巨人史上最強助っ人クロマティ氏が熱弁、外国人選手が日本で成功する条件

巨人史上最強助っ人と呼ばれるウォーレン・クロマティ氏【写真:荒川祐史】

今季も新外国人が続々と来日したが…巨人史上最強助っ人が考える成功の“コツ”は?

 プロ野球の春季キャンプがスタートし、各球団は開幕に向けて着々と準備を進めている。この時期、ファンをワクワクさせているのが、新外国人選手のニュースだ。フリー打撃で柵越え○本、初実戦で最速○キロといったニュースは大きく取り上げられる。“助っ人”として海を渡ってくる選手が活躍できるか、できないかでチームの成績は大きく変わってくる。

 今年はメジャー通算282本塁打、ゴールドグラブ賞4度、オールスター選出5度を誇る超大物、アダム・ジョーンズ外野手がオリックスに加入。ソフトバンクと契約したマット・ムーア投手も2013年にレイズで17勝を挙げるなど超有望株としてメジャーを沸かせた左腕で、巨人のヘラルド・パーラ外野手も昨季ナショナルズのワールドシリーズ制覇に貢献するなどメジャー通算1466試合出場の実績を持つ。ヤクルトのアルシデス・エスコバー内野手、阪神のジャスティン・ボーア内野手らもメジャーで結果を残した実力者。一方で、MLBでは実績がなくても、成功を目指して日本にやってきた選手もいる。

 メジャーで実績があるからといって、NPBでも活躍できるとは限らない。過去には期待を大きく裏切ってしまった選手もいる。逆に、日本で結果を残してメジャーで大型契約を勝ち取る選手や、NPBで長く活躍する選手も多い。助っ人が役割を果たすために大事なことは何なのか。巨人史上最強助っ人と呼ばれるウォーレン・クロマティ氏はFull-Countの取材に「チームプレーヤーになれるか。そこが大事」と明かしていた。昨年行ったインタビューから、NPB助っ人“成功の条件”を読み解いてみた。

 クロマティ氏は1984年に巨人に加入すると、7シーズンで通算779試合に出場し、打率.321、171本塁打、558打点をマーク。明るい性格でチームに溶け込み、バンザイパフォーマンスをはじめとする旺盛なサービス精神でファンからの人気も絶大だった。

 MLB通算1038試合出場の実績を誇り、巨人入団直前の83年にもエクスポズで120試合出場と来日前はバリバリのメジャーリーガーだったクロマティ氏は、日米の野球について「全く違います」と分析する。「日本の野球は基礎技術とチームプレー。メジャーはパワーとスピードです。あと、タイミングとリズムはメジャーの方が随分速い」。まずは、この違いに対応する必要があったという。

「日本のフロントの人たちはニューフェイスを獲得するときに重要なことがあります」

「野球は90%メンタルです。他の10%が個人能力です。メンタルのスポーツだと思います。私の先生は(来日当時の巨人監督だった)オウ(王貞治)さんです。一緒に素晴らしいコミニケーションを重ねていきました。私の1番のポイントはメジャースタイルから日本スタイルへの切り替えでした。私のメンタル、準備法を変えました」

 クロマティ氏が助っ人にとって最も大事だと考えているのは、技術や能力ではなくて精神面、適応能力。「外国人選手でこの切り替えに苦しむケースもありますね」と話した上で、「日本のフロントの人たちはニューフェイスを獲得するときに重要なことがあります。この選手がプレーする新たな国の流儀に対する適応力があるのかどうか、見極めることが大事になります」と説いた。

 毎年、日本で活躍できずにチームを去っていく選手がいる。シーズン終了を待たず、途中退団という形で帰国するケースも少なくない。昨季途中に阪神が補強したヤンハービス・ソラーテ内野手は、わずか20試合出場でシーズン終盤に自由契約となった。もちろん、理由は1つではなく、選手に同情する声もあるが、クロマティ氏はソラーテの問題についても「外国人選手はチームとしてプレーする意識が必要になる」と言及し、こう続けた。

「メジャーの経験を持ち込んではいけない。もしくは、ラテンリーグでの経験を持ち込んではいけない。ワガママな態度は日本では駄目。わかりますか? フロントオフィスがとても大事になる。ラテンなど外国人選手を選ぶに際して、とても大事なことは相手の目を見て聞くこと。日本の流儀で野球を喜んでやってくれるのか。チームプレーヤーになれるか。そこが大事です。『このチームでやりたくない』と言って、シーズン途中で退団するというのは球団にとっても見栄えが悪い。日本とスタイルが合わないなどの理由で退団するのはよくない。決定を下したスカウティングの失態ということになってしまいます。助っ人はいいチームメンバーであることが重要です」

「いいチームメートになることが1番大事。能力は二の次になります」

 逆に、巨人で外国人投手史上最長の8年間プレーしたスコット・マシソン投手については「史上最高の外国人選手だ。私を除いてね。私が助っ人でナンバーワンだから(笑)」と絶賛した。

「スコットはロイ・ホワイト、ラミチャン(アレックス・ラミレス現DeNA監督)のような日本で大成功した外国人選手と並ぶ存在です。それと同時に、素晴らしいチームメートでもある。多くを残してくれました。スコットは外国人選手にとっては見習うべき最高のお手本です。いいチームメートになることが1番大事。能力は二の次になります。チームの一員であるという意識が大事。日本スタイルでプレーしたいか。日本のマナーを守ることができるのか。成功するにはそこが1番大事になります」

 どれだけ日本に馴染むことができるか――。実際に日米で成功したクロマティ氏の言葉には説得力がある。

「私はどこにいようが、そこの一員になれます。日本、中国、スペイン語圏、全員黒人選手であろうが、白人選手であろうが、関係ありません。私の能力はどこでもプレーできるという部分です。どんなチームメートでも、どんな国でもプレーできる。どんな時でも、世界中どこでも問題ない。チームメートを知る。自分自身を仲間に知ってもらう。コミュニケートできる。それが自分の1番いいポイントです」

 今年は巨人のアドバイザーとして活動する史上最強助っ人が日本に注ぐ深い愛情は、今も変わることがない。今季NPB入りした選手の中から、クロマティ氏のような実績を残す選手は現れるだろうか。(Full-Count編集部)

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