新型肺炎「症状ない人も感染源に」 長崎大熱帯医学研究所長・森田氏 インタビュー

「症状の出ない人も感染源となる。極めてやっかいだ」と語る森田所長=長崎市坂本1丁目、長崎大熱帯医学研究所

 新型コロナウイルスの感染拡大は、国内でも死者が出るなど終息の見通しが立っていない。未知のウイルスに人々は不安を募らせるが、どのような対策が必要なのか。世界保健機関(WHO)で感染症対策に当たった経験を持つ長崎大熱帯医学研究所長の森田公一氏に聞いた。

 -コロナウイルスとは。
 いろんな動物が持っていて何百種類もある。人に感染するのは新型を含め7種類。うち四つは、いわゆる鼻風邪の原因となるウイルスで昔から知られていた。人類に重篤な肺炎を引き起こしたのは2002~03年にアジアを中心に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)が最初で、13年に中東で流行したMERS(中東呼吸器症候群)、今回の新型肺炎「COVID19」と続いた。

 -新型と、SARS、MERSとの違いは。
 SARSとMERSは感染者がほとんど重症化した。ウイルスは重症になってから体外に排出されていたので、重症患者を隔離すれば感染を封じ込めることができた。新型は軽症患者や症状が出ない感染者も多く、そういう人たちも感染源になり得る。かつ一部の人は肺炎を起こして重症化するため、極めてやっかいだ。

 -どういう人が重症化しやすいか。
 中国を見ても圧倒的に高齢者が多く、糖尿病など基礎疾患を持った人が多く亡くなっている。若い人は軽症で終わることも多いが、亡くなる場合もある。現時点では死亡率は中国の武漢で約4%だが、その他の地域では0.16%と報告されている。約10%のSARS、約35%のMERSと比べるとかなり低い。

 -感染経路は。
 せきやくしゃみをした時にウイルスを含んだ唾などが机などに付き、それを触った手で口や鼻に触れてしまうと粘膜を通してウイルスが気道に入る。飛沫(ひまつ)を直接吸い込む場合もある。
 ウイルスは消毒用アルコールやせっけん水で容易に壊せるので、まずは手洗い。人混みでは飛沫を吸い込まないようマスクをする。早寝早起きをしてしっかりと食事をし、体力、免疫力を落とさないことも大切だ。

 -それでも37.5度以上の発熱やせきなど感染が疑われる場合は。
 直接病院に行かないことが重要。まずは近くの保健所あるいは、かかりつけの医師に電話し、指示に従って行動してほしい。
 治療は、肺炎の症状を和らげる対症療法が主になる。人間の体は免疫の発動によってウイルスを押さえ込もうとする。感染症指定病院は特定の病室で医療スタッフが防護服などを着用し、手厚く治療をしてくれる。

 -不安を抱える人も多い。
 適切に怖がることが大事。怖がり過ぎてもいけないが、今はまだ安心する時ではない。正しい情報を仕入れ、適切に対応してほしい。

 

 【略歴】もりた・こういち 1956年生まれ。愛媛県出身。長崎大医学部卒、同大学院医学研究科修了。1995年から3年間、WHOに派遣され、西太平洋地域事務局感染症対策課長を務めた。2001年から同大熱帯医学研究所教授。03年にWHO特別チームの一員として、マカオなどでSARSの調査などに携わった。13年から4年間、同研究所長。19年から再び所長を務めている。

 

●関連記事

© 株式会社長崎新聞社