五輪はチャンス、北朝鮮との協議訴え 拉致問題で被害者の会・飯塚さん講演「核やミサイルと離した戦略を」

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「拉致被害者の救出で北朝鮮と実質的な協議に結び付く戦略を」と訴える飯塚繁雄さん=10日午後、蕨市中央4丁目の蕨市民会館

 北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の会長で、1978年に拉致された埼玉県川口市出身の田口八重子さん=当時(22)=の長兄、飯塚繁雄さん(79)=上尾市=が10日、蕨市内で講演した。9日に北朝鮮も参加して華やかに開幕した平昌冬季五輪に触れ、「チャンスかもしれない。いろいろなことをきっかけに、北朝鮮との実質的な協議に結び付く努力をしてほしい」と訴えた。

 飯塚さんは講演で、「拉致被害者は人生で一番大切な『時』を奪われ、家族と過ごす時間も奪われた。重大な人権侵害だ。この問題は他国ではなく日本の問題。日本人一人一人の問題だ。風化させないために、意思表示をし、声を上げてほしい」と話し、一日も早い救出を訴えた。

 さらに「北朝鮮は76年に日本人拉致を始めたが、日本の政府、各機関、政治家も助ける姿勢が全くなかった。みんなが逃げる不作為状態が長く続いたことが、今も被害者を苦しめている原因だ」と強く批判した。

 八重子さんは7人きょうだいの末っ子で、長兄の飯塚さんの17歳下。東京・池袋で暮らしていたとき、1歳と2歳の子をベビーホテルに預けている間に拉致された。「結婚し出産した日本人としての経験や知識を持っていた八重子に白羽の矢が立った」

 飯塚さんは、北朝鮮問題がミサイルや核実験の話題ばかりに集中し、拉致被害者の帰国についての議論が全くされていないことが問題と批判。「政府は核やミサイルとは切り離し、拉致被害者を返すための実質協議につながる戦略を立ててほしい」と要望した。

 講演はNPO法人「わらび学びあいカレッジ」の主催。飯塚さんは戸田市に本社がある金属加工会社「愛工舎製作所」の顧問を務める。同社の会長牛窪啓詞社長(72)が蕨商工会議所会頭を務めることから講演会が実現した。

 牛窪さんは「拉致被害者が自分の家族だとしたらとの思いを共有して、問題解決へ向けて立ち向かってほしい。日本は軍事力を解決のために使えない。韓国、米国、モンゴル、ルートは何でもいいから、解決に向け少しでも前進してほしい」と話した。