松岡英明、J-POPシーンに降臨した初めての王子様!

1988年 6月22日 松岡英明のアルバム「以心伝心」がリリースされた日

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80年代、全国で展開されていたエピックソニーのビデオコンサート!

80年代、全国で展開されていたビデオコンサート、通称ビデコンをご存じだろうか。全国各地でエピックソニー所属アーティストのMVを上映するイベントのことだ。

昔は今のように MV を目にする機会も多くはなく、こうしたイベントはとても貴重だった。ビデコン開催時には MVの上映にとどまらず、スペシャルゲストも訪れて写真撮影会や握手会も併せて行われていた。それだけに当時の音楽ファンにはたまらないイベントだった。

ある日、いつものようにお目当ての TM NETWORK の新作 MV を観に出かけた私の前に登場した一人の男性(男の子?)。スラッとした細い体に中性的な美しい顔。まるで絵本から抜け出した王子様のよう!! その人は “松BOW(まつぼう)” と呼ばれ、女子高生たちから黄色い歓声が飛んでいた。そう彼こそ、松岡英明その人だった。

松岡英明は、日本の音楽シーンに登場した “初めての王子様”

フレッシュな雰囲気をまといつつも、どこか淡々と落ち着いていてクール。ビデコンでデビュー直後の彼に会い、MV を観て、私もたちまち魅了された。

今でこそ及川光博をはじめ、王子様と呼ばれるアーティストやタレントは存在するが、当時そんな立ち位置の人はいなかった(と思う)。松岡英明こそ正真正銘、日本の音楽シーンに登場した “初めての王子様” だと個人的に思っている。

王子様的なルックスとイメージだけが先行し、アイドルなのかアーティストなのかと世間のカテゴリーが揺れた時期もあったように思う。けれど、彼が生み出す音楽と確かな歌声はまさにアーティストそのものだった。影響を受けたというデュランデュランのスパイスを感じさせ、イギリスのニューウェーブ、ニューロマンティックの香り漂うサウンドは当時の J-POP ではとても新鮮だった。また、音楽雑誌のインタビューで飛び出す抜群の言葉のチョイスとシニカルな答えには毎回、心を揺さぶられた。そこには彼の知性が溢れていた。

新しい音楽を届けてくれる 松BOW の音楽にいつもワクワク!

1986年リリースのデビューシングル「Visions of Boys」は作詞・作曲を松岡本人が担当。編曲にホッピー神山、ギターに布袋寅泰が参加した名曲だ。デビューアルバム『VISIONS OF BOYS』も、布袋寅泰とホッピー神山がサウンドプロデュースを担当しており、いまだ色あせない名盤だ。

シングル曲「Visions of Boys」、そして1989年リリースのシングル「Kiss Kiss」など、彼の曲には英語の歌詞の曲が数多く存在する。当時、全曲通して英語の歌詞というのはとても珍しかった。彼の甘い声は英語の歌詞と相性がよく、とても映えた。英語の歌詞にしたことで曲が鮮やかに彩られ、洗練されたオシャレさも加わって、彼だからこそ表現できるファンタジーな世界が目の前に広がった。

今まで触れたことのない新しい音楽を届けてくれる松BOW の音楽に、いつもワクワク胸を踊らせたものだ。ちなみに当時、「松BOW の英語の歌詞を覚えたいから」と、英語の勉強に熱心に取り組む女の子たちがたくさんいたことを覚えている。

心に残る代表曲「以心伝心」のパワーフレーズ

松BOWの代表曲「以心伝心」は、アップテンポでキャッチーな曲だ。この曲は日本語の歌詞で、今でも音楽ファンから愛されるパワーフレーズがある。

 逢いたいと思うのは簡単でも
 逢いたいと思わせるのは難しい事

一見すると聞き流してしまいそうになるが、よく意味を考えてみると、なるほど恋愛に限らず人間関係に解釈を広げても、まさに真理。こうした哲学的な言葉をサラッと言葉遊びのように歌うセンスと、常に新しい音楽に挑戦していく姿勢が、松岡英明の大きな魅力の一つだと思う。

松岡英明は、今だってやっぱり “永遠の王子様”

現在はラジオ番組やライブ活動を精力的に行っている松BOW。先日は、なかなか足を運ぶことができないファンのためにライブのもようをネット配信し大いに喜ばせた。配信を覗くと、なんとびっくり! そこには当時と変わらぬルックスと、あの頃のままの歌声の彼がいた。今だってやっぱり松岡英明は “王子様” そのものだった!!

王子様は魔法でも使えるのだろうか。いや違う。きっと今までたくさんの努力を重ねてきたのだ。自分に厳しく、常に音楽と真っすぐに向き合ってきた賜物なのだとステージ上の彼を見て、胸が熱くなった。松岡英明―今も変わることなく夢を見せてくれる永遠の王子様。高校時代、ビデコンで出会い追っかけの一人となった頃、そして今は音楽ライターの端くれとして、これからもずっと見続けていきたい。

カタリベ: 村上あやの