関西国際空港で「瀬戸内」をテーマに表現したメディア芸術展示 《DEEP JAPAN》を開始

令和2年2月17日
メディア芸術×文化資源 分散型ミュージアム 事務局

「瀬戸内」をテーマに関西国際空港で展開
《DEEP JAPAN》
宇川直宏プロデュース 真鍋大度,中山晃子による新作メディアアート
那須太郎プロデュース ライアン・ガンダーによるメディアアートを公開
文化庁による訪日観光客向けの新事業「空港等におけるメディア芸術日本文化発信事業」を開催しています。

【関西国際空港 開催概要】

日時 :(第1期)令和 2 年 2 月 16 日(日)~ 3 月 31 日(火)

(第2期)令和 2 年 3 月上旬~ 3 月 31 日(火)

場所 :(第1期)関西国際空港(大阪府泉佐野市)第 1 ターミナルビル国際線南北到着導線

(第2期)JR 関西空港駅構内

内容 :

「瀬戸内」をテーマにアーティスト 真鍋大度,中山晃子 , クリエイティブ・プロデューサー

宇川直宏が表現。

新作メディアアートを関西国際空港第1 ターミナルビル国際線南北到着導線で展示。(第1期)

アーティスト ライアン・ガンダー,クリエイティブ・プロデューサー 那須太郎が表現。

「岡山芸術交流 2016」参加作家がメディアアート作品を JR 関西空港駅構内で展示。(第2期)

公式ウェブサイト:

https://jmadm.jp/

令和 2 年 2 月 16 日(日)より関西国際空港ならびにJR関西空港駅において ,「瀬戸内」をテーマに表現したメディア芸術展示《DEEP JAPAN》を開始しました。

《DEEP JAPAN》はふたつの期間と場所で実施いたします。

第1期は,2月16日より,第1ターミナルビル国際線南到着導線の約570m にRhizomatiks Research 真鍋大度氏の作品「phase」,国際線北到着導線の 約400m には中山晃子氏の作品「渦潮図」を,宇川直宏氏プロデュースにより展示いたします。
「phase」は瀬戸内の波のデータと国際線到着時間のデータから生成するデータビジュアライゼーションの新作,「渦潮図」は作家が鳴門の渦潮からインスピレーションを受けて表現されたアライブペインティングパフォーマンスの新作です。
第2期では,JR 関西空港駅構内にて「岡山芸術交流 2019」総合ディレクターの那須太郎氏がプロデュースを行い,「岡山芸術交流 2016」 に参加したライアン・ガンダー氏の「Imagineering」が加わります。更に,せとうち DMO の協力のもとパネル展示でも多様な瀬戸内エリアの周遊先を提案し,海外から瀬戸内エリアへお客様を誘います。

日本での旅をはじめる観光客の方々に対し,最先端のメディア芸術に触れていただきながら ,日本文化の新たな気づき・魅力を伝えていきます。

文化庁は,「空港等におけるメディア芸術日本文化発信事業」のプロジェクトの一環として『メディア芸術 × 文化資源分散型ミュージアム』を国内の空港 10 箇所で順次展開中です。
本プロジェクトでは,日本各地域の土壌が育んだ豊かな文化資源をアーティスト・クリエイターたちがその魅力を新たな視点で表現し,各地域の玄関口である空港等で展示いたします。展示されたメディア芸術作品をきっかけに,訪日観光客を日本文化の新しい魅力に出会う旅へと促します。

【関西国際空港における実施概要】

■テーマ:瀬戸内エリア

美しい瀬戸内海を含む瀬戸内エリアは,727 の島々があり,90 万ヘクタールを超える自然豊かな地域です。1934 年に日本初の国立公園になりました。厳島神社などの複数の世界遺産や倉敷を代表とする国指定の歴史的な町並みなど,文化資源の宝庫です。まだ海外の方に知られていない自然の特殊な景観から, 歴史的価値のある建造物や装飾品まで,深く日本を知ることができる場所です。

古来,瀬戸内海は日本の航路の中心でした。遣唐使の重要な交通路となり,大和朝廷が港を整備,更に平安時代には平清盛が日宋貿易などで航路を整備しました。江戸時代に瀬戸内海の海運は最盛期を迎えます。こうして千年,二千年と国内外の様々な人や物資の輸送を担い,その間に様々な重要文化財となっているものが生まれてきました。 また多島海のため,潮の流れが激しく変わるところがあり,潮の流れを待つための港などが発達した世界的に珍しい海域と言われています。その最東端に位置する大阪湾にある関西国際空港は,今の瀬戸内と世界を結ぶ重要な玄関口になっています。

また,瀬戸内エリアには「岡山芸術交流」や「瀬戸内国際芸術祭」など,世界的に知られたアートフェスティバルがあります。 地域の自然と融合した現代アートを鑑賞するために,欧米から多くのお客様がこの地域を訪れます。
瀬戸内海で最大の島である淡路島は,日本の神話にも登場する文化的魅力にあふれた島です。古事記によれば神が矛を海に差し入れかき混ぜてゆく中で,混沌の世界に初めて形が生まれた場所だという鳴門海峡があります。葛飾北斎も描いた鳴門海峡の渦潮は自然が作り出す芸術です。海底から海面に向かって起きる大渦を体験すると,そのスペクタクルさに驚きます。
2番目に大きな島の小豆島は,オリーブ畑や醤油作りで有名な日本の食文化が香る島です。また,大阪城の石垣を築いた石切り場の跡などから,歴史文化にも触れられます。
尾道からしまなみ海道を瀬戸内の潮風を感じながら走ることもできます。何層にも重なっているであろう人々の行きかったそれぞれの時代を想像しながら,日本の食文化を体験することもできます。
沢山の猫が住み,古くからの島の生活を今に残す貴重な島である男木島や,ウユニ湖のように鏡に見えるほど絶景な父母ヶ浜も瀬戸内エリアにあります。
行き交う時代が何層にも織りなされ文化が育まれてきた「瀬戸内エリア」は, 日本文化の深淵を体験できる地域です。

■展示企画:《DEEP JAPAN》解説
メディア芸術を新たなる日本文化史としてマッシュアップさせる「空の玄関美術館」構想
クリエイティブ・プロデューサー:宇川直宏(DOMMUNE)

空港とは読んで字の如く,空の港であり,空の玄関である。

このフロアは,他国,他地域との文化的交流を果たす“玄関口”であり,文字通り境界を超えて訪れた人間同士が混交する生きた“回廊”でもある。このようなアクティヴな人間の活動を支える空港において,国際文化交流の振興を図る文化庁が,この度,我が国の先鋭なるメディア芸術と歴史的な文化資源をクロスフェードさせる新たな試みを世界に拡散させてゆく…。そう , これは , 地域固有の文化とその物語がミックスされたメディア芸術作品を空港にインストールする分散型ミュージアム構想なのである。今後ますますの拡大が見込まれるインバウント観光客の長期滞在,他地方への接続を図り,日本の観光基盤の拡充・強化及びメディア芸術の振興を目的としたこの試みは,参加する国際空港それぞれが主役になり,アーティストとコラボレートしながら「空の玄関美術館」を共同で作り上げていくプロジェクトを目指している。その関西国際空港ヴァージョンは,まるでダンスフロアのように,あらゆる日本のレアグルーヴ(歴史的文化資源)と,最前衛の実験的テクノロジー(メディアアート)がビートマッチングを果たす。
名付けて JAPAN MEDIA ARTS DISTRIBUTED MUSEUM 《DEEP JAPAN》 !

ここで開帳される作品は,アーティストの作品が,瀬戸内のイメージとメディアミックスされ,歴史的邂逅を果たすメディア芸術の普遍的可能性の探求なのだ。歴史を紐解くと,いつの時代も,新たなる触媒(メディウム)や,新奇な技術的発明(テクノロジー)は,創造の主が利用する道具,そして器に過ぎない。例えば,ロックアートも洞窟壁画も,ナスカの地上絵もピラミッドも,そして縄文式土器も前方後円墳も,神話を背負った太古のメディアアートだと捕らえることができるが,遥か以前からメディウムもそしてテクノロジーも,イマジネーションを具現化するひとつのツールに過ぎなかったのである。我々はインダストリー 4.0 の現代に新たなる日本文化史として「空の玄関美術館」を構想する。そして地方創生のオルタナティヴ・フューチャーを想い描き,国際空港を舞台に全く新しいメディア芸術のあり方を発信するのである。

まず1組めの Rhizomatiks Research 真鍋大度の作品は,滑走路と並行の走る 約570m の廊下に 314 個の LED を設置。この LED のライティングパターンは, 瀬戸内の波のデータ,そして関西国際空港に海外から入国する飛行機の国際線到着時間のデータから生成されている。医師であり博物学者であったシーボルトを始めとして数多くの欧米人から高く評価された景勝地である瀬戸内海の波周期を,海外から日本に訪れたインバウンドの訪日記録と連動させ,旅行客の活動を瀬戸内の環境の推移とシンクロさせる試みだ。
また,中山晃子の作品は,流動する色彩によるうつろいゆく現象を絵画として描く彼女の作風が鳴門海峡と融合。古事記によれば神が矛を海に差し入れかき混ぜてゆく中で,混沌の世界に初めて形が生まれた場所だという鳴門海峡。一瞬の中で生きている色彩という名の芸術が,千年前にこの海に神話を見つけた語り部たちの隣に立ちながら,映像,詩作,パフォーマンスと,それぞれのメディアで物語の生まれるところに触れる。

JAPAN MEDIA ARTS DISTRIBUTED MUSEUM 《DEEP JAPAN》 これは,テクノロジー × 歴史! メディア × 観光! そしてアート × 伝統! これは,メディア芸術を新たなる日本文化史としてマッシュアップさせる「空の玄関美術館」構想である。そしてそれら各構成要素が深く奥行きを持って空港内でメガミックスされてゆく全く新しいネットワーク・ハブであり,各空港をその端末と見立てた今世紀的分散型ミュージアムなのである。今回はこのミュージアムに日本を代表する2組のアーティストが参加する! そして,更に第2期として「岡山芸術交流 2016」参加作家の展示が同じくクリエイティブ・プロデューサー那須太郎氏によりJR関西空港駅構内で展開されるのだ!

■アーティスト:真鍋大度

東京を拠点としたアーティスト,インタラクションデザイナー,プログラマ,DJ。
2006 年 Rhizomatiks 設立,2015 年より Rhizomatiks の中でも R&D 的要素の強いプロジェクトを行う Rhizomatiks Research を石橋素氏と共同主宰。
身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し,組み合わせることで作品を制作。高解像度,高臨場感といったリッチな表現を目指すのでなく,注意深く観察することにより発見できる現象,身体,プログラミング,コンピュータそのものが持つ本質的な面白さや,アナログとデジタル,リアルとバーチャルの関係性,境界線に着目し,デザイン,アート,エンターテイメントの領域で活動している。
坂本龍一,Bjork,OK GO,Nosaj Thing,Squarepusher,アンドレア・バッティストーニ,野村萬斎,Perfume,サカナクションを始めとした様々なアーティストからイギリス,マンチェスターにある天体物理学の国立研究所ジョドレルバンク天文物理学センターや CERN(欧州原子核研究機構)との共同作品制作など幅広いフィールドでコラボレーションを行っている。
Ars Electronica Distinction Award, Cannes Lions International Festival of Creativity Titanium Grand Prix, D&AD Black Pencil,メディア芸術祭大賞など国内外で受賞多数。

■アーティスト:中山晃子

Photo : Haruka Akagi
2012 年 東京造形大学 造形学部美術学科絵画専攻領域 卒業
2014 年 東京造形大学 造形学部美術研究領域 修士課程 修了
画家。色彩と流動の持つエネルギーを用い,様々な素材を反応させることで生きている絵を出現させる。
絶えず変容していく『Alive Painting』シリーズや,その排液を濾過させるプロセスを可視化し定着させる『Still Life』シリーズなど,パフォーマティブな要素の強い絵画は常に生成され続ける。様々なメディウムや色彩が渾然となり,生き生きと変化していく作品は,即興的な詩のようでもある。鑑賞者はこの詩的な風景に,自己や生物,自然などを投影させながら導かれ入り込んでいく。ソロでは音を『透明な絵の具』として扱い,絵を描くことによって空間や感情に触れる。近年では TEDxHaneda,DLECTROCITY ART FESTIVAL(デトロイト),Solo performance at NEW ARS ELECTRONICA(オーストリア),Biennale Nemo(パリ),LAB30 Media Art Festival(アウグスブルグ),TECHNARTE art + technology(ビルバオ) ,MUTEK モントリオールなどに出演。

■クリエイティブ・プロデューサー:宇川直宏(DOMMUNE)

1968 年香川県生まれ。”現在美術家“。映像作家,グラフィックデザイナー, VJ,文筆家,大学教授など,80 年代末より,さまざまな領域で多岐にわたる活動を行う。2001 年「Buzz Club: News from Japan」(MoMA PS1・ニューヨーク),「JAM: Tokyo-London」(Barbican Art Gallery・ロンドン)に参加して以来,国内外の多くの展覧会で作品を発表。2010 年には,日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル「DOMMUNE」を開局。これまで DOMMUNE は数々の現代美術の国際展に参加し,ロンドン,ドルトムント,ストックホルム,パリ,ムンバイ,リンツ,福島,山口,大阪,香川,金沢,秋田,札幌 ... と,全世界にサテライトスタジオをつくり,2019 年,瀬戸内国際芸術祭にて「DOMMUNE SETOUCHI」を開設。10 年間に渡って配信した番組は約5000番組/約7000時間/150テラを越え,トータル視聴者数 1 億人を超える。2019 年,渋谷 PARCO 9F にスタジオを移転。「SUPER DOMMUNE」に進化し,5G 以降の最前衛テクノロジーと共に未来を見据えた UPDATE を図る。
http://www.dommune.com/

■アーティスト:ライアン・ガンダー

©Ryan Gander
Courtesy of TARO NASU
1976 年イギリス,チェスター生まれ。現在はロンドン,サフォークにて制作活動。新世代コンセプチュアル・アートシーンの牽引者の一人,日常生活における身近な素材を普遍的な存在へと変換させる作品で知られる。日本では「墜ちるイカロス 失われた展覧会」(東京・メゾンエルメス,2011),「You have my words」(福岡・太宰府天満宮,2011),「この翼は飛ぶためのものではない」(大阪・国立国際美術館,2017)など,国公立美術館等での個展開催多数。また「第 54 回ヴェネチアビエンナーレ」(ヴェネチア,2011) ,「ドクメンタ(13)」(カッセル,2012),「岡山芸術交流」(岡山,2016),「シドニービエンナーレ」(2018)などの大型国際展にも多数参加,国内外で高い評価を得ている。2021 年 1 月には東京オペラシティアートギャラリーにて個展が開催される。

■クリエイティブ・プロデューサー:那須太郎

Photo : Takashi Homma
1966 年岡山市生まれ。早稲田大学卒業。
天満屋美術部勤務を経て,1998 年東京にて現代美術画廊 TARO NASU を開廊,現在に至る。
国内外の美術館等の公共機関との協働多数。
2016 年よりアートコンサルティングを主な事業とする会社,アート & パブリック株式会社を設立。
「 Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」(2014)ではアートアドバイザリーを,「岡山芸術交流 2016」及び「岡山芸術交流 2019」では総合ディレクターを務めるなど,現代美術の普及に努める。

■展示イメージ(国際線南北到着導線)

Rhizomatiks Research真鍋大度氏の作品(国際線南到着導線)

中山晃子氏の作品(国際線北到着導線)

■展示イメージ(JR関西空港駅構内)

ライアン・ガンダー氏の作品
Photo: Nobutada Omote

■パネル展示ビジュアル

関西国際空港開催概要[詳細]
日時: (第1期)令和2 年2月16 日(日)~ 3 月31 日(火)
(第2期)令和2 年3 月上旬~ 3 月31 日(火)
場所: (第1期)関西国際空港(大阪府泉佐野市)第 1 ターミナルビル国際線南北到着導線
(第2期)JR 関西空港駅構内
アーティスト: (第1期)真鍋大度,中山晃子
(第2期)ライアン・ガンダー
クリエイティブ・プロデューサー: (第1期)宇川直宏
(第2期)那須太郎
協力: せとうちDMO
公益財団法人石川文化振興財団
西日本旅客鉄道(株)
関西エアポート(株)
主催: 文化庁「令和元年度空港等におけるメディア芸術日本文化発信事業」

詳細は添付ファイルにてご確認下さい。