鷹・松田宣、球界の若手に猛ゲキ「プロになれただけで満足している選手が多い」

ソフトバンク・松田宣浩【写真:荒川祐史】

独占インタビュー・下、侍ジャパンでのハチマキ&ゲキは「僕がこれまでやってきた野球そのもの」

 プロ15年目を迎えたソフトバンク・松田宣浩内野手への独占インタビュー第2弾。いまや他球団の若手からも慕われる存在で、昨年12月には日本プロ野球選手会の新理事長にも選任された。そして、今夏の東京五輪には金メダル獲得へ不退転の覚悟で臨む。キャンプ前に応えたインタビューで思いを紹介する。

──最近6年で5度日本一に輝いているソフトバンクにあって、危機感や、いまどきの若手に物足りなさを感じるところは?

「ひとこと言いたいのは、最近、ポスト内川さんとか、ポスト松田という言葉を聞きますが、プロはアマチュアと違って、僕と内川さんが年を取ったからといって卒業していくわけではない。実力社会、数字社会だぞと」

──ポジションは簡単に譲らないと。

「1度身に着けた技術や経験は、なかなか離れていかない。僕も若いときには、必死に先輩の背中をみて頑張ってきました。今の若い選手にもそういう気持ちでやってほしいなと思います」

──ところで、1月26日放送のTBS系「サンデーモーニング」に生出演した際には、「侍ジャパンには熱さと明るさと元気が必要なんで、僕が必要だと思います」と発言していた。

「五輪には出たことがなく(WBCとプレミア12には2度ずつ出場)、最初で最後(のチャンス)。もし、(昨年11月の)プレミア12で稲葉ジャパンに呼ばれていなかったら、(代表に選ばれる)可能性はゼロだったと思うんです。たまたま呼んでいただいて、世界一にもなれたので、ゼロではなくなったと思う。だとすれば、選ばれたいし、狙わなければいけないと思います」

──プレミア12の韓国との決勝戦では、スタメンから外れ出番もなかったが、試合開始直前の円陣の真ん中で、日の丸と『必勝』の文字が描かれたハチマキを巻き、侍ナインにゲキを飛ばした。

「あれが、僕がこれまでやってきた野球そのものです。もちろん打って活躍したい思いもありますが、自分が目立っても目立たなくても、チームのピースでありたい」

「僕らの若いときより、プロ野球選手になれただけで満足している選手が多い気がします」

──そう言えば、オフの契約更改の際、「ベテランになったら声は出さなくていい、という考えは古い」と力説していた。

「はい。そういう考えを撤廃したいんですよ。(日本野球において)いらない歴史です。年齢を問わず、試合に出ている選手ほど声を出さなければならないと思う。(ベテランになったら)声を出さなくてもいいという考えは、甘えや緩みになり、技術向上を妨げる気もします」

──いまや他球団の若手からも慕われ、シーズンオフの自主トレでは、球団の垣根を越えて“弟子入り”志願者が殺到。昨年12月には、日本プロ野球選手会の新理事長にも選任された。

「選手会では炭谷会長(巨人)と違い、僕の役割は野球普及です。理事長になってから、野球人口が減っていると初めて聞きました。用具にお金かかりますし、誰もができるスポーツではなくなってきているのかなとも思いますが、なんとか底辺の拡大をしていきたい。だからこそ、東京五輪で日本代表が頑張ることが、一番手っ取り早いと思います。僕らが中途半端な成績でなく、金メダルを取れば、一番刺激になるだろうし、そういう使命もあるのかなと。ラグビーは去年のW杯で競技人口が明らかに増えたと聞いていますから」

──球界全体を見渡し、若手に注文は?

「僕らの若いときより、プロ野球選手になれただけで満足している選手が多い気がします。その上の上にも、1軍で出るとか、活躍するとか、階段があるんですけどね」

──ところで、打撃不振に悩んだ一昨年オフ、背番号を3から、以前付けていた5に戻し、昨年の復調につながった。

「3は長嶋茂雄さんの背番号で、自分も侍ジャパンで付けたので、付けさせてもらいましたが、やはり戻してもらってスッキリしました。自分の番号という感じです」

──昨年のプレミア12の日本代表では7を付けていた。

「外崎(西武)が『5がいい』と言うので譲りました。一桁の番号で空いていたのが2と7で、『ラッキー7』のつもりでしたが、全然ラッキーボーイになれませんでしたね」(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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