高級路線で大ヤケド、「ガスト」が狙う低価格デジタル業態への変身

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「想定通り客単価は上昇したが、客数が大きく下がり、最後に第4四半期で来店頻度が間延びした段階で、大きな業績の悪化につながった。減益の大きな要因がここにある」――。2月13日に開かれた2019年12月期の決算説明会で、すかいらーくの谷真社長は増収減益の原因について、こう分析しました。

リーズナブルな価格帯のメニューが中心のファミリーレストラン「ガスト」で、高価格帯に商品価格を寄せたのが裏目に出たというのです。人件費高騰や消費増税の影響で深刻な打撃を受けている外食業界にあって、すかいらーくはどのような手を打つのでしょうか。


高価格メニューへのシフトが裏目

ガストは2019年2月に実施したメニュー改定で、前年は2品のみだった1,000円以上のグランドメニュー(主菜)の商品を4品に増加。期間限定で実施するフェアメニューでは、1,200以上の商品を前年の倍となる10商品に増やしました。

たとえば、「日本の美食紀行」フェアの一環で発売した「牛リブロースステーキ」は1,499円(税別、以下同)、「ご当地グルメグランプリ」フェアの「石狩風鍋とミニねぎとろ丼和膳」は1,299円といった具合です。

グランドメニューも、ステーキなどは1,000円以上の商品が並び、従来のガストのイメージよりも“高級”な印象を与えます。

一方、2018年は7商品あったフェアメニューの500円台の商品はゼロに。600円台の8商品は半数に減りました。

すかいらーくは、2015年から約2%のペースで上がり続ける人件費に対して、客単価を上げる戦略をとっており、高価格帯メニューの強化はそのカギとなるものでした。しかし、ガストでメニューを高価格帯に寄せすぎた結果、客数が大幅に減少し、売り上げの後退につながりました。

6月から低価格帯メニューを強化

2月13日に発表されたすかいらーくの2019年12月期業績は、売上高が前期比2.5%増の3,753億円でしたが、本業の儲けを示す営業利益は同10.0%減の205億円。増収減益の着地となりました。

第3四半期(7~9月期)までの営業利益は前年同期比6.3%増のペースで来ていたので、その後、一気にブレーキがかかった形です。

第4四半期(10~12月期)に減益となったのは、2019年9月からグループ全店で実施している禁煙や、10月の消費増税、台風19号といった外部要因のほか、内部要因として前述の高価格メニューの影響がありました。

この結果を受けて、2020年12月期はガストで低価格帯のメニューを強化する方針で、6月にメニュー改定を予定しています。ただし、「客単価を下げたことが伝わるのに半年ぐらいかかる可能性がある」(谷社長)として、来店頻度の上昇効果が出るのは第4四半期を見込んでいます。

客数維持の戦略に生じた誤算

「客単価を上げて客数を維持するが経営戦略の柱だった」と2019年12月期の計画を振り返る谷社長。この客数維持のためのカギと考えていたのがデジタルマーケティングでした。しかし、ここにも誤算が生じました。

折込チラシを減らし、TwitterやFacebook、アプリによるプロモーションを増やしたところ、想定する結果を生み出せず、結果的に女性やシニアに来店頻度の減少につながったといいます。

「広域に配信をして、客数を担保できると目論んでいたが、その効果は限定的だった」(同)

2020年12月期は折込チラシの量とクリエイティブを最適化するとともに、デジタルプロモーションの方法を見直す方針です。

デジタルメニューは何がすごいのか

メニュー改定や販売促進の他に予定している施策が、「フロアオペレーション改革」による店舗の生産性向上。そのうえで重要な役割を果たすのが、各テーブルに設置するタブレット端末「デジタルメニューブック」の導入です。

利用者がテーブルから商品を注文できるので、店舗スタッフのオーダー受けなど、約3割の業務を減らすことができるといいます。クラウド上でメニューを管理できるため、地域や気温などに応じて、本部から各店舗のメニューの差し替えも可能になります。

3月までにガスト、バーミヤン、ジョナサンといった主要業態に、7月には全店で導入する予定です。「利益や単純な労働時間の削減に走らずに、サービス向上に役立てる」(同)。デジタルメニューブックの導入後は、QRコード決済と連動したテーブル会計の仕組みを構築するほか、キャッシュレス対応のセルフレジ導入も予定しています。

「人件費の高騰をシステム的に乗り越える」という谷社長。24時間営業廃止・全店禁煙などで注目を浴びる、すかいらーくグループの店舗は2020年以降、さらに姿を変えていきそうです。