコメントした。

 2020年のWRC第2戦スウェーデンは14日(金)から競技区間の走行が始まる。この日はSS2〜4、SS8の計4SSが行われる予定で、このうち最初の2本はノルウェー、残りの2本はスウェーデンが舞台となっている。

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