トヨタ、WEC未勝利のCOTAへ。デイトナ連覇の小林可夢偉「またアメリカでレースを戦うのが楽しみ」

 WEC世界耐久選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは2月22~23日、アメリカ・テキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われる2019/2020年シーズン第5戦ローン・スター・ル・マンで、今季4勝目を狙う。

 当初予定されていたサンパウロ・ラウンドの代替戦として開催が決まったローン・スター・ル・マンは、第6戦セブリング1000マイルと合わせた“アメリカ2連戦”のファースト・ラウンド、2019/20年シーズンでは全8戦中の5戦目となるイベントだ。

 その舞台となるのはヘルマン・ティルケが設計したCOTA。WECでは2012年の現行シリーズ初年度から行われてきたが、2017年の開催を最後にカレンダーから外れていた。また、トヨタにとってはメキシコシティ、ニュルブルクリンクとともに現行シリーズで勝利を挙げていないサーキットのひとつとなっている。

 そんなCOTAラウンドに、トヨタは今回も2台のトヨタTS050ハイブリッドを投入する。選手権をリードするマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組7号車と、僚友を8ポイント差で追いかけるセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組の8号車だ。

 前戦のバーレーン8時間レースを制した7号車は今回、もっとも重いサクセス・ハンディキャップを背負っての戦いとなる。8号車はチームメイトと比較して1周0.56秒少ないハンディキャップでレースを行う。

 なお、これまでのCOTAラウンドは暑さ厳しい9月に行われてきたが、今回は2月の開催となった。また、開催スケジュールが通常の3日間から2日に短縮されており、チームはより短い時間でデータを解析し、マシンをコンディションに合わせなければならず、これまで以上に難しいレースとなることが予想される。

「2017年以来のオースティンでのレースが楽しみです。情熱的なアメリカの耐久レースファンの皆さまは我々をいつも暖かく迎えてくれます」と語るのは、TOYOTA GAZOO Racing WECチームの村田久武代表。

「実はオースティンでは今まで勝利したことがありません。ですので、目標の“初勝利”に向けてチームの士気は高まっています」

「また、昨年12月のバーレーンでの勝利から10週間が経ちましたが、チームの全員が、ル・マンを含む今シーズン残りのレース向けの準備と並行して、来シーズン用“ハイパーカー”の新車開発に大変忙しい日々を送っています」

「2020年はTOYOTA GAZOO Racingにとって節目となる非常に重要な年です。アメリカ・テキサスにて幸先良いスタートを切りたいと思います」

 ランキングトップでCOTAに乗り込む可夢偉は「先月、デイトナ24時間レースを連覇することができたアメリカで、ふたたびレースを戦うのが楽しみです」とコメント。
 
 7号車にとっては厳しいレースになると予想しながらも、「やるべきことは分かっていますし、そのための準備を続けます」と抱負を述べた。

8号車トヨタTS050ハイブリッドをセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレーとともにシェアする中嶋一貴

■涼しい時期の開催となり「これまで以上に楽しみ」と中嶋一貴

 一方、8号車組の一貴は、前回の暑かったレースを振り返りつつ「今回は2月開催ということで、気候的なコンディションが変わるというのは良いニュース」とコメント。こちらも厳しいレースを予想しているが「プッシュを続ける」と意気込みを語った。

 ふたりの日本人ドライバーを含むTOYOTA GAZOO Racing WECチームドライバーのプレビューコメントは以下のとおりだ。

■7号車トヨタTS050ハイブリッド

●マイク・コンウェイ

「COTAは流れるようなレイアウトの高速コースで、お気に入りのサーキットのひとつだ。セクター1は楽しいポイントがたくさんあり、残りのセクターもとてもチャレンジングなんだ」

「2017年以来、ここではドライブしていないが、サーキット路面は当時よりも少し荒れているらしい。現地に着いたら見てみることにするよ!」

「オースティンは街も素晴らしいので、もう一度ここでレースを戦うのがとても楽しみなんだ」

●小林可夢偉

「先月、デイトナ24時間レースを連覇することができたアメリカで、ふたたびレースを戦うのが楽しみです。アメリカはファンの皆さまは本当に熱狂的で、雰囲気も最高なのでつねにレースを楽しめます」

「第3戦上海と同様、我々7号車にとっては厳しいレースになると思いますが、やるべきことは分かっていますし、そのための準備を続けます」

●ホセ・マリア・ロペス

「我々のTS050ハイブリッドはドライバーズタイトル争いで首位に立ってオースティンに臨むこととなるので、非常に重いサクセス・ハンディキャップが課される」

「そのため、我々はこのタイムロスをできる限り少なくする必要があり、レースウイークへ向けたアプローチはバーレーンとは少し異なるものとなるだろう」

「パドックに居るチームの誰もがオースティンを訪れることを楽しみにしていると思うけど、僕にとっては地元の南米から近いこともあって、さらに特別なものになるんだ」

WEC第4戦バーレーンで今季2勝目を飾った7号車トヨタTS050ハイブリッド

■8号車トヨタTS050ハイブリッド

●セバスチャン・ブエミ

「WECがサンパウロの代替戦としてオースティンを選択したのはうれしいよ。オースティンはお気に入りのコースのひとつで、街も大好きなんだ」

「2日間のイベントということで、通常の3日間開催とは異なるチャレンジになるだろうね。土曜日は練習走行と予選が同じ日に行われるために大変な一日になると思う」

「とはいえ、僕自身はTMGのシミュレーターで可能な限りの準備をしてきましたし、この挑戦を楽しみにしているんだ」

●中嶋 一貴

「オースティンでのレースは久しぶりです。前回のレースは非常に暑く、長時間走行を担当したこともあり、とても大変だった記憶があります」

「今回は2月開催ということで、気候的なコンディションが変わるというのは良いニュースですし、これまで以上に楽しみです」

「もちろん、ライバルのノンハイブリッドLMP1が速いのは間違いないので厳しいレースになると思いますが、プッシュを続けます」

●ブレンドン・ハートレー

「このコースは大好きだ。コーナーの組み合わせが素晴らしく、上り坂のストレートを駆け上がった後の1コーナーへの進入は格別だね」

「多くの高速コーナーが続いた後、終盤に幾つかのスローコーナーが出てくるので、そこが追い越しポイントになる。さまざまな特徴が上手く兼ね備えられたコースだと思うよ」

「最後にオースティンでレースをしたときには、非常に路面が荒れていた印象があるけれど、その後再舗装されたので、どれだけ変わったかも楽しみだ」

チームメイトの7号車と8ポイント差で追いかける8号車トヨタTS050ハイブリッド

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