木村佳乃さんが巧すぎるのも相まって、薫の境遇の悲惨さが増幅されるという鬼の構造

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ハハーン。薫先生(木村佳乃)は容姿端麗で性格もよく、なおかつ仕事も出来るっていうのに、恋愛面ではちっとも報われない人なのだね…。

だって薫先生が信頼している最後の砦と言っていい須藤先生を演じているのは、あの田辺誠一さんですよ?初登場時からもう怪しい香りがプンプン漂ってたし、振る舞いもどこかしら不穏だし、悪い時の田辺さんの顔してるじゃーん!とっくに気付いててよー薫先生―!見る目なさすぎー!!…っと、ドラマの当事者にとっては“悪い時の田辺誠一”というイメージを知る由もなし、まだ“悪確定”でもなし、そもそも田辺さんに失礼なことを言いすぎてて大変申し訳ないんですが、ラストの薫先生の境遇があまりにも悲惨すぎて、こっちもなんだか良くわかんない思考に陥って、恋愛運が悪い!というくだらなくて安易な結論で落ち着きそうになりました。

前回、病院の屋上で繰り広げられた “地獄の懺悔”が薫先生にとって精神的どん底かと思いきや、医療過誤の真相が実は…って、おいおい。薫先生の身にもなれよ。こちとらわざわざ病院を転籍して、変装までして心先生(松下奈緒)に近づき、心先生に寄り添い、何か自分に出来ないかと葛藤し、友情が芽生え、でも良心の呵責にさいなまれ、そうこうしてたら心先生の夫は亡くなり、耐えられなくなった末に全てを告白し、あの心先生に“消えて…”って言われとんねん!それなのに実は…って。

ついつい薫先生の気持ちと同化するあまり、無意味に関西弁になってしまいました。そらどんな時でも冷静な判断が出来て真摯な対応を見せていた薫先生だってパニクるし、なにがなんだかで「やめて!」って声も荒げちゃうよ。うんうん、わかる。薫先生、僕はわかってるし、視聴者全員があなたの味方だよ!って伝えたい。そうしなければどうにもこうにもやりきれないラスト。

またそれに至るまでの木村佳乃さんの巧さよ。不穏に見えたと思ったら実は誠実で、強さもあるし弱さもあって、秘密を握りながらもがいてて、仕事は出来るっていうのに信頼している人には裏切られ、その果てにパニクって「やめて!」って、薫先生の造形が人間味にあふれてるし繊細で、一歩間違えば身勝手で情緒不安定なだけの人になってもおかしくないのに、その心情の流れを第1話から木村佳乃さんが丁寧に演じているから、見ているこっちは、それが痛いほど伝わる共感すべきキャラクターになってる。その辺の機微の付け方が巧すぎる。だけど、その木村佳乃さんが巧すぎるのも相まって、薫先生の境遇の悲惨さが増幅されるという鬼の構造。

今回なんてこれまでずっといい味出しまくってた高畑淳子さん演じる高坂さんが、今回は特にいい味出しまくってて、何気ないシーンでもちょっとウルっと来ちゃうほど味わい深かった高坂さんで、その手術がうまくいかなかった…というエピソードもコンボしてくるんだもん。これはたとえ真相が違っていたとしても医療過誤をずっと隠し続けてきたことの宿命なんでしょうか。それにしたって、その宿命が全て薫先生に降り注ぎ過ぎじゃありません?神が恐ろしいの?それとも『アライブ』を作ってる人たちが恐ろしいの?

そして話戻って薫先生はなんで見るからに怪しい人をも頼ってしまうのか…という僕のどうでもいい視点の邪推を察するかのように、どうしても何かを頼らざるを得なくなる状況を、がんを宣告された当事者の立場から描いてくれました。なぜ“がんが治る水”なる、冷静に考えれば怪しすぎるものでさえ頼ってしまうのか?娘ががん告知された父親が妄信的になっていく様を、第2話から登場している佐倉さん(小川紗良)の抗がん剤治療の姿を通して克明に見せるから、そのお父さんの気持ちも痛いほどわかり、そしてまた味出しまくりの高坂さんが「生きたいからよ…」なんていうフォローも入ってくるしで説得力しかない。誰もみんな、死にたいつもりの人なんていないもんね…。

で、前回の予告ですごく嫌な予感がしてた佐倉さんと結城先生(清原翔)の甘酸っぱいラブストーリー展開は想像してた程の悲劇は訪れなかったから少し安心したとはいえ(どんな悲劇を想像してたんだよ)、治療中とはいえ乙女心もあって、自分に合うウィッグを探してたら、値段が数十万円というリアル…。こっちもこっちでやっぱりせつないじゃん!

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)