最新の「教育費平均」と「高校無償化の制度」から我が家のプランを考えてみよう

家計のやりくりに加えて、住まいをどうするか、老後の準備をどうするか。お金の悩みは尽きませんが、子育て世帯は教育費についても備えておかないといけません。

また、国の制度や消費税アップの影響もあり最新情報をチェックする必要性もあります。

今回は、文部科学省の最新の教育費の平均データと令和2年4月から私立高校の就学支援金が引き上げなどの教育費事情をご紹介します。ぜひご家庭での教育費プランを立てるうえでの参考になさってください。


私立に通う生徒の家庭はさらに教育費を増やす傾向に

文部科学省「子供の学習費調査」は、2年ごとに調査を行っています 。最新の平成30年度と平成28年度とで年間費用平均を比較すると、公立学校に通う場合、小中高ともいずれもほぼ横ばいです。

ところが、私立では小中で教育費が増加の傾向にあります。つまり、公立と私立の教育費負担の差がさらに大きくなっているということです。

図1:平成28年度と平成30年度の年間費用平均の比較 (単位:万円)

資料:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成

一方で高校を見てみると、私立の学習費は、平成30年度は平成28年度より減っています。授業料や補助学習費が減少しているためで、後述しますが令和2年4月から私立高校授業料補助が引き上げになるため、公立と私立の差は依然としてあるものの、さらに縮まると予想されます。

では、小中高とそれぞれの教育費についてみていきましょう。

小学校から高校までの教育費はいくら?

まずは、文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」から、小学校から高校まで学校種別での教育費をご紹介します。

表1:高校卒業までの教育費の平均 (単位:円)

※「学校教育費など」とは、学校教育のための経費で、授業料など学校が一律に徴収する経費の他、学用品費、通学費、通学用品費などの合計。
※「学校外活動費」とは、補助学習費(家庭内学習費・家庭教師費・学習塾費など)とその他の活動費(習い事や体験活動のための費用など)の合計。
資料:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成

小学校から高校までずっと公立の場合では、公立小学校で約193万円、公立中学校で約147万円、公立高校で約137万円。総額では約477万円かかる計算になります。小学校から高校まで私立に通う場合では、総額1,672万円と、小学校からずっと公立の場合の約3.5倍にもなります。

消費税8%から10%へのアップの影響は?

ご紹介した文部科学省の教育費の平均データは最新のものですが、いずれも平成30年度のもの、つまり令和元年10月の消費税率引き上げ前のデータです。

そもそも授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明手数料などは消費税はかかりませんが、それ以外はほぼすべて消費税率引き上げの影響を受けます 。教育費も消費税率引き上げの影響を受けて支出増となることが予想されます。

表2:公立中学校に通う場合の消費税率引き上げの影響 (単位:円)

資料:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」をもとに執筆者作成

表の青色部分が消費税が影響する教育費の項目です。具体的に文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」から、公立中学校の年間費用の平均額をもとに消費税率引き上げの影響をみてみましょう。

公立中学校の教科書は無償ですが、学校の指定で購入した学用品・補助教材などにも消費税はかかります。平均的な支出のご家庭では1年間で約8,700円の支出増という計算になります。

進学のたびに学習塾に通う、たくさん習い事をするというご家庭ほど消費税負担が重く感じられるでしょう。実際にこれから支払う教育費は、やや多めになると見込んでおきましょう。

令和2年4月から私立高校の就学支援金が引き上げ

前述したように、高校生の授業料を支援する就学支援金があり、都道府県で上乗せの補助があります。

しかし、私立では公立よりもご家庭の負担が大きいことに変わりはありません。そこで、令和2年4月から国の就学支援金は、年収目安が約590万円未満世帯の生徒に対し、39万6,000円まで引き上げられる予定です 。

図2:令和2年4月から私立高校授業料補助

出典:2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット

国の就学支援金の引き上げに伴い、都道府県ごとの補助も変更される可能性があります。まずは国の就学支援金を利用できるか、支給額がいくらになりそうか、一度確認しておきましょう。

就学支援金の支給については、ご家庭の年収、正確には親権者全員の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額をもとに毎年判断されます。

2019年の収入に対する住民税の額は2020年6月頃に決定され、会社員なら勤務先から配布される住民税の決定通知書などに記載されます。早く見通しを立てたい方は、去年のものを探して参考にしてください。

なお、授業料以外にかかる学校に必要な費用に対しては、住民税所得割額が非課税または生活保護受給世帯などの低所得世帯向けに、「高校生等奨学給付金」などがあります。

最大のヤマ場は高校3年生から!

短期間でまとまった大学進学資金を準備するのは大変ですから、早い段階で大学にかかる費用について考えておく必要があります。

高校に在学中から大学受験のために塾に通うなど費用のかけ方は、ご家庭の考え方によりますが、大きく膨らむことがあります。いざ受験にあたっては受験料や交通費がかかり、合格後は入学金や授業料など初年度納付金の支払いがあります。この受験費用や入学時の費用は、高校3年生のうちにかかってきます。

表3:大学の進路別学費(単位:円)

資料:「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」 および「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」 をもとに執筆者作成

大学も進学先によって大きく費用が異なることが分かりますね。国立大学なら4年間で約243万円ですが、私立理系に進学すると約562万円になります。自宅通学の範囲外に進学すると、1人暮らしのための費用も必要になります。

大学の受験料、入学金・施設設備費・授業料といった学校への納付金 、1人暮らしの家賃には消費税はかかりません 。しかし、学習に必要な書籍、ノートパソコン、家電など、幅広く消費税率引き上げが影響します。

あくまで平均でデータにあらわれない支出もありますが、具体的な金額が分かった方が早く貯蓄に取り組みやすいので、上記のデータをもとに、我が家の教育費の総額を計算してみましょう。

教育費の金額の大きさに驚かれるかもしれませんが、さまざまな学生を支援する制度があります。令和2年4月からは、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生に対する、授業料の減免・給付型奨学金といった新しい制度も始まります。

進学先がまだ決まっていなくても、手続きは高校3年生のうちからできます ので、こういった支援制度を早め早めに調べておきましょう。

「子どものためにいつも最高の教育を」という親心は痛いほど理解できますが、早い時点で教育にお金をかけすぎ、資金面の問題から希望の大学を諦めることになってしまっては本末転倒です。教育費プランを1度立てたとしても、長期的な視点から都度、見直しを行っていくことが大切です。

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