全国の景気ウォッチャー1837人は「新型肺炎」の影響度をどう見ているか

今年で71回目を迎えた「さっぽろ雪まつり」は、厳しい環境下の開催になりました。記録的な少雪による雪不足にも見舞われ、雪まつりに使う雪もかなり遠方からの輸送が必要な状態でした。

これに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスです。中国からの観光客が大幅に減少しただけでなく、感染を心配した地元の小学校や幼稚園が団体来場を取りやめたようです。開催期間中の来場者数は202.1万人で、過去最高だった昨年の273.7万人に比べて26.2%減少しました。

内訳をみると、大通会場の来場者数は前年比▲18.6%(157.5万人)でしたが、つどーむ会場が同▲44.5%(44.6万人)と大幅に減少しました。リーマンショック翌年にあたる2009年の208.0万人、東日本大震災の翌年である2012年の205.4万人を下回る数字です。

人数比較が長年わたり可能な大通会場分で比べてみると、1995年の150.4万人以来、25年ぶりの少ない来場者数となりました。新型コロナウイルスのマイナスの影響が大きかったことがわかる数字です。


345人の景気ウォッチャーが新型コロナウイルスに言及

2月10日に発表された「景気ウォッチャー調査」(調査期間:1月25~31日)にも、初めて「新型コロナウイルス」という言葉が登場しました。

「中国の新型コロナウイルスによる肺炎が収束しない限りは、客は国内移動も控えているようで、とても経済が活性化していく状況にはなっていない。とにかく大変である」(南関東:旅行代理<(経営者>)に代表されるような、中国を中心に感染が拡大している状況を懸念するコメントが多くみられました。

ただし、中には「現在、新型コロナウイルスの発症で、特定の商品の売行きが良くなっているので、今後、その影響が売上増に現れてくるかもしれない。東京オリンピックに向けての需要の拡大も期待される」(四国:スーパー<店長>)というコメントもありました。

今回の景気ウォッチャー調査で新型コロナウイルスに言及したウォッチャーは有効回答者1,837人中、現状判断で97人、先行き判断で345人に上りました。2003年のSARS発生時には、最大コメント数は5月調査の現状判断125名、先行き判断188名でしたので、先行きに関して新型コロナウイルスの影響を心配する人が多いことがわかります。

SARSが流行した2003年時点で、中国のGDP(国内総生産)の世界に対するシェアは4%でしたが、2018年には16%と大きくなっています。訪日外国人は2019年に3,188万人で、2003年の6.1倍になりましたが、中国人は959万人と同期間に21.4倍にもなっています。2019年の中国人の旅行消費額は1兆7,718億円と、全体の37%を占めています。

2020年ではサプライチェーンやインバウンドなどの影響が2003年当時よりも大きくなることには留意する必要があるでしょう。

<写真:アフロ>

DIは分岐点を大きく下回る20台

景気ウォッチャー調査では、現状の景況判断を「良くなっている」「やや良くなっている」「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」の5段階で回答します。DIを作成する時には0.25刻みでそれぞれ「1」「0.75」「0.5」「0.25」「0」の点数を与え、これらを各回答区分の構成比(%)に乗じてDIを算出します。50が景気判断の分岐点になります。

地域と分野・業種の2つの軸からバランスよく、日本経済の縮図になるように選ばれた景気ウォッチャーは、5段階の回答に関しての判断理由を明記するので、新型コロナウイルスに言及したコメントから、その要因DIを計算することができます。

1月の景気ウォッチャー調査を使って「新型コロナウイルス」関連判断DIを作成してみると、分岐点の50を下回り、現状判断DIが29.1、先行き判断DIが29.9となりました。全員が「やや悪くなっている」とコメントすると25.0ですから、それに近い数字であるといえるでしょう。

現状判断で新型コロナウイルスに言及した人の割合は、全国平均で5.3%でしたが、これを上回った地域は近畿11.6%、北海道9.2%、沖縄7.9%、九州6.6%の4地域。いずれも中国人観光客のインバウンド需要が大きい地域です。

また、先行き判断DIの29.9は、前月12月の全体DIである44.5より14.6ポイント低い数字です。コメントした人の割合が18.8%であることからみて、1月の全体・先行き判断DIを2.7ポイント程度押し下げた可能性があるとみられます。

SARS発生時はどう推移したのか

2003年の「SARS」関連判断DIの推移をみると、SARSに関するコメントは3月調査で初めて登場しました。3月調査が現状11人、先行き4人でした。最もコメント数が多かったのが5月調査でした。SARSが終息方向に向かうとコメント数が減少し、9月調査では1ケタに低下しました。

「SARS」関連現状判断DIは3~6月は「13.6」「21.1」「27.0」「48.9」と景気判断の分岐点の50を下回っていましたが、7月・8月では「63.1」「66.7」と60台まで上昇しました。

最後に「ESPフォーキャスト調査」についても触れておきます。この調査では2017年6月以降の偶数月に、「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因」を特別に調査しています。フォーキャスターには3項目まで選択してもらっています。

2020年2月調査で「新型肺炎の感染拡大」について初めて選択肢に加えたところ、34名のフォーキャスターの94%に当たる32名が選択しました。32名という人数はこの調査史上最大です。2位は「中国景気の悪化」で31名でした。

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