DeNA新助っ人が衝撃2発デビューも「関係ない」 “007”が重視する真のポイントは?

DeNA新助っ人のタイラー・オースティン【写真:津高良和】

元巨人、WBCでもチーフスコアラー・三井康浩氏「この時期あまり結果は関係ない」大切なのは…

 2020年のオープン戦も開幕し、各地でシーズンに向けた実戦形式の練習も始まってきた。DeNAでは新外国人のタイラー・オースティン内野手が巨人とのオープン戦(那覇)で2打席連続本塁打を放つなど鮮烈なデビューを果たした。一方で相手チームや他球団のスコアラーらはベンチ、ネット裏で分析のため、視線を送っている。「007」と呼ばれるスコアラーたちはこの時期に一体どのようなポイントで新戦力に目を向けているのか。元巨人、2009年WBCスコアラーを務めた三井康浩氏がポイントを解説した。

 度肝を抜いたDeNA・オースティンの2打席連続弾。巨人2年目左腕の高橋優貴投手からバックスクリーンと左翼へ放り込んだ。DeNAにとっては期待の持てる明るい話題。打てないより、結果を出してくれたことに一安心だ。打たれた側、分析側はこのような華々しいオープン戦の活躍をどのように見ているのか。

「正直なところ、オープン戦が始まったばかりの頃は、あまり結果は関係ないです。新戦力、特に外国人選手で確認することはどんなタイプの選手なのか、ということ。大きく分けるとアベレージヒッターなのか、ホームランバッターなのか。『この選手はパワーでホームランを打ちたいのかな』とか、追い込まれたあとはどのようなステップやボールの待ち方をするのかなど、そういうところを見ています」

 そのようなことを見ながら、得意なコース、苦手なコースを限られた時間の中で把握する。試合前のミーティングでは投手にも身をもって収集してもらう。

「得意、不得意を見極めるだけでなく、打たれた場合の打球の飛距離も重要です。この球種のこのコースはここまで飛ばすことができるかなど、1試合に限らず、データを取っていきます。開幕に近づくにつれて、その確率が高くなっていくこともあります」

 試合を重ね、日本の野球に対応、打撃フォームの修正ができる選手だと“要警戒”。独特な日本の投手のタイミングや“間”などへの対応、すぐにメジャー出身の選手でもできることではない。追い込まれるまでのスイングと、追い込まれた後のスイングに違いがあるかも大事なチェックポイント。追い込まれるまで長打を狙っていても、追い込まれたら変化球でもコンパクトにヒットゾーンにボール運ぶ選手かどうかも見極める。

元巨人のクロマティ氏、元阪神のオマリー氏らは早い段階から日本の投手に合った打撃をしていた

「日本の投手の場合は『1・2・3』という(打者が取る)タイミングではなく『1・2~の・3』と『の』という“間”が入ることが多い。その“間”が作れない打者だと、外角低めへのボールになる変化球に手が出てしまう。見極められるのが“当たり”の外国人選手と言えるでしょう。その選手は当然のように自分の“間”を持っています。日本の投手に合いやすい」

 他にも、グリップを少し余して持っているかどうか、ノーステップで対応していきているか……三井氏が巨人でスコアラーを務めていた時期、元巨人のクロマティ氏、元阪神のオマリー氏らは早い段階から日本の投手に合った打撃をしていたという。また、オープン戦や練習試合などの非公式戦では、スコアラーがコーチや投手にお願いをすることもある。

「開幕が近づくにつれて勝敗を気にし始めたり、勝ちにこだわった戦いをすることがあります。ですが、序盤はベテランの投手へ、相手打者の特性を掴むために『このコースに投げてみてほしい』などと試してもらうこともあります。1軍生き残りがかかっている若手にはなかなか頼めませんが、経験豊富な投手にはお願いして受けてもらうこともあります」

 打者だけなく、新助っ投も同様で、持っているデータ以外の球種はあるのか、シチュエーション別の変化球の制度、球質やキレはどうなのか、日本に来てもコントロールはあまり変わらないのかなどをチェックするという。こういう視点でコアなファンも野球を見ると新たな発見や楽しみが見つかるのではないだろうか。(三井康浩 / Yasuhiro Mitsui)

プロフィール
三井康浩(みつい・やすひろ)1961年1月19日、島根県出身。出雲西高から78年ドラフト外で巨人に入団。85年に引退。86年に巨人2軍サブマネジャーを務め、87年にスコアラーに転身。02年にチーフスコアラー。08年から査定を担当。その後、編成統括ディレクターとしてスカウティングや外国人獲得なども行った。2009年にはWBC日本代表のスコアラーも務めた。松井秀喜氏、高橋由伸氏、二岡智宏氏、阿部慎之助選手らからの信頼も厚い。現在は野球解説者をしながら、少年野球の指導、講演なども行っている。2月8日に初著書「ザ・スコアラー」を上梓。3月16日には都内で「プロ野球開幕直前!スコアラー視点で10倍楽しむ見方」トークイベントを開催する。

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