新型コロナウィルスは投資にどう影響?投資家は何を考えて動くのか

最近はテレビをつけると、連日新型コロナウィルスのニュースが流れています。街を歩いていてもマスクをしている人ばかりですし、ドラッグストアやスーパーに行っても依然としてマスクが品薄の状況が続いています。

当初は中国国内だけの話でしたが、既に世界中で感染者が発見され、中国国外でも死亡者が報告されており、日本人の死亡者まで報告されてしまいました。一日でも早く状況が改善することを祈るばかりですが、今回はこのような大きなニュースが流れた時に投資家が何を考えるのかについて解説します。


新型コロナウィルスの影響を想像する

新型コロナウィルスのニュースが初めて報じられて以降、日を追うごとにその深刻さが増しています。誰もが感染するリスクはあるので、まずは予防などが優先されますが、投資家としては新型コロナウィルスの件が経済やマーケットに与えるであろう影響について、さまざまな想像を巡らせなくてはいけません。

まず、日本にはどのような影響があるでしょうか。すぐに想像できるのは観光業へのダメージです。日本政府観光局(JNTO)のデータによれば、2019年に日本へ来た中国人観光客の数は前年比14.5%増の959万4,300人です。これは訪日外国人観光客全体の30%にあたる数字です。日本の観光業にとって中国人観光客がどれだけ重要であるかがわかります。

また、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によれば、中国人観光客の1人あたり旅行支出額は22万4,870円となっています。俗に言う「爆買い」によって叩きだされる圧倒的な数字です。こう考えると、日本経済にとっては中国人観光客の存在は観光業だけでなく、小売業にとっても重要な存在といえますね。

しかし、新型コロナウィルスの感染拡大を食い止めるために、中国政府が海外への団体旅行を禁止し、今年の冬の休暇シーズン(春節)は日本の観光業や小売業に強烈な逆風が吹きました。日本旅行業協会(JATA)によれば、中国人の日本への旅行キャンセルは3月までに40万人超にのぼる可能性としています。キャンセルになった中国人観光客の数を40万人、1人が滞在中に使う金額を20万円とすると、中国人観光客が滞在期間中に消費する金額は単純計算で800億円。本来、日本で使われるはずだったそれだけの消費額が消えたことになりますから、その影響は言うまでもありません。

<写真:ロイター/アフロ>

国内だけでなく海外にも目を向けよう

日本だけでなく、海外への影響も想像してみましょう。日本が属するアジア圏は地理的に中国と近いため、他の地域に比べると大きな影響が出やすい訳ですが、前述の様に観光の観点からすると、実は香港とタイが大きな影響を受けます。

IMFのデータから、中国からの旅行サービスから受け取る金額をGDP比で算出すると、アジア圏では香港が1位、タイが2位となっています。香港はデモの件で経済がボロボロになっていて、今回の新型コロナウィルスは泣きっ面に蜂という状態で、深刻な景気後退が予想されます。

また、貿易の観点から見ると、中国・香港向けの輸出額が対GDP比で大きいのは台湾が1位、ベトナムが2位、マレーシアが3位となっています。中国や香港の経済が想像以上に弱含み、同地域への輸出量が大幅に減少すれば、台湾・ベトナム・マレーシアの経済にも大きな悪影響を生じさせます。

震源地の中国でも既にネガティブな経済指標が発表されています。中国の1月の消費者物価指数は前年比5.4%上昇。これは2011年11月以来の大幅な伸びです。中国政府が感染拡大防止のために移動制限をし、通常の春節の物価上昇圧力に加え、買いだめや輸送規制によるサプライチェーンへの影響もあって、物価が上昇しました。当然、この現象は国民の生活を苦しくさせます。

過去のケースを参考にするだけじゃダメ

長く相場の世界にいると、今回の新型コロナウィルスの件に対して、2002~2003年に中国広東省を発端として流行したSARSや、2012年にアラビア半島周辺を発端に流行したMERSがすぐに思い浮かぶかもしれません。当時の世界経済や株式市場にどのような影響があったのかなど、過去のケースを参考に考えることができます。しかし、当時と現在では並列に比較できないことも意識する必要があります。

たとえば、新型コロナウィルスが欧州経済に与える影響を考えてみましょう。先ほどは観光の観点から日本やアジア各国への影響を考えましたが、欧州においては中国からの観光客減少の影響は少ないため、注視すべきは貿易です。現在の対中輸出の対GDP比はユーロ圏、ドイツともにSARSが流行った2002~2003年に比べると、圧倒的に高くなっており、対中輸出が減少した時の影響は当時と現在では全く違います。

どれだけ長く相場にいられるかが重要

大きなニュースが流れた場合、あらゆる角度から影響度を推測していく必要がありますが、相場の世界に長くいればいるほど、「あの時はどうだったっけ?」とすぐに過去の似たケースを思い出して比較できるようになります。もちろん、相場の世界にただ長くいるだけでは意味がありません。常に考えて仮説を立てては検証を繰り返しながら経験を積むことで、思考の引き出しが増えていきます。

どれだけ学んでも未来を正確に見通すことはできない相場の世界ですが、退場せずに長くいようとするならば、徹底的なリスク管理は欠かせません。自分にとって無理のない範囲の金額で、しっかりと分散をして投資をしましょう。

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