大村・東彼の堀田 「子どもも出場」願う 大切な人のためにUターン 第69回郡市対抗県下一周駅伝大会第2日

県下一周駅伝が縁で結婚した堀田(大村市陸協、左)と妻の真衣さん。もうすぐ誕生する第1子には「ぜひ県下一周を走ってほしい」=大村市、JR大村駅

 今年で第69回を数える郡市対抗県下一周駅伝。積み上げた歴史の分だけ、物語もある。現在首位を走る大村・東彼チームの堀田昇世(27)=大村市陸協=も、この大会に特別な思いを持つ一人。昨年結婚した真衣さん(26)は、第60回大会で知り合った元チームメートで「この大会がなかったら大切な人と出会うこともなかった」。年に1度の県下一周は、ランナーたちにとっての人生そのものでもある。
 川棚高3年生で出場した9年前。県高校駅伝で3年連続入賞するなど、陸上一色の毎日を送っていた。卒業後も関東の大学で競技を続けることが決まっており、恋愛などとは無縁の状況だった。
 そんなときに出会ったのが諫早商高2年生の真衣さん(旧姓田川)。初出場ながら、チームのアンカーを任されていた。仲間の汗がにじんだたすきを懸命にゴールまで運ぶ姿。胸を打たれた。沿道から声援を送ると、感情はさらに高まった。
 結局、思いを伝えられないままチームは解散したが、神奈川県警で勤務していた3年前、諦めきれずに連絡を取って再会。約2年の交際を経て、入籍が決まった。諫早市役所に勤める真衣さんのためにUターンも決意。猛勉強して長崎県警に首席で合格した。この春からは地元で職務に当たることになっている。
 後に分かったことだが、実は真衣さんも9年前から堀田に好印象を抱いていたという。「同じ学校の人だけでなく、大人から小学生までたくさんの人が集まる。自然と一体感や絆が生まれる」。県下一周の魅力をそう語る妻のおなかには、新しい命が宿っている。出産予定日は2月21日だ。
 だから今、夢ができた。県下一周ランナー同士の子どもが、いつか同じ舞台に立ったら、どんなにうれしいだろう。
 「県下一周は自分の人生を語る上で欠かせない大会になった。これからもずっと続けてもらって、生まれてくる子どもにも走ってほしい」
 この日、地元大村市に入る10区(13.1キロ)を区間2位で走り終えた後、妻が笑顔で近づいてきた。その大きくなったおなかをなでながら、明るい未来へ思いをはせた。

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